最強魔法戦士は戦わない ~加藤優はチートな能力をもらったけど、できるだけ穏便に過ごしたいんだあ~

マーくん

第215話 【ダンジョンの中で】

<<グリル視点>>
横穴をどんどん進んで行く。

恐らくここは1階層目だろう。

ランス様の言う通り、モグラの魔物が出てくる。

何か言いたげなランス様を後ろに下げて、冒険者を前に出す。

今回連れてきた冒険者は15人。

いづれも手練れだ。

何があるか分からないので、上に5人残している。

前衛に7人、後衛に3人の配置だ。


万が一を考え、スポック様が預けて下さったトランシーバーと言う魔道具を双方で持っている。

国の高官が職務で使うような貴重な物で、見るのも初めてな代物だ。

これがあれば、緊急時にも連絡がすぐに取れるらしい。

是非冒険者全員に持たせたいところだが、危険性の高いものだからダメらしい。






はっきり言おう。モグラの魔物は、無茶苦茶強い。

Aランクパーティーでも手こずるだろう。

だがこちらも精鋭揃い、1匹であれば3人で掛かれば問題無く倒せる。

後ろのランス様にサムズアップする。

少し苦笑いが気になるが、サムズアップで返してくれた。


先を進む。

広い空間に出た。ところどころ穴が空いている。

穴を避けて慎重に進む。穴に落ちたら大変だ。

真ん中辺りにきた時、穴全てからモグラが顔を出しやがった。
その数20。

ダメだ、とてもじゃないが倒せない。

まず先決なのはランス様を逃すことだ。

ランス様の方を振り向くと、…いない?

「グリルさん達、そのまま後ろに逃げて下さい!」

頭の上から声がする。

ランス様だ。
そうだった、ランス様は飛べるんだった。

「お前達、後ろに走れ!
体制を立て直すんだ。」

こんな時は、逃げろって言うのは悪手だ。

戦意は喪失するし、パニックになる可能性も高い。

皆が広場の入り口付近まで下がったことを確認した時、広場の真ん中辺りで、ピキッ って音が何度かした。

音の方を見ると、穴から顔を見せていたモグラの魔物が、穴ごと氷漬けになっていた。

「皆さん、大丈夫でしたか?
危ないので、穴ごと塞いでおきました。」

頭の上からランス様の声が響いていた。






モグラの広場から、かれこれ3時間くらい経つ。

今は3階層目に降りたところだ。

モグラの他には、巨大なカエルの魔物が出た。

長く伸びる舌に何人か捕まるが、ランス様の風魔法で舌を切り刻んで助けて頂く。

俺達の役割って、ランス様の護衛も含まれていたんじゃ………

あまり考えないでおこう。


3階層には、イノシシの魔物が出た。

動きが速く、勢いがある。
そのまま突進されれば避けようがないだろう。

前衛は全員盾を構えて突進を防ごうとする。

イノシシの魔物とはいえ、たった1匹だ。

俺達11人で掛かれば、なんのことは無いだろう。

イノシシの奴が余裕ぶっているように見えるのは気のせいか。

3人の盾持ちを2段に配置する。

こちらの体制が整ったところで、
待ちかねたようにイノシシが走り出した。

1段目に衝突。3人が吹き飛ばされた。

2段目はなんとか耐えている。

俺ともう1人がロングソードを突き刺す。
突き刺す。
突き刺す。
突き刺す。
…………………

何回突き刺したのかも分からない。

遂にイノシシが崩れた。

最後に大きな咆哮をひとつ吐いて、息絶えたようだ。

俺達は満足感を抱いたまま、弾き飛ばされた仲間を助ける。

幸い大した傷は無いようで一安心した。

だが、この戦闘による疲労は限界を迎えていた。


ドッドッドッドッドドドドドドッ

何か大変なものがやってくる。

俺には分かっていたさ。

さっきのイノシシが最期に咆哮したからな。

あんな後には必ず、仲間が大挙して襲って来るんだ。

やがて、土埃が見え、そしてイノシシの群れが見えた。


ドドドドドド

俺達は死を覚悟したさ。

ランス様を護れなかったのは心残りだが、しようが無いじゃないか。

俺は目を閉じた。

ドドドドドド ガッ……

???

音が止まった。

俺は目を開けた。目の前には土の壁があった。

「グリルさん、大丈夫でしたか?」

「ああ、だ、大丈夫だ。」

「良かった!

とりあえず土壁を作って、イノシシ達を止めました。」

俺は立ち上がり、壁の向こう側を見る。

壁には大量の長いトゲが長槍のように付いており、イノシシ達はその槍に貫かれて残らず死んでいた。

「確かダンジョンで狩った魔物って、冒険者ギルドで買い取ってもらえるんですよね。
とりあえずこれは獲物として、仕舞っておきますね。」

ランス様はそう言うと、魔法を発動する。

大量の魔物の死体を光が包むと、何もなかったように綺麗になった。

「今のはいったい?」

「ああ、空間魔法ですよ。
亜空間ってところに仕舞えるんです。

どうやら時間が止まっているみたいで、新鮮なまま保管出来るみたいです。」

たぶん俺は、口を開けてぼけ~っとしていたに違いない。



「今日は皆さんお疲れのようですね。
ここに転移の魔法陣を置いたので、とりあえず戻りましょうか。」

ランス様は何か書いてある木の板のような物を地面に置いた後、こちらを振り返ってそう言ったのだった。

ちなみに俺達は、その魔法陣を使って街まで戻って来た。

入り口で待機している5人には使いを出して呼び戻した。

ここのダンジョン、S級指定出来るほど高難易だ。

でもランス様ひとりで攻略出来るんじゃねぇか?



          

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