最強魔法戦士は戦わない ~加藤優はチートな能力をもらったけど、できるだけ穏便に過ごしたいんだあ~

マーくん

第179話 【あやしい奴ら】

<<????視点>>
「なんで俺がこんな田舎に来なきゃいけないんだ!」

「まぁそう言うなって。
これも大切な任務だ。

この村は最近ものすごく景気が良いらしいぞ。

美味いものもたくさんあるらしい。

せっかくお頭から離れられたんだ。
ゆっくり調査しようじゃないか。
なぁ。」

「お前のその性格羨ましいぜ。

大体あの方が捕まっちまうからいけねぇんだよ。
それも盗賊にまで化けてさ。
丸わかりだったそうじゃないか。

牢の中でも煩いからって、向こうから返却の打診があったらしいけど、『そんな奴は我が国にはおらぬ』って言われて、受け取ってもらえなかったらしいな。」

「本当にあの阿呆には困ったものだ。

我等が事前にあの砦の壁を崩すのは難しいって進言していたにも関わらず、大見得切って攻めた挙句失敗して、最後は盗賊に化けてまでだもんな。」

「全くだ。おかげでアイツの家から睨まれて、こんなところの偵察だぜ。

逆恨みもいいところだ。」

「おっあの屋台凄く良い匂いしてるぞ。
これは調査が必要だな。」

「俺の勘ではあの匂いの食べ物は酒の肴にピッタリだろう。」

「奇遇だな。俺の勘とも一致するな。
これは是が非でも調査が必要だぜ。


しかし、この村はいろんな物が溢れていて活気があるな。

俺達みたいな隠密ですら食べたことの無い物がいっぱいあるぞ。」

「海向こうのジャボ大陸と交易を始めたらしいな。

ここだけでなく、ロンドーもヤコブもだ。

3国共、いろいろな改革を進めた結果、こんなに景気が良くなったらしいぞ。」

「あぁ、うちの国ももうダメかなぁ。

俺こっちに住もうかな。」

「今、俺もそれ考えていた。」


3日後、ヤライに2人の住人が増えていたとか、いないとか。




<<カーン視点>>
改革はスムーズに動き出し、想像以上の速さで広まると共にとんでもないほどの効果を出してきた。

水車や肥料等で容易に耕作出来るようになったら、隠居を決め込んでいた年寄りまでもが張り切りだし、生産人口は増えた。

効率化したことも勘案すると、生産量は倍近くになったのではないか。

食糧が増えた分、デフレを起こして価格の暴落も懸念していたが、カトウ運輸が全て持っていって現金化してきてくれるのだ。

しかも単価は今まで通りでだ。

国内各地で自分達の特色を出した特産品を作り販売をすることで、国全体が潤い、税収も大幅に上がった。

納税も物納から現金徴収にしたお陰で、納税する側もされる側も便利になった。

このあたりはマサル殿から教えてもらったやり方だ。

国に活気が出てきたこともあり、全てが順調に回っている。

ロンドーやヤライとの関係も良好で、改革の実績をお互いに教え合いながら共に成長しているのだ。

経済力の強さが国の強さとなってきている。

これがマサル殿の言っていた、経済競争と言うものだろう。

ただ、全く懸念が無いわけではない。

我が国だけでなく、ヤライやロンドーも含めてなのだが、スパニからの亡命者が後を立たない。

特に農民の越境が多いが、商人や軍人も少なくない。

ヤコブでは、スパニの軍隊の一部までもが亡命してきたそうだ。

さすがにスパニとの軋轢を考えて、スパニに戻そうとしたらしいが、国境を越えた後、そのまま消えてしまったということだ。

恐らく軍を解散して、農民の亡命者に紛れ込んだのだろう。


我々3国が発展する中で、スパニは唯一成長が停滞している。

そんな中でスパニの経済を支える農民が大挙して国を捨てるわけだから、あちらにしてみれば死活問題だろう。

再々申し入れがきているが、困って亡命してくる者達を追い返すわけにもいくまい。


困窮したスパニがどんな手段に出てくるか?

とりあえず3国で対策を練っておく必要はあるだろう。




<<スパニ族長ラモス視点>>
「おい、ハリー。税収がまた大幅に落ちているではないか!

いったいどういうことだ!」

「ラモス様、国境付近の農民達が次々と、ヤライ、ヤコブ、ロンドーに逃げています。

軍を出して止めさせているのですが、その軍自体が亡命したところもあります。

既に農民のうち20パーセントが居なくなってしまっています。」

「どうしてそんなことになっている?」

「軍費を増やすために税率を上げたことが原因かと思われます。

また、2年前にヤライを攻めあぐねて大量の戦死者を出しましたが、その後の強制徴兵にも問題があったかと。」

「しかしそんな理由だけで、こんなことになるとは。
信じられないことだが?」

「それが最近になって分かってきたのですが、ヤライ、ヤコブ、ロンドー共、目覚ましい経済発展をしております。
ジャボ大陸との交易も始めたとか。」

「ジャボ大陸とか!?

その存在は知っているが、かなりの距離があり、交易出来るような場所では無いはず。」

「おっしゃる通りです。
ただ、わたしの側近に調査させたところ、ジャボ大陸側の人族が関与している商会が、交易の窓口をしているようであります。

もしかすると、3国の急速な経済発展も、その商会が関与している可能性が高いかと思われます。」

「しかし、どうしてこんな情報が余に入ってこなかったのだ。

どの国にも影の者を入れておるだろう?」

「それなんですが、影の者自体が続々と亡命しておったようです。

諜報局の幹部連中は、その発覚を恐れ最近まで隠しておりましたので、こちらに上がってきませんでした。

既に、幹部連中は粛正しましたが、幾人かは亡命したみたいです。」

何ということだ。

いったい何が起こっているのだ。

「ハリー、お前が直接指揮を執って調査するのだ。
頼んだぞ。」

「御意。承知いたしました。」

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