最強魔法戦士は戦わない ~加藤優はチートな能力をもらったけど、できるだけ穏便に過ごしたいんだあ~

マーくん

第132話 【遠足で魔物に遭遇する 1】

<<レスリー視点>>
今日は待ちに待った遠足だぜ。
1年生全員がクラス毎に5Kmほど先にある草原まで行くんだ。

5Kmくらいなら、普段から鍛えている俺にとっちゃ散歩くらいの距離なんだけど、この小学校に来ているのは、貴族や大商人の子供が多いから、多くの奴等は移動にすぐに馬車を使う。

だから、奴等にとっちゃ今日は試練の日になるかもね。

朝学校に集まって校長先生から注意事項を聞く。

校長先生の長い話しが終わり、俺達は西の草原に向かう。

ちなみにリアン様やイリヤちゃん達がいるスペル先生のクラスは、南の草原に向かうようだ。

王都から四方に広がる草原までは、綺麗な街道が続いているから安心だ。

以前は、途中の森から魔物や山賊が出てくる危険があったらしいけど、カトウ運輸が街道を整備してからは、めっきり姿を見せなくなったみたい。

これから行く草原までの途中にも駅があって、安全に休めるから余裕だぜ。

一応安全のために護衛の冒険者もいるけど、無茶苦茶暇そうにしている。

俺はランス達数人で先頭を歩いている。

やっぱり騎士を目指す俺達が先頭じゃなきゃ。

でもただ歩くだけって暇なんだよな。

歩き出してすぐの頃は、ランスとしりとりをしながら歩いていたんだけど、ランスの奴やたらと頭がいいから、知らない言葉がたくさん出てくるんだ。

数の暴力って言うのかな、圧倒的に知っている単語の多いランスには敵わないから、30分ほどで止めた。

今はアルクといい勝負をしている。

アルクとは、成績も似たり寄ったりだから、しりとり勝負にはちょうど良い。

ランスとは頭の出来が違うから負けてもしょうがないかも知れないけど、負けたままは悔しいから、もうちょっとだけ勉強してやるよ。
リアン様を守れる騎士になるには、勉強も必要だってお爺様も言ってたしな。



左に森が見えてから少しして、前を行く護衛の冒険者達が少し騒がしくなった。

どうやら森から大量の動物が街道に向かって降りて来ているらしい。

しばらくすると、熊や鹿みたいな大きな動物が見えてきた。

ステファン先生や冒険者達は、長く散らばっている生徒を集めて避難させることに必死になってる。

俺も剣を持っていたら、こんな獣くらい平気なのに。

いや、ちょっとこの数は無理かなぁ?

………そんなことを考えている場合じゃない。

俺も逃げなきゃ。

……ランスは、あっ、ランスがいない!

迫って来る獣の方を見ると、ランスはそちらに向かって走っている。

やがてランスは立ち止まると、両手を広げたんだ。

突然ランスの前の土が盛り上がり大きな壁が出来た。

壁が出来ると、驚いたことにランスの奴飛びやがった。

逃げる生徒達の周りを一周しながら、壁を次々に立てていく。
やがて俺達はランスの作った巨大な土壁の柵の中に全員入っていた。

皆んな驚いて声も出ない。

魔法なんてよくわからないけど、冒険者達があれだけ驚いているんだから、とんでもないことをランスはやらかしたに違い無い。

「先生、南の街道には魔物が出たらしいから行ってきます。」

ランスが、ステファン先生に向かって大声で叫び、南東に向かって飛んで行った。

あっという間の出来事で、何が起こったのかよくわからないが、とりあえず助かったのは間違いない。



<<ステファン視点>>
もう何が起こったのかわかりません。
護衛の方達が騒ぎ出したと思ったら、熊や鹿の大型動物が山の中から大量に出てきました。

こちらに向かって、すごいスピードです。
まるで何かに追われているかのような勢いで突進してきます。

ランス君が皆んなに指示を出しています。

どうやらわたしの周りに集まるように言っているようです。

わたしも我に返り、生徒の確認を行います。

ランス君の対応が良かったのでしょうか、わたしのクラス30人は無事にわたしの周りに集まっていました。

正確にはランス君を除いてですが。

ランス君を探すと、空中を飛んでいます。

手を前に出すと、その数メートル先の地面が隆起し大きな壁ができました。

ランス君は移動すると、次々にわたし達を取り囲むように四方を壁で囲みました。

動物は魔物と違って壁を避ける習性があります。

これで大丈夫だと思われます。

わたしは一息ついて、心配顔の生徒達をケアしました。

「先生、南の街道には魔物が出たらしいから行ってきます。」

ランス君は、わたしにそう叫ぶと、あっという間に南東の方角に飛んで行ってしまいました。

20分ほどで、動物の群れは収まったようです。しばらくすれば、また森に帰っていくでしょうね。


ところでこの壁からはどうすれば出れるのでしょうか?

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