最強魔法戦士は戦わない ~加藤優はチートな能力をもらったけど、できるだけ穏便に過ごしたいんだあ~
第97話【もどかしい恋の行方4】
<<リザベート視点>>
マサルさんが言っていた刻限が、だんだん近づいてきました。
マサルさんは、いつも通り飄々としながら、ロケット作成の指揮に当たっています。
ロケットには誰かが乗り込んで、最終的に隕石に極大魔法を打ち込む必要があります。
マサルさんは、自分がロケットに搭乗すると言っています。
マサルさんは何も言いませんが、密かに覚悟を決めているようです。
わたしにはよくわかりませんが、一旦空気の無い世界まで飛び出して隕石を壊した後、戻って来る時に空気の摩擦で高温が発生するようです。
その熱に耐えられるかどうかをマサルさんは懸念しています。
空気の摩擦ってよくわからないのですが、マサルさんの前世の世界では、その空気の無い世界まで行く技術があるそうです。
だから、マサルさんが心配するということは、それだけ危険を伴うということなのでしょう。
マサルさんはその対策として、なにか繭のようなものを作っているみたいですが、その仕上がりに不安があるのかもしれません。
行って欲しくないです。
少しでも不安があるのなら。
でも、わかっているんです。
誰かを犠牲にするのであれば、自分が犠牲になることを選ぶ人なのですから。
そんなマサルさんが大好きなんです。
わかっているから、止められない。
でも行かないで欲しい。
わたしの中で葛藤が交錯します。
魔族の方々が魔石に魔力を注いでいます。
これが終わると、マサルさんが行ってしまう。
気がつくと、わたしはマサルさんの胸の中で泣いていました。
「マサルさん行かないで。」
「リズ、誰かが行かなきゃいけないんだ。
一番成功する可能性が高い俺が行くべきだろう。」
「嫌だ。嫌だ。」
泣きじゃくるわたしに、マサルさんは優しく声を掛けてくれます。
「必ずリズの元へ帰ってくるよ。
約束するよ。
そして、帰って来たら結婚しよう。
待っていてくれるかい。」
わたしは頷くことしか出来ませんでした。
マサルさんは俯くわたしのあごを優しく持ち上げ、キスをしてくれました。
やがて、打ち上げの時が来ました。
魔族の方々が、魔石の魔力量の最終チェックに入っています。
マサルさんは既にロケットに搭乗しています。
マサルさんの合図で、最後の魔力が注がれ、ロケットが飛び立ちました。
巨大なロケットは、そのまま徐々に小さくなり、そして見えなくなった時、わたしの目からは涙が溢れて止まりませんでした。
<<マサル視点>>
ロケットが発射された。
目標となる隕石まで後1時間程度と予測している。
既に、身体の周りには薄い結界を張り、ポーチ型収納魔道具に入れた酸素ボンベから酸素供給を受けている。
大気圏ギリギリのところに着いたら外に出て、極大魔法をとにかく打ち込むだけだ。
多段階ロケットを次々切り離し、どんどん登っていく。
空の色が濃くなっていき、やがて真っ暗になった。
探知魔法を使い、隕石を探る。
ものすごい勢いでこちらに向かってくるのがわかる。
隕石の軌道から少しズレて、斜めから魔法を当てるように調整する。
やがて隕石が見えてきた。
いまだ。
無属性の衝撃波を連続して数え切れない程連発する。
空気中の魔素を取り込む魔方陣を使って、自分の魔力に変換 している。
ちょうど大気圏のギリギリのところにいるため、魔力の枯渇も心配ない。
何百発打ち込んだだろう。
ドーン!!
遂に隕石を粉々に粉砕できた。
この世界を守れたことに安堵する。
さて、リズが待っているあの場所に帰ろう。
俺は、ポーチ型収納魔道具からセラミックタイルを貼った楕円形のカプセルを取り出す。
理論上は、このカプセルで、大気圏再突入が可能になるはずだ。
カプセルには重力を軽減する魔方陣を刻んである。
意を決して、カプセルに乗り込み大気圏に再突入した。
<<リザベート視点>>
マサルさんが飛び立って3時間が経過した。
少し前に、大きな音がして、大量の彗星が見えたが、あれがマサルさんの言っていた、隕石の残骸なのだろうか。
しばらくして、暗くなりかけた空にひときわ明るい光が見え、それはだんだん大きくなって、頭上を通過し、飛んでいっしまった。
そして遠くの方でものすごい爆発音が聞こえこの辺りにも水が降り注ぐ。
まさかマサルさんが海に落ちたんじゃ、と不安がよぎる。
その時、頭上からわたしの名を呼ぶ声が聞こえてきた。
「リズ、ただいま。成功したよ。結婚しよう。」
その声の主は、いつもの飄々とした顔つきで降り立ち、そっとキスしてくれました。
第4章完
マサルさんが言っていた刻限が、だんだん近づいてきました。
マサルさんは、いつも通り飄々としながら、ロケット作成の指揮に当たっています。
ロケットには誰かが乗り込んで、最終的に隕石に極大魔法を打ち込む必要があります。
マサルさんは、自分がロケットに搭乗すると言っています。
マサルさんは何も言いませんが、密かに覚悟を決めているようです。
わたしにはよくわかりませんが、一旦空気の無い世界まで飛び出して隕石を壊した後、戻って来る時に空気の摩擦で高温が発生するようです。
その熱に耐えられるかどうかをマサルさんは懸念しています。
空気の摩擦ってよくわからないのですが、マサルさんの前世の世界では、その空気の無い世界まで行く技術があるそうです。
だから、マサルさんが心配するということは、それだけ危険を伴うということなのでしょう。
マサルさんはその対策として、なにか繭のようなものを作っているみたいですが、その仕上がりに不安があるのかもしれません。
行って欲しくないです。
少しでも不安があるのなら。
でも、わかっているんです。
誰かを犠牲にするのであれば、自分が犠牲になることを選ぶ人なのですから。
そんなマサルさんが大好きなんです。
わかっているから、止められない。
でも行かないで欲しい。
わたしの中で葛藤が交錯します。
魔族の方々が魔石に魔力を注いでいます。
これが終わると、マサルさんが行ってしまう。
気がつくと、わたしはマサルさんの胸の中で泣いていました。
「マサルさん行かないで。」
「リズ、誰かが行かなきゃいけないんだ。
一番成功する可能性が高い俺が行くべきだろう。」
「嫌だ。嫌だ。」
泣きじゃくるわたしに、マサルさんは優しく声を掛けてくれます。
「必ずリズの元へ帰ってくるよ。
約束するよ。
そして、帰って来たら結婚しよう。
待っていてくれるかい。」
わたしは頷くことしか出来ませんでした。
マサルさんは俯くわたしのあごを優しく持ち上げ、キスをしてくれました。
やがて、打ち上げの時が来ました。
魔族の方々が、魔石の魔力量の最終チェックに入っています。
マサルさんは既にロケットに搭乗しています。
マサルさんの合図で、最後の魔力が注がれ、ロケットが飛び立ちました。
巨大なロケットは、そのまま徐々に小さくなり、そして見えなくなった時、わたしの目からは涙が溢れて止まりませんでした。
<<マサル視点>>
ロケットが発射された。
目標となる隕石まで後1時間程度と予測している。
既に、身体の周りには薄い結界を張り、ポーチ型収納魔道具に入れた酸素ボンベから酸素供給を受けている。
大気圏ギリギリのところに着いたら外に出て、極大魔法をとにかく打ち込むだけだ。
多段階ロケットを次々切り離し、どんどん登っていく。
空の色が濃くなっていき、やがて真っ暗になった。
探知魔法を使い、隕石を探る。
ものすごい勢いでこちらに向かってくるのがわかる。
隕石の軌道から少しズレて、斜めから魔法を当てるように調整する。
やがて隕石が見えてきた。
いまだ。
無属性の衝撃波を連続して数え切れない程連発する。
空気中の魔素を取り込む魔方陣を使って、自分の魔力に変換 している。
ちょうど大気圏のギリギリのところにいるため、魔力の枯渇も心配ない。
何百発打ち込んだだろう。
ドーン!!
遂に隕石を粉々に粉砕できた。
この世界を守れたことに安堵する。
さて、リズが待っているあの場所に帰ろう。
俺は、ポーチ型収納魔道具からセラミックタイルを貼った楕円形のカプセルを取り出す。
理論上は、このカプセルで、大気圏再突入が可能になるはずだ。
カプセルには重力を軽減する魔方陣を刻んである。
意を決して、カプセルに乗り込み大気圏に再突入した。
<<リザベート視点>>
マサルさんが飛び立って3時間が経過した。
少し前に、大きな音がして、大量の彗星が見えたが、あれがマサルさんの言っていた、隕石の残骸なのだろうか。
しばらくして、暗くなりかけた空にひときわ明るい光が見え、それはだんだん大きくなって、頭上を通過し、飛んでいっしまった。
そして遠くの方でものすごい爆発音が聞こえこの辺りにも水が降り注ぐ。
まさかマサルさんが海に落ちたんじゃ、と不安がよぎる。
その時、頭上からわたしの名を呼ぶ声が聞こえてきた。
「リズ、ただいま。成功したよ。結婚しよう。」
その声の主は、いつもの飄々とした顔つきで降り立ち、そっとキスしてくれました。
第4章完
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