最強魔法戦士は戦わない ~加藤優はチートな能力をもらったけど、できるだけ穏便に過ごしたいんだあ~

マーくん

第54話【カトウ運輸設立記3】

<<マサル視点>>
従業員を集めた。
200人は最低でも必要だけど、そんなに一度に街から雇用したら、いろんなところから苦情がくるだろう。
てっとり早く、ナーラ領の奴隷商の所に居る奴隷達を買うことにした。
その際、何人かの奴隷商もついて来たので、とりあえず管理職扱いで頑張ってもらおう。

商会の名前を何にしようかと考えている。
マサル運輸じゃ目立ち過ぎるし、いっそのこと奴隷商の1人の名前を使ってヤング運輸にしようかと思ったら、泣いて拒否された。

仕方なく、俺の苗字からとってカトウ運輸にした。

俺の苗字って一部にしか明かして無いから、目立たなくって良いだろう。

ヤングを番頭にした。
頭も切れるし、人脈も広い。
商会設立には、いろんな手続きが必要になるが、俺が直接動くと目立ってしようがないから、前面に立ってくれる人が欲しかった。

何故、目立ちたく無いかって?

俺の性格もあるけど、3ヶ月程前から、俺をモデルにした舞台を上演しているんだ。
娯楽の無い世界だから、凄い人気で未だに満席御礼状態。

そんな中で俺が前面に出たら、大変なことになるのは目に見えるよな。

とにかく、ヤングは頑張ってくれた。
同じ頃社員になった奴隷商2人をヤングの下に付けたら、資料作成や元奴隷の社員の教育なんかをテキパキとやってくれている。

最近は、スラムから人を集めて教育している。

おかげで、俺は貴族や領主の相手に専念できる。


今日は、王城で領主会議がある。
後半の議題で俺も参加させてもらう。
カトウ運輸の設立とその役割を認知してもらい、各領地に物流センターを設置してもらう要請をする為だ。

カトウ運輸の議題に入る時間がきたので、会議室に入る。

事前にクラーク様から紹介があったからか、入るなりどよめきが起こる。

皆さん、舞台を見たのかな。
ちょっと恥ずかしい。

これまでも、ナーラ領での改革の内容と成果は、領主会議で報告されていたみたいだから、実利のところでも興味があったみたいだ。

カトウ運輸の設立については、全領主から賛成を得た。

ただ、領地への物流センター設置については皆慎重だった。

それはそうだろう。
まだこの世界に前例の無い大掛かりなものだ。
慎重になってあたり前だと思う。
ナーラ領から始めるから、各領地に戻ってしっかり検討して欲しい。

んん、1人積極的に質問してくる人がいる。
ターバ伯爵領のターバ伯爵だ。

「マサル殿の話しは、うちの代官のライスから良く聞いています。
今回の議題にカトウ運輸の話しがあることを代官に話したら、『ターバ領が一番最初にやりましょう。必ず成功します。』と強く言うものだから、彼と良く議論してきたんだ。
今マサル殿からその時の議論での不確定だったところをお聞きできた。
ナーラ領の次は是非ターバ領をお願いする。」

ライスっていうと、あー、ハーバラ村に研修に来ていた青年か。

確か収穫祭で一緒に飲んだ時に、運送事業の話しをしたっけ。

しっかり覚えていてくれたんだ。

「ターバ伯爵、ありがとうございます。
ナーラ領と並行して作業に入れるよう、調整してみます。」

「よろしく頼みます。」

ターバ伯爵の即断で、場が騒がしくなる。

利に聡い領主のことだ、判断が遅れて利を損なうことを嫌う。

それから、3ヶ月くらいの間に、ほとんどの領主から、物流センターの設置要請がきたのだった。

それからしばらくの間、俺は各領地に行って魔法で物流センターと輸送ルートを建設して廻ることになった。

ヤングさん、仕事が一気に増えちゃったけど、頑張って下さいね。

<<ヤング視点>>
どうにか、元奴隷達の教育が終わった。
大半が生まれた時から奴隷だったから、読み書き計算はできない。
まぁ、庶民の大半もできないからあまり変わらないか。

体格は良くても、剣も体術も使えない。
護衛や運搬に従事してもらうから、見込みのありそうなところを見繕って、鍛えている。
訓練担当として、元B級冒険者を雇った。

元奴隷の中には、エルフもいる。
もちろん魔法は使えなかったが、魔法使いの知り合いに頼んで、特訓してもらった。

最初は全然ダメだったが、そこはエルフ、魔力は豊富らしく、だんだん使えるようになってきたらしい。

まだ初級クラスだそうだが、盗賊を近寄らせない程度なら大丈夫だと言っていた。

冒険者ギルドに求人を出している。
毎日、10組くらいが面接に来る。
商売なのだからある程度接客対応が必要なのだが、このチェックで半数は落ちる。

マサル様からは、あまり落とさないように言われているが、わたしの矜持が許さない者が多すぎる。

採用した者も、再教育が必要だ。

マサル様は、今日も物流センターの設置に係る調整や、魔法を使って建築までしておられる。

いつ寝ているのか不思議だが、たまにこちらに顔を出して、わたしの報告をニコニコしながら聞いている。

そして一言、「ありがとうございます。この調子で頑張って下さいね。」と言って、窓から外に出て行く。

今度はどこの現場に行くのだろうか。……

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