最強魔法戦士は戦わない ~加藤優はチートな能力をもらったけど、できるだけ穏便に過ごしたいんだあ~
第36話【ユーリスタ狙われる】
<<マサル視点>>
サイカー領をでて、われわれ一行はワーカ領に向かった。
ワーカ領はユーリスタ様の実家であり、ユーリスタ様の実兄であるマーティン・ワーカ侯爵が治める地である。
ワーカ領は、南側を海に面しており、温暖で、漁業の盛んな土地でもある。
今回の訪問は、もちろんワーカ領における改革の進捗を視察することがメインだが、働き詰めのユーリスタ様を気遣う、ネクター王とナーラ大公爵の計らいでもあった。
ここで10日程滞在し、英気を養ってから王都への帰還となる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ワーカ領に到着した我らは、住民の熱烈な歓迎に迎えられ、無事首都ワーカの城に到着した。
マーティン様は、我らの到着を心から喜んで下さり、俺やマーク騎士以下の供周りにもねぎらいの言葉をかけて下さった。
その晩、早速晩さん会が開かれ、ワーカ領の貴族や有力者達との和やかな懇談が行われた。
その中にはユーリスタ様の幼少期を知る者も多く、近年のユーリスタ様の活躍に話題が集まっていた。
無事、晩さん会も終了し、俺達はそれぞれ与えられた部屋に入った。
ユーリスタ様と俺の部屋にはワーカ領の騎士団が護衛に付いてくれることになった。
「バリーン!!」
深夜、ガラスの割れる音が城内に響き、急いで窓を開けて外を見た。
庭に黒い人影が動くのが分かり、俺はすかさず耳と目を強化し、その者を探った。
「ユーリ.... 次……警告では……な…ぞ。」
その者は、城の5メートルはある壁を容易くロープを伝って登り、城外へと出ていった。
俺はそいつに向かって「ファインダー」と唱えた。
この魔法により、見えない魔力の探知機を付けておくと、半径20キロメートル圏内は、その場所を検知できる。
俺は、ユーリスタ様が狙われたと考え、部屋を飛び出しユーリスタ様の部屋に向う。
ユーリスタ様の部屋では、既に護衛が中に入り、安全を確保していた。
窓をみると、大きめの矢じりが付いた強弓用の矢が1本割れた床に散らばったガラスの上に落ちていた。
「ユーリスタ様、大丈夫ですか?」
「ああ、マサル様、大丈夫です。賊は?」
「自室の窓からちょっと見ただけですが、黒ずくめの人影が見えました。今から追います。」
「マサル様、お気をつけて。」
俺は頷くと、窓から飛び出して探知機を追跡した。
探知機の示す場所は、城からどんどん離れて、約15キロメートル離れた、一軒の小さな家の中で止まると、突然消えた。
俺はその家の近くで立ち止まって、「サーチ」魔法を使う。
家の中には、数人が居たであろう魔力の残渣が残っているが、人影は見えない。
「隠遁」魔法で姿を隠して、家の中に潜入した。
魔力の残渣を辿っていくと、本棚にぶつかる。
俺はその本棚の床に、僅かな傷があることに気付き、本棚を軽く押してみた。
すると本棚は少し動いたので、そのまま押した。
本棚の向こうには、もうひとつ部屋があり床に魔法陣が見える。
どうやらその魔法陣を使って、賊は逃げたようだ。
そのまま追跡することも考えたが、何処にでるかもわからないし、複数人いることも確実なので、今日のところは、引き上げることにする。
俺は手持ちの魔石に「サーチ」と「ファインダー」魔法を組み込んで「警報器」を作成、部屋の隅に隠して置いた。
これで誰かが此処に来たら、俺に通知がくる。
警報器には、記録機能を付けておいたので、万が一、俺が駆けつけるのが遅れても、行き先を特定できるだろう。
俺はタブレットを使って、その魔法陣の写真を撮り、検索してみた。
タブレットの画面には、「ホンノー人が使う移動用の魔法陣、200年前までは使われていたが、今では、失われた技術が使われている。」と、表示されている。
どうしてこんなものがあるのかよくわからないので、後でアベルかカインに聞くことにして、城に戻った。
<<マーク視点>>
ユーリスタ様の悲鳴を聞き、わたしはすぐにユーリスタ様の部屋に入った。
真っ先にユーリスタ様の姿を探すと、ベッドの上で落ち着いてこちらを向いておられ、わたしの姿を見止めると、ゆっくり頷かれた。
どうやら大丈夫なようだ。
部屋の中を見渡すと、窓の下には割れたガラスが散乱し、その上には、特殊な型の大きな矢じりが付いた、通常よりも一回り大きな矢が1本落ちている。
この矢は、昔攻城戦に使われていたものによく似ている。
この矢の後ろ側にロープを括りつけ、城壁の上に引っ掛けることで、壁をよじ登ったらしい。
偵察用や、少数での攻撃手段に向いていて、昔はよく使われていたらしいが、城壁が高くなったのと、城壁の上に警備兵を置くようになってからは、使われなくなった物だ。
歴史学の授業で聞いたことがある。
これを使うには非常に強い力が必要なため、人族ではあまり使われず、異能の力を持つホンノー人が好んで使用したと習った。
「ユーリスタ様、この矢は、かつてのホンノー人が使用した物では?」
「そうですね。200年程前、キンコー王国とホンノー人が争っていた頃に使用されていた攻城専用の武器だと記憶しております。
このような古い武器を用いる族とは何者でしょうか?」
そのような話しをしていると、マサル殿が部屋に入ってこられた。
「ユーリスタ様、大丈夫ですか?」
「ああ、マサル様、大丈夫です。賊は?」
「自室の窓からちょっと見ただけですが黒ずくめの人影が見えました。今から追います。」
「マサル様、お気をつけて。」
慌ただしくマサル殿は窓から飛び出していった。
ちょっと、この部屋は3階では?と窓に駆け寄り外を見ると、マサル殿は空中を走っていた。
「ユーリスタ様、マサル殿が....」
「いいのです、マーク。あの規格外さがマサル様ですから。慣れて下さい。」
規格外とかそんなものではないと思うが。
まあ、ユーリスタ様に付く者として能力が高いのは良いことだけれど。
部屋の片付けや、ワーカ領主のマーティン様や、警備隊長への説明を行っていると、マサル殿が戻ってこられた。
「ユーリスタ様、ただいま戻りました。」
「マサル様、ありがとうございます。それで、追跡の方は如何でしたか?」
「はい、ここから約15キロメートル程東に行ったところにある一軒家で、賊の足取りが途絶えております。
家の中を捜索したところ、ホンノー族が昔使用していたと思われる移動用の魔方陣を発見しました。
おそらく、この魔方陣からどこかへ逃亡したと思われます。
家の中には複数人がいた形跡が認められました。
家の中に警報用の魔道具を設置しておきましたので、もし、賊が戻ってきましたら、わたしに警報が届くと思います。」
「そうですか、ホンノー人ですか。実は、この矢も、200年程前までホンノー人が攻城兵器として使用していたものに類似しています。」
「なるほど、賊はホンノー人の線が濃いですね。
先日、ホンノー自治区のトラブル対応を行った時に親しくなったホンノー人の族長がいますので、確認に行ってきます。」
「よろしく、お願いします。マサル様。」
マサル殿は、頷くと、マーティン様や、警備隊長に挨拶をし、最後に私に向かって「ユーリスタ様をお願いします。この魔道具を使えば俺と連絡が取れるので、何かあれば連絡ください。」と言って部屋から出て行った。
サイカー領をでて、われわれ一行はワーカ領に向かった。
ワーカ領はユーリスタ様の実家であり、ユーリスタ様の実兄であるマーティン・ワーカ侯爵が治める地である。
ワーカ領は、南側を海に面しており、温暖で、漁業の盛んな土地でもある。
今回の訪問は、もちろんワーカ領における改革の進捗を視察することがメインだが、働き詰めのユーリスタ様を気遣う、ネクター王とナーラ大公爵の計らいでもあった。
ここで10日程滞在し、英気を養ってから王都への帰還となる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ワーカ領に到着した我らは、住民の熱烈な歓迎に迎えられ、無事首都ワーカの城に到着した。
マーティン様は、我らの到着を心から喜んで下さり、俺やマーク騎士以下の供周りにもねぎらいの言葉をかけて下さった。
その晩、早速晩さん会が開かれ、ワーカ領の貴族や有力者達との和やかな懇談が行われた。
その中にはユーリスタ様の幼少期を知る者も多く、近年のユーリスタ様の活躍に話題が集まっていた。
無事、晩さん会も終了し、俺達はそれぞれ与えられた部屋に入った。
ユーリスタ様と俺の部屋にはワーカ領の騎士団が護衛に付いてくれることになった。
「バリーン!!」
深夜、ガラスの割れる音が城内に響き、急いで窓を開けて外を見た。
庭に黒い人影が動くのが分かり、俺はすかさず耳と目を強化し、その者を探った。
「ユーリ.... 次……警告では……な…ぞ。」
その者は、城の5メートルはある壁を容易くロープを伝って登り、城外へと出ていった。
俺はそいつに向かって「ファインダー」と唱えた。
この魔法により、見えない魔力の探知機を付けておくと、半径20キロメートル圏内は、その場所を検知できる。
俺は、ユーリスタ様が狙われたと考え、部屋を飛び出しユーリスタ様の部屋に向う。
ユーリスタ様の部屋では、既に護衛が中に入り、安全を確保していた。
窓をみると、大きめの矢じりが付いた強弓用の矢が1本割れた床に散らばったガラスの上に落ちていた。
「ユーリスタ様、大丈夫ですか?」
「ああ、マサル様、大丈夫です。賊は?」
「自室の窓からちょっと見ただけですが、黒ずくめの人影が見えました。今から追います。」
「マサル様、お気をつけて。」
俺は頷くと、窓から飛び出して探知機を追跡した。
探知機の示す場所は、城からどんどん離れて、約15キロメートル離れた、一軒の小さな家の中で止まると、突然消えた。
俺はその家の近くで立ち止まって、「サーチ」魔法を使う。
家の中には、数人が居たであろう魔力の残渣が残っているが、人影は見えない。
「隠遁」魔法で姿を隠して、家の中に潜入した。
魔力の残渣を辿っていくと、本棚にぶつかる。
俺はその本棚の床に、僅かな傷があることに気付き、本棚を軽く押してみた。
すると本棚は少し動いたので、そのまま押した。
本棚の向こうには、もうひとつ部屋があり床に魔法陣が見える。
どうやらその魔法陣を使って、賊は逃げたようだ。
そのまま追跡することも考えたが、何処にでるかもわからないし、複数人いることも確実なので、今日のところは、引き上げることにする。
俺は手持ちの魔石に「サーチ」と「ファインダー」魔法を組み込んで「警報器」を作成、部屋の隅に隠して置いた。
これで誰かが此処に来たら、俺に通知がくる。
警報器には、記録機能を付けておいたので、万が一、俺が駆けつけるのが遅れても、行き先を特定できるだろう。
俺はタブレットを使って、その魔法陣の写真を撮り、検索してみた。
タブレットの画面には、「ホンノー人が使う移動用の魔法陣、200年前までは使われていたが、今では、失われた技術が使われている。」と、表示されている。
どうしてこんなものがあるのかよくわからないので、後でアベルかカインに聞くことにして、城に戻った。
<<マーク視点>>
ユーリスタ様の悲鳴を聞き、わたしはすぐにユーリスタ様の部屋に入った。
真っ先にユーリスタ様の姿を探すと、ベッドの上で落ち着いてこちらを向いておられ、わたしの姿を見止めると、ゆっくり頷かれた。
どうやら大丈夫なようだ。
部屋の中を見渡すと、窓の下には割れたガラスが散乱し、その上には、特殊な型の大きな矢じりが付いた、通常よりも一回り大きな矢が1本落ちている。
この矢は、昔攻城戦に使われていたものによく似ている。
この矢の後ろ側にロープを括りつけ、城壁の上に引っ掛けることで、壁をよじ登ったらしい。
偵察用や、少数での攻撃手段に向いていて、昔はよく使われていたらしいが、城壁が高くなったのと、城壁の上に警備兵を置くようになってからは、使われなくなった物だ。
歴史学の授業で聞いたことがある。
これを使うには非常に強い力が必要なため、人族ではあまり使われず、異能の力を持つホンノー人が好んで使用したと習った。
「ユーリスタ様、この矢は、かつてのホンノー人が使用した物では?」
「そうですね。200年程前、キンコー王国とホンノー人が争っていた頃に使用されていた攻城専用の武器だと記憶しております。
このような古い武器を用いる族とは何者でしょうか?」
そのような話しをしていると、マサル殿が部屋に入ってこられた。
「ユーリスタ様、大丈夫ですか?」
「ああ、マサル様、大丈夫です。賊は?」
「自室の窓からちょっと見ただけですが黒ずくめの人影が見えました。今から追います。」
「マサル様、お気をつけて。」
慌ただしくマサル殿は窓から飛び出していった。
ちょっと、この部屋は3階では?と窓に駆け寄り外を見ると、マサル殿は空中を走っていた。
「ユーリスタ様、マサル殿が....」
「いいのです、マーク。あの規格外さがマサル様ですから。慣れて下さい。」
規格外とかそんなものではないと思うが。
まあ、ユーリスタ様に付く者として能力が高いのは良いことだけれど。
部屋の片付けや、ワーカ領主のマーティン様や、警備隊長への説明を行っていると、マサル殿が戻ってこられた。
「ユーリスタ様、ただいま戻りました。」
「マサル様、ありがとうございます。それで、追跡の方は如何でしたか?」
「はい、ここから約15キロメートル程東に行ったところにある一軒家で、賊の足取りが途絶えております。
家の中を捜索したところ、ホンノー族が昔使用していたと思われる移動用の魔方陣を発見しました。
おそらく、この魔方陣からどこかへ逃亡したと思われます。
家の中には複数人がいた形跡が認められました。
家の中に警報用の魔道具を設置しておきましたので、もし、賊が戻ってきましたら、わたしに警報が届くと思います。」
「そうですか、ホンノー人ですか。実は、この矢も、200年程前までホンノー人が攻城兵器として使用していたものに類似しています。」
「なるほど、賊はホンノー人の線が濃いですね。
先日、ホンノー自治区のトラブル対応を行った時に親しくなったホンノー人の族長がいますので、確認に行ってきます。」
「よろしく、お願いします。マサル様。」
マサル殿は、頷くと、マーティン様や、警備隊長に挨拶をし、最後に私に向かって「ユーリスタ様をお願いします。この魔道具を使えば俺と連絡が取れるので、何かあれば連絡ください。」と言って部屋から出て行った。
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