聖女と最強の護衛、勇者に誘われて魔王討伐へ〜え?魔王もう倒したけど?〜
17 勧誘お断り?
「……人探し?」
「あぁ。……名前は言えねぇけど、ちょいとな」
ルストがラクスの同行を拒否する理由を述べる。それを聞いて、リーネはふむと頷いてから言う。
「だったら、旅ついでに探せばいいんじゃない?それに勇者様のツテがあった方が早く見つかると思うんだけど」
「まぁ、そうかもな」
「だ、だったら!」
リーネの言葉にあっさりと頷くルスト。それに食いつくラクス。
「でもよ。勇者の旅ってなにかと面倒そうじゃねぇか」
しかしルストの言葉でラクスは固まる。だって否定出来ないんだもの。人類最大の面倒事である魔王討伐の旅だし。
「そうね。でも、それさえ我慢すれば目的達成は早まるかも知れないわよ?ついでの方も含めてね」
「ついで?……って、解呪聖法の使い手か?ツテでもあんのか?」
解呪聖法。聖法はリーネの得意な治癒、アンジェリカの得意な支援といったように聖法にはいつくかの種類分けが出来る。
その中でも最も使い手が少なく難易度が高いとされるのが解呪聖法だ。
ルストは教会で解呪聖法の使い手が居るかを、シスターにちゃっかり質問していた。そして大教会にも居ないという事を聞いていたのだ。
聖法に長けた聖国、その最高峰といえる機関の大教会でも居ない程に、極めて珍しい存在なのである。
「ツテ?ないわね」
「おいダメじゃねぇか」
「でも、ここに居るのは聖女よ?おまけに2人」
自分とアンジェリカを指差すリーネ。アンジェリカは指を差されて不快そうな表情を浮かべていたが、特に何も言わないでいた。
「……つまり?」
「聖法を最も扱える2人よ?解呪聖法も会得出来る可能性は高いんじゃないかしら?」
要は居ないならそれに成れば良いという話であった。
確かに聖女ならば会得出来る可能性は充分ある。
「聖国ではお国柄呪いなんて無かったから会得してないけど、やれない事はないかも知れないわよ」
「……そうですね。必要に思わなかったのでそもそも練習すらしてないだけなのは確かです」
意見を揃えるのが不本意といったアンジェリカだが、しかし同意してみせる。そしてそれは、下手な同調よりも説得力があった。
「……………なるほどな」
「でしょ?人探しだって勇者様に頼めば早いし、アンタの目的には沿ってると思わない?」
「あぁ、それは認める」
ついに頷いたルストに、ラクスが笑顔になる。
「じゃあルスト!仲間にっ…」
「はならねぇ」
「ちょっと、まだ何かあるの?」
リーネが呆れたように言うと、ルストも肩をすくめて言う。
「てか異端聖女さんよ、お前が俺を勧誘するのは意外だな。俺の事を嫌ってたろ? お前の恩は決闘で返した。もう関わらなくても良くなったんだぞ?」
「はぁ?別に……き、嫌ってる訳じゃないわよ」
彼女らしくなく、モゴモゴと語尾を弱めて言うリーネに、ルストは意外そうに目を少し瞠る。
「ルスト?なんで仲間にはなってくれないんだい?」
いい加減心が折れそうなものだが、ラクスはまだ食いついてきた。
ルストは言うか悩むようにしばし宙に視線を投げ、それから微かに笑って口を開く。
「めんどくせぇからに決まっ」
「ってるけど、それよりしんぱいなんだよね、ムムのこと」
ルストの軽口を否定せずに被せる妙技を披露するムム4歳。 やべっ、と言わんばかりにムムの口を塞ごうとするルストの手を、持っていたフォークで止めて言葉を続ける。
「ルスト兄はムムのことがしんぱいなの。だからあぶないとこにいかないようにしてるんだよ」
「……なるほど。ルスト、君ってやつは……ってフォーク刺さってないかい?!」
「ムム、腕を上げたな……」
フォークで手を止めたムム。側面ではなく先端で止めていたムムを、フォークから引き抜いて血が流れる掌を見つつ褒めるルスト。
「アンタ、そこは叱るとこじゃないの?保護者ならちゃんと教育してあげないと、将来暴力的な子になっちゃうわよ?」
「暴力聖女みたいにか?そりゃやべぇ。こらっ、ダメだぞムム!」
「ちょっと待ちなさいよ!聞き捨てならないわ!」
流れるようにケンカが始まり、話をまた戻すのに労力が要るなぁと再び頭痛を覚えるラクスに、救いが訪れる。
「ルクス兄、めっ!そろそろふざけすぎだよ!ちゃんとおはなししないと!リーネお姉ちゃんもおこっちゃヤ!」
ムムの言葉にピタリと止まる2人。すごすごと席に座り直すルストとリーネを見てから、ムムを見るラクス。
その瞳には、彼女がまるで小さな女神かのように映っていた。
「す、すごいっ……!!」
「あ、これ真面目に戦慄してるッスね」
「……仕方ない。ラクスはルストに弱いみたい。もうそこそこ精神的にキてる」
乾いた笑いを浮かべるクロディーヌと、いつの間にかローストビーフを注文して頬張っているリィン。
そんな中、すくっと立ち上がるムムに、全員の視線が集まる。
「でもね、ルスト兄?だいじょーぶだよ。だってみんなつよいし、ルスト兄がまもってくれるんでしょ?」
「……そりゃ、出来る限りは守るけどよ。わざわざ危ないとこに行く必要あるか?」
「でも、見つけたいんでしょ?ラクスお兄ちゃんなら見つけれるかもしれないんだよね?」
ルストにもたれかかるように顔を寄せるムム。
ルストはらしくもなく、一歩後退した。
「あぁ。……名前は言えねぇけど、ちょいとな」
ルストがラクスの同行を拒否する理由を述べる。それを聞いて、リーネはふむと頷いてから言う。
「だったら、旅ついでに探せばいいんじゃない?それに勇者様のツテがあった方が早く見つかると思うんだけど」
「まぁ、そうかもな」
「だ、だったら!」
リーネの言葉にあっさりと頷くルスト。それに食いつくラクス。
「でもよ。勇者の旅ってなにかと面倒そうじゃねぇか」
しかしルストの言葉でラクスは固まる。だって否定出来ないんだもの。人類最大の面倒事である魔王討伐の旅だし。
「そうね。でも、それさえ我慢すれば目的達成は早まるかも知れないわよ?ついでの方も含めてね」
「ついで?……って、解呪聖法の使い手か?ツテでもあんのか?」
解呪聖法。聖法はリーネの得意な治癒、アンジェリカの得意な支援といったように聖法にはいつくかの種類分けが出来る。
その中でも最も使い手が少なく難易度が高いとされるのが解呪聖法だ。
ルストは教会で解呪聖法の使い手が居るかを、シスターにちゃっかり質問していた。そして大教会にも居ないという事を聞いていたのだ。
聖法に長けた聖国、その最高峰といえる機関の大教会でも居ない程に、極めて珍しい存在なのである。
「ツテ?ないわね」
「おいダメじゃねぇか」
「でも、ここに居るのは聖女よ?おまけに2人」
自分とアンジェリカを指差すリーネ。アンジェリカは指を差されて不快そうな表情を浮かべていたが、特に何も言わないでいた。
「……つまり?」
「聖法を最も扱える2人よ?解呪聖法も会得出来る可能性は高いんじゃないかしら?」
要は居ないならそれに成れば良いという話であった。
確かに聖女ならば会得出来る可能性は充分ある。
「聖国ではお国柄呪いなんて無かったから会得してないけど、やれない事はないかも知れないわよ」
「……そうですね。必要に思わなかったのでそもそも練習すらしてないだけなのは確かです」
意見を揃えるのが不本意といったアンジェリカだが、しかし同意してみせる。そしてそれは、下手な同調よりも説得力があった。
「……………なるほどな」
「でしょ?人探しだって勇者様に頼めば早いし、アンタの目的には沿ってると思わない?」
「あぁ、それは認める」
ついに頷いたルストに、ラクスが笑顔になる。
「じゃあルスト!仲間にっ…」
「はならねぇ」
「ちょっと、まだ何かあるの?」
リーネが呆れたように言うと、ルストも肩をすくめて言う。
「てか異端聖女さんよ、お前が俺を勧誘するのは意外だな。俺の事を嫌ってたろ? お前の恩は決闘で返した。もう関わらなくても良くなったんだぞ?」
「はぁ?別に……き、嫌ってる訳じゃないわよ」
彼女らしくなく、モゴモゴと語尾を弱めて言うリーネに、ルストは意外そうに目を少し瞠る。
「ルスト?なんで仲間にはなってくれないんだい?」
いい加減心が折れそうなものだが、ラクスはまだ食いついてきた。
ルストは言うか悩むようにしばし宙に視線を投げ、それから微かに笑って口を開く。
「めんどくせぇからに決まっ」
「ってるけど、それよりしんぱいなんだよね、ムムのこと」
ルストの軽口を否定せずに被せる妙技を披露するムム4歳。 やべっ、と言わんばかりにムムの口を塞ごうとするルストの手を、持っていたフォークで止めて言葉を続ける。
「ルスト兄はムムのことがしんぱいなの。だからあぶないとこにいかないようにしてるんだよ」
「……なるほど。ルスト、君ってやつは……ってフォーク刺さってないかい?!」
「ムム、腕を上げたな……」
フォークで手を止めたムム。側面ではなく先端で止めていたムムを、フォークから引き抜いて血が流れる掌を見つつ褒めるルスト。
「アンタ、そこは叱るとこじゃないの?保護者ならちゃんと教育してあげないと、将来暴力的な子になっちゃうわよ?」
「暴力聖女みたいにか?そりゃやべぇ。こらっ、ダメだぞムム!」
「ちょっと待ちなさいよ!聞き捨てならないわ!」
流れるようにケンカが始まり、話をまた戻すのに労力が要るなぁと再び頭痛を覚えるラクスに、救いが訪れる。
「ルクス兄、めっ!そろそろふざけすぎだよ!ちゃんとおはなししないと!リーネお姉ちゃんもおこっちゃヤ!」
ムムの言葉にピタリと止まる2人。すごすごと席に座り直すルストとリーネを見てから、ムムを見るラクス。
その瞳には、彼女がまるで小さな女神かのように映っていた。
「す、すごいっ……!!」
「あ、これ真面目に戦慄してるッスね」
「……仕方ない。ラクスはルストに弱いみたい。もうそこそこ精神的にキてる」
乾いた笑いを浮かべるクロディーヌと、いつの間にかローストビーフを注文して頬張っているリィン。
そんな中、すくっと立ち上がるムムに、全員の視線が集まる。
「でもね、ルスト兄?だいじょーぶだよ。だってみんなつよいし、ルスト兄がまもってくれるんでしょ?」
「……そりゃ、出来る限りは守るけどよ。わざわざ危ないとこに行く必要あるか?」
「でも、見つけたいんでしょ?ラクスお兄ちゃんなら見つけれるかもしれないんだよね?」
ルストにもたれかかるように顔を寄せるムム。
ルストはらしくもなく、一歩後退した。
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