霧の異世界物語(ミスティアストーリー)

みうけん

第七話  奮闘

シャウルは今の戦況にさらに巨人が大量に入ってこられると魔術師たちはひとたまりもないと思い、いったんシャウルと魔術師たちもマユイルのいるところへ下がり、後ろからゴーレムに巻き付いているツルを炎の呪文で燃やした。マユイルも霧を張ってもシャウルの風で吹き消されるだけなので、いったん得意の霧は使わずに炎の呪文でツルを焼くことに専念した。マユイルが加わったことで炎はツルから伝わり、中心の木に届いて木に火が付きシャウルが火のついた部分に大量の風を送り込んだことで木が激しく燃え上がった。だがその間にわたってきた巨人の軍勢にゴーレムの半数をやられた。
マユイルは木が焼かれたのを見て素早く炎から霧に呪文を変更し、川を渡ってくる巨人の方向感覚を逆転させ、シャウルは木の矢に持ち替え、陸に上がった巨人の眉間を貫いていった。燃え上がる木に小さな魔物たちが水の呪文をかけ炎を消し、再び魔力を供給しているが、木を回復させる手段は持ち合わせていないようで少し前よりもツルの生える速度が遅いように見えた。
シャウルは弱った木には目もくれず指が壊れるほど矢を連射し、巨人を二百人は倒した。魔術師たちはそのまま炎の魔法でツルを焼いているが、陸に上がった巨人はあと五百体はいる。シャウルは魔術師たちに巨人を倒してほしいと考え、魔術師が相手にしている木に目をやった。シャウルは木が台車に乗っていることに気付き、イチかバチか弓矢に魔力を込め、台車の車輪を打った。台車は壊れ、横に傾き、土がこぼれ、ゆっくりと木も倒れた。木のツルは機能しなくなり、しようがないので魔物たちは直接呪文を木のゴーレムに向けて打ったがもうほとんど魔力が残っていないのか威力がかなり弱い。ようやく木の相手をしていた魔術師たちが巨人の相手をできるようになり、マユイルはこれを機に霧の足止めを解き、炎の呪文で巨人に攻撃をはじめた。
シャウルはマユイルが霧を張る必要がなくなって自由になったのを見てマユイルの方へ叫んだ
シャウル「マユイル、私の指を直してください。」
そう言うとマユイルがシャウルの方に走ってきて直接シャウルの指に手を触れ、シャウルの指を直した。
シャウルは治った手で再び向かってくる巨人の眉間を打っていった。辺りはもう夕方になっていてあと少しの信望だった。シャウルは全力で巨人の眉間を打ち抜いていき、ここまでで合計二千体は巨人の群れは葬っていた。シャウルはそのまま夕暮れまで打ち続け、暗くなって日が完全に沈んだところでマユイルが霧の呪文で巨人たちを退け、ひとまず川沿いの戦いは終わった。シャウルは夕暮れになるまでうち続けたせいで手にまめができ、皮がはがれ右の親指の爪がはがれかけていた。魔術師たちは木の枝を集め焚火を焚いて昼間から戦い続木で何も食べていなかったので持ってきていた食料を食べ始めた。シャウルは念のためコンパスを見たがコンパスは昼と同じ場所を刺している。シャウルが食料を食べ終わるとマユイルが傷ついた人を回復するために回ってきた。シャウルは両手を回復してもらいそのまま横になって体を休めた。
しばらくするとシャウルは行進音の様な音を聞き、音のする方を見ると何者かの軍勢がコスローの大森林の方から向かってきた。シャウルはパスジルやモーシーが応援に来てくれることを期待したが、よく見ると木のゴーレムの応援だった。
なぜ今送られてきたのだろうとシャウルが考えているとヨルフからのテレパシーが来た。
ヨルフ「シャウル、今そちらへ送ったのはこの森が襲われた時のために残しておいた木のゴーレムの軍勢だが現在の状況を判断して、半分の五百体だけ送っておく。」
シャウル「ありがとうございます。明日の戦いに生かします。」
シャウルは再び横になりながらコンパスを見たがメジクリアスの動いた形跡は見られない。夜の間に動かれると厄介だと思っていたがその心配もないようだ。

夜が明けて

シャウルは朝日が昇るとともにユミユルにまたがりマントを羽織って弓矢を持ち、昨日激戦を繰り広げた川へ向かった。川岸には先にマユイルが付いていた。ずっと霧を張ってくれていたのだ。
シャウル「敵に動きはありましたか?」
マユイル「特にありませんが、昨日のうちに到着すると思っていた四つ目の軍勢がまだついていないのが気になります。」
シャウルはコンパスを確認して言った。
シャウル「コンパスは昨日と同じところを刺しているのでおそらくは、四つ目の軍勢がまだついていないのは日暮れとともにその場で休んでいたかもしくわ何かの準備をしていたのだと思われます。」
マユイル「なんにせよまずは目の前の軍勢を退けるところからですね。」
日が昇り、魔術師やゴーレムが少しずつ川辺に集まるにつれて巨人や魔物たちも騒がしくなってきた。
完全に日が昇り、魔物側の二つ目と三つ目の軍勢とコスロー側の軍勢が配置についた。

お互いに少し消費した状態でコスロー側に木のゴーレム五百体が加わり巨人の声が響いた。
巨人の一人「かかれー」

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