霧の異世界物語(ミスティアストーリー)

みうけん

第六話  衝突

魔物の一人がそう叫ぶと一斉に魔物が川に入って泳ぎながらマユイルの方へ向かってきた。マユイルはいつものように泳いでくる魔物を包み込むように毒の霧を使い、霧の効果で魔物たちは陸にたどり着くまでに一人、また一人と川の底に沈んでいった。魔物の一人がまた号令をかけた
魔物の一人「やめー」
魔物の一人がそう言うと魔物たちは川に入るのをやめた。
マユイル「私のこの霧がある以上あなた方はこの先へは進めません。ここで引くならあなた方をこの霧で毒殺せずに済みます。」
魔物の一人「風であの霧を吹き飛ばせー。」
魔物の一人がそう支持すると魔物の軍勢の中の数人が風の魔術の様なものを使い、川の上に張っている霧をすべて吹き飛ばした。マユイルは霧体制があり、他はただのゴーレムなので風で跳ね返された毒の霧は効いていない。
シャウルは風で跳ね返されて霧の魔法が効かないのは少しまずいのでは、と思いながら少し後ろからマユイルと魔物の軍勢を見ていた。
するとマユイルはさっきの三倍の広さの超広範囲に毒の霧を発生させて魔物の軍勢を取り囲んだ。
魔物たちは風の呪文で霧を振り払おうとするが払っても払っても霧の量と濃度の前には風の魔術も時間稼ぎに過ぎず数十秒後、マユイルが霧の呪文を解くと、一つ目の魔物の軍勢は死体の山になっていた。シャウルはこんな簡単な戦いなのか?と思いながら二つ目の軍勢に目をやった。二つ目の軍勢は少し進みが遅く、軍勢の中心にダラスの洞窟で見た五人の魔術師を捕えていた時のような大きな木が台車に乗せられていて、ほかの魔物たちは一つ目の魔物の身長の半分くらいしかない小さなものばかりだ。
二つ目の軍勢も一つ目同様川の前で止まったが、一つ目の軍勢の死体の山を見て慎重になったのか三つ目の軍勢の到着を待った。シャウルは遠目におそらく二つ目の軍勢はあの小さな魔物が全員であの巨大な木を操作するといったものだろうと予測したがその場合、ゆっくり魔術なんて唱えているとマユイルの霧に一掃されてしまうので三つ目の軍勢を待っているあたり三つ目の軍勢は二つ目の軍勢の盾の役割を持っているのだろうとシャウルは予想した。そろそろメジクリアスが動き出すかなと思い、コンパスを見るとまだ遠くてよく見えない四つ目の軍勢の方向を刺した。おそらく四つ目の軍勢の中にメジクリアスがいるのだろうとシャウルは思った。しかしシャウルはもう時刻が昼過ぎであることを見たところ四つ目の軍勢が到着するのは夕暮れになるだろうと思った。もしも夜戦になるのであれば、マユイルの霧が見にくくなり、魔物の軍勢を狂わせることができるのでメジクリアスは夜戦挑んでは来ないとシャウルは読み、今日の相手は二つ目の軍勢と三つ目の軍勢で、メジクリアス用に魔力を取っておく必要はないと考えたシャウルは魔術師たちに作戦変更を伝え、シャウルと魔術師たちも前に出て、戦いの姿勢を見せた。
しばらくすると三つ目の軍勢が現れた。三つ目の軍勢は全員木のゴーレムに匹敵するほどの大きさの巨人で統一されており、巨人たちは全身茶色かつ白髪で金色の鎧を着ている。巨人の軍勢は木のゴーレムの五倍はあり、もし仮にマユイルの毒も聞かないのであれば四つ目の軍勢とメジクリアスがいなくても十分劣勢と言えるほどの勢力差だ。
巨人の軍勢がついに川の反対側に布陣した。
巨人の一人が叫んだ。
巨人の一人「かかれー」
巨人の一人がそう言うと鈍足な巨人たちが一人、また一人と川に入ってきた。巨人の身長でも川の底には足が届かず、巨人も泳いで川を渡った。マユイルが一つ目と同じように毒の霧で巨人を包んだが巨人に毒は聞かず、そのまま泳いできた。
ついに巨人の一体が川を渡り切り、木のゴーレムの一体と取っ組み合いになった。次々と巨人が渡ってきて木のゴーレムとの戦闘となり、マユイルはいったん後ろに下がり、川を渡っている途中の巨人たちにマユイルの膝くらいまでの高さの方向感覚を逆転させる霧を張って川を渡るのを抑制している。
マユイルの霧の力で最終的には川を渡った巨人は百人ほどで止まって、数で勝る木のゴーレムが殲滅した後、ついにあの二つ目の軍勢が行動を始めた。小さな魔物たちは自分たちの魔力を中心の大樹に蓄積している。おそらく中心の大樹から攻撃が来るのだろうとシャウルは考え魔術師たちに中心の木に向かって炎の魔法を放つよう指示し、シャウルはオーギルの力で風の魔力を作りだす準備をした。


次の瞬間二つ目の軍勢の中心の木のツルの本数が急に増え、とてつもない速さでツルが木のゴーレムに巻き付いて動きを止めた。魔術師たちはいっせいに炎の魔法を木のツルにぶつけ、シャウルはその炎を風で強化して、巻き付いたツルを焼き切ったが、マユイルのかけた方向感覚を逆転させる霧が晴らされて、再び巨人が川を渡ってきた。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品