完璧な辺境伯のお父様が大好きな令嬢は、今日も鈍感

蓮 怜

19、お父様の頭痛の種

今日の出来事を思い出し、久しぶりのワインを一口、口に含んだ。




今日は小さい時からエリーが行きたがっていた王宮に連れて行った。
それにしても、あんなに行きたがっていた王宮にエリーを連れて行かなかったのには、訳があった。






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我が国の王太子はまだ婚約されていない。
普通であれば公爵家のプロヴァンス家やショワズール家の令嬢と小さいうちから婚約となる。しかし、今回は、公爵家に男しかいなかったり、王太子との歳の差が10歳位以上あったりとしたため、エリーが2歳のになる頃、いきなり白羽の矢が立った。
エリーはもうここにはいないスーザンの忘れ形見である。次期王妃となれば会えることも少なくなる。それに常に命の危機にさらされていることは、歴代の王太子の婚約者や王妃を見れば明白である。そんなところにエリーをやれる訳がないと思い断固拒否で話は流れた。


それからしばらくして、王宮で王太子と歳の近い令嬢が集められてお茶会が開かれた。
言われるまでもなく王太子の婚約者決めだろう。最初のうちは、エリーの年が幼すぎると言う理由で断ってきたが5歳にもなると国王やその周りからも他の令嬢の名前を出されながら早くエリーにもお茶会に出席するように言われ始めた。
その頃にはエリーは、(決して親の欲目とかではないが)今でも将来が楽しみなほど美しさが周りでも評判だった。
そんなエリーがお茶会に行くとなると王太子の目にとまってしまうかもしれない。
そして、王太子が選んだとかなんとかと余計に面倒なことになるのが目に見えている。
だから、王太子の婚約者が決まったと聞いてから王宮に連れて行ったのだ。




それなのにこの紙はなんだ?
さっき執事から届けられた国王からの書状を見て額に手をあて、深いため息をついた。






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朝食の席にいつも通りの時間でやってきたエリーは


「おはよう、お父様」


と昨日のことがあったからかいつもよりも元気がない声でいうエリーに


「エリー」と静かに切り出した。


「何?お父様」
「昨日迷子になったときに誰かに会わなかったか?」


なんのことについて言われているかわからないというように言うエリーにそういうと


「あ!昨日言い忘れていたんだけど『ミゲル』と会ってお父様のところに行くまで話していたの!」


心当たりがあるどころか楽しのそうに王太子の愛称を呼び捨てで呼んでいる娘に頭を抱えたくなった。



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