完璧な辺境伯のお父様が大好きな令嬢は、今日も鈍感

蓮 怜

7、騎士達も王都へ

「「「「「「「「いってらっしゃいませ」」」」」」」」


使用人と共に団長とエミリア様を見送った後俺たちは、王都に向かう為に準備を始めた。


「ライマ!荷物の準備もう出来てるか?」


入団直後から仲良くしているオーウェンが大きな荷物を持ちながら言った。


「当たり前だろ、それよりお前荷物多くないか?」
「そんなことないだろ、普通だって。お前の荷物はどこにあるんだ?」
「見て分からないのか?コレだよ」


そう言って手に持っている袋を顔の近くまで持っていくと


「お前、コレだけなわけないだろ」


というので


「コレだけに決まっているだろ、お前の荷物の量が多いんだ」


と言ったら勝手に荷物を取って中を見始めた。


「なんで服が一着もないんだ?あるのはタオルと水ぐらいじゃないか」
「1日もせずに着くのに服をもっていく必要が無い。それにあっちの屋敷にも騎士の服があるしな」
「マジかよ!!」
「そんなこと言ってないで剣と馬の最終確認をしに行くぞ」


俺の荷物を取り返して言った。




ーーーーーーーー




「副団長!」


俺は木下で馬の世話をしていた人に声をかけた。


「なんだ?」
「全員の出発の準備が終わりました」
「そうか、出発するか!」


と言うとみんなの元へ馬に乗って行ってしまった。
俺も馬に乗って後に続いた。




「隊列はきちんとなっているなってオーウェン!!お前だけ場所を間違えているぞ」
「ホントですか?確かに俺はここだったと思うんスけど…」
「いや、あとから後ろの方に変わっただろ」


ほらアイツの隣に変わっただろ?っと副団長に言われてあぁ!!と言っている間抜けな友を白い目で見た。


オーウェンが自分のところに行くとすぐに王都に向けて出発した。


王都に向かう道は団長達の様に大通りを使わない。なぜなら、大勢で移動するので邪魔になってしまう事と王都に着くのが遅いからだ。だから今回も俺たちは森を突っ切り王都に向かう。移動し始めてから2時間程で森の中にある湖に着いていつも通りに休憩をとる。


「休憩の時にちゃんと馬を休ませろよ!」


副団長がみんなに呼びかけると「それぐらい分かってますよー!!」と言う休憩になって緊張感が抜けた騎士達の声が返ってきた。


「お前ら…そんなこと言いながら忘れる奴が毎回いるから言ってるんだろ?」


副団長はそいつらに釘を刺して見回りに回った。まるで保護者と子供だなぁと思いながらオーウェンの元に行った。


「ようッ」
「おぉ、副団長についてなくていいのか?」
「特に何も言われなかったし、いいだろ」


俺は、最近副団長の補佐に任命されて以来副団長と共に仕事をしていた。団長の補佐とは全然仕事の量が違うが任命されて急に現れた仕事を考えるとずいぶん使える部下だろうと自分でも思ってしまうほど働いたのだ。言われない限りもう仕事をしなくても大丈夫だろ。


「そういえばお前、昼飯持ってきたか?」
「当たり前だろ」
「おぉ!俺、忘れてきたからちょっとだけ分けてくれねぇか?」
「はぁ…お前出発する前に配られてただろ?」
「いやぁそれがさー、トイレに行ってる間に配られてたみたいですっかり気づかなくて忘れちまったんだよなぁ」
「ほら、今回だけだぞ」


そう言って俺はオーウェンに昼食にと騎士のために料理人達が用意してくれたサンドイッチを一個渡す。つくづく俺も甘いなと思うがオーウェンはまぁコレぐらいはと思わせるような人物なのだ。普段はこんな感じでダラシがないが戦闘になると一気に人が変わる。誰よりも冷静に敵を見極めて隙をつく。普通では厳しい相手でもコイツと一緒だと心強い。戦闘では冷静でいることが欠かせないからだ。一回でも冷静を失ってしまって隙を作ると敵からそこを狙われて一気に負けることだってある。俺が冷静さを掻きそうなときはコイツを見る。冷静なコイツを見るとつられて冷静になる
。まぁ普段がアレだから、戦闘中のアイツを知らないエミリア様は何でこの騎士団に入れたのか疑問に思われていたがな。


そんなことを考えながら昼食を食べ終えオーウェンと話しながらのんびりしていると


「準備しろーー!!」


と言う副団長の出発するために呼びかける声が聞こえてきた。


…しまった。馬に水を飲ませることを忘れていた…。









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