完璧な辺境伯のお父様が大好きな令嬢は、今日も鈍感

蓮 怜

辺境伯令嬢

「エミリア様、もう少し腕を上げて、体重をのせながら剣を振り下ろすのです。」
「もうこれ以上は腕が上がらない…」
「それでは団長のようにお強くはなれませんよ」
「お父様のように強く…」


いつも見る鍛錬中のお父様を思いうかべながら剣を振り下ろすと私の目の前にある大木が真っ二つにわかれた。 


「だいぶお上手になられましたね。」


7歳の誕生日にお父様にお願いして、剣の練習を始めて半年が経った。血筋なのか上達が早かった私は、今我がカロディアン家の騎士団(国内1、2を争う強さ)の入団直後の騎士とはほぼ互角というところまで強くなった。ただ、先祖代々筋肉がつきにくくお父様もすごく強いのだけれど、あまり筋肉は多くはない。私も例外なく筋肉がつきにくいので、どんなにトレーニングをしても腕は細いままだ。今、私に剣を教えてくれているライマも、私と同じように筋肉がつきにくく一見ヒョロっとした印象を持つが、我が家の騎士団でも上位5位に入るほどの実力を持つ。そんな彼に力だけではない戦い方を教わっている。


「まだまだだわ。 だってお父様は一振りでこれよりも大きな木を切っていたもの。」
「団長は、特別強いのでエミリア様はそこまで強くなられなくとも…」


いつもお父様に教えてもらったりもするが、あした王都の屋敷に行き半年ほど領地を空けるため、森に行って最後の狩に行っている。
私のお母様は体が弱く、私が生まれた時に死んでしまった。もう新しい妻を娶ってもいい時期らしいのだが、お父様にその様子はない。それに社交界でも、再婚はしないと断言している。そして、お母様の忘れ形見である私にたくさんの愛情を注いでくれる。
もちろん私は、強くてカッコいいお父様が大好きなのだ!




ーーーーーーーーー




 4時になった頃、お父様が帰ってきたという知らせを聞き私は階段を駆け下りた。玄関に着くとお父様はすでに帰ってきていた。


「おかえりなさい!!!!!」
「エリー、今日はいい子で留守番出来たか?」
「はい! お父様!!」


そういうとお父様は優しく笑って私の頭を撫でた。撫でられると褒められたみたいに嬉しくて目を細めていると


「今日はな、熊を倒してきたから熊を食べよう」


といって、キッチンに向かった、お父様の後を追いかけた。お父様は、熊を手際よく捌いていく。そしてどんどんいい匂いがしてきて、お父様特製のジビエというチャーシューみたいな料理が出来上がった。お父様はなんでも出来、料理も得意なのだ!!


お父様が着替え、ディナーがはじまった。まずは、お父様が作ってたジビエを食べる。


「お、おいしーーーー!!!!!」


お肉がほろっとほどけてジュワッと肉汁が出てくる。ほっぺたに手をあてて美味しさを表現する。お父様は、嬉しそうに「そうか」と言ってジビエを食べた。お父様も料理の出来に満足そうに頷いている。
シェフが作ってくれる料理ももちろん美味しいが、やっぱりお父様の作る料理が一番美味しかった!




ーーーーーーー






「エミリア様、朝ですよ。そろそろ起きられませんと出発時間にお支度が間に合いません。」


翌朝、ばあやが布団を剥ぎ取って言った。


「まだ時間があるでしょ?」
「いえ、もう10時になります。旦那様は、5時に起きて鍛錬をなさり、朝食を召しあがり、いつでも出発出来るまで終わっておりますよ。」
「お父様が?!」


それを早く言って!と思いながら飛び起きて侍女達に急いで服を着せてもらった。
お父様の部屋を覗くと執務をこなしているお父様がいた。


「お父様ー!!!」
「エリー、どうしたんだい?」
「お父様、鍛錬をするときは一緒がいいから起こしてって言ったでしょ!!!」
「エリーは、よく寝ないと大きくならないだろう?」
「それでもお父様と一緒にやりたかったのにー」


プゥっとほっぺたをふくらませるとお父様は「今度から起こすよ」と言って自分の膝に私をのせた。そのまましばらくお父様はその状態で執務を続けた。



「完璧な辺境伯のお父様が大好きな令嬢は、今日も鈍感」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「恋愛」の人気作品

コメント

コメントを書く