〜異世界で契約した従魔がEXランクの魔物達でした〜

ノベルバユーザー327690

第42話〜武魔法大会決勝 先鋒戦 シルフィVSザップ

第2章 イングレア王立学園編
第42話〜武魔法大会決勝 先鋒戦 シルフィVSザップ
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 ザラフ・フォン・エーベルバッハの魔人化騒動から約2週間が過ぎ、いよいよ武魔法大会の決勝を行う日となった。


 決勝はシードで決勝進出が決まっていたフェイルバード王立学園と1回戦でディフェンディングチャンピオンであり目下3連覇中のノズワール帝国学院を倒した僕達イングレア王立学園の対決だ。




 いつも通り家の前で待ち合わせをした僕達3人は、約束していた時間の30分前に試合会場に着いたのだった。


 試合会場に到着すると、既にオーグとフィオが来ていてフィオは僕達に気付くなり手を振っていた。




「ユーマくん、ルディちゃん、シルフィちゃんおはよう!」


「おはよう!フィオ」


  ルディとシルフィもフィオに笑顔で挨拶を返していた。
 すると横から、オーグが話しかけてきた。




「おはよう、ユーマ」


「オーグか。おはよう」


「いよいよだな」


「うん、そうだね。僕達はここで優勝しなくちゃいけないよね」


「すまないな、1部の馬鹿な貴族達のためにユーマ達も巻き込んで」


 オーグは、本当に申し訳なさそうに謝ってきた。


「謝らないでよ。確かに僕は元々この世界の人間じゃないけど、今はイングレア王国に住むユーマ・シンフィールドなんだ。この世界やこの国、今までお世話になった人やオーグ、クラスのみんな、婚約者達が大好きだ。だから絶対優勝してクーデターなんか起こさせないよ!」


「ありがとう、ユーマ」


 僕達は、固い握手を交わした。


「それにね...」


「それに...どうかしたのか?」


「僕はクーデターとか関係なく自分の意思でこの大会で優勝したいんだ。確かにスイウェル達は強いけどそれを倒して優勝って燃えるだろ?」


「確かにそうだな!」


「この大会目一杯楽しんで優勝してやろうぜ」


「おう!」


 僕がオーグと話していると、僕の視界の先からスイウェルとフェリアがやってきたのが見えた。




「やあ、ユーマにオーグ。おはよう」


「おはよう!スイ、フェリア」


「おはようございます!ユーマさん。今日は負けませんわよ」


 フェリアは僕の手を握って、宣戦布告をしてきた。


「臨むところだよ。確かに君達はノズワール学院より強いと思うけど僕達は絶対に負けないよ!」


 僕はそれに答えるように握り返したが、婚約者達に睨まれてしまった。


 うーん...どうしたんだろう?


「フェリアに言われちまったが、俺も言わせてもらう。俺達は今までの中でも最強に近いメンバーだ。だから、持てる力を全て出してユーマ達に勝つ!」


 「それは楽しみだね。でも僕達も簡単にはやられないし、最後に勝つのは僕達だよ!決勝はお互い悔いの残らないように全力でやろう」


「ああ!!」




僕はスイとも固く握手を交わしたあと作戦会議をする為、選手控え室に向かった。




 控え室に入った僕達は、決勝で出場する順番を決めていた。


 「1回戦ではオーグ、ルディ、フィオ、シルフィ、僕の順番だったけど決勝は少し入れ替えようと思うんだ」


 作戦会議の時間は限られている為、みんなが控え室に入って椅子に座ってすぐに順番の入れ替えを持ちかけた。


「入れ替えるのはいいが、理由を聞いてもいいか?」


 「うん、相手のフェイルバード王立学園はここ3年間先鋒と大将は変えてないんだよ。つまり...」


「先鋒と大将は変えてないからこちらが有利になるように考えれるということか?」


「そういう事。まあ今年は入れ替えてくる可能性もあるけどおそらくそれは無いだろうね」


「どうしてそんなに言いきれるんだ?」


 「スイはそんなに姑息な手は使ってこないだろうし、正々堂々戦いに来るならいつも通りの戦法の方が動きやすいからね。うちは僕が事前に入れ替えるかもって言ったのもあるけどメンバー全員が臨機応変に対応出来るからね。フィオもそう思うでしょ?」




 僕は3年連続でこの武魔法大会に出場しているフィオにも話を聞いてみることにした。




「そうだね。スイくんは初めて会った時から今まで変わってないから、おそらくユーマ君の考えている通りになると思うよ」




 「分かった。じゃあ、順番を発表するね。先鋒はシルフィお願い」


「了解!絶対初戦は勝ってみせるよ」


 「うん、頑張ってね!」




 シルフィは両手を胸の前で握りこぶしを作って、やる気に満ち溢れていた。


「何故シルフィが先鋒なんだ?」


 「ここ3年間向こうは先鋒にザップくん...斧を振り回して戦う大柄な子だね。その子を先鋒に起用しているんだ。だからうちで1番機動力があるシルフィにお願いするんだよ」


「なるほどな。つまりはシルフィ持ち前のスピードで相手を翻弄し相手の攻撃を躱し続けてこちらは攻撃を続ける感じか」


 「そうそう。よく分かってるね」


「まあな。その作戦なら行けるだろうな」




 どうやら、オーグも僕の作戦を聞いて納得してくれたようだ。




「次鋒から副将までは向こうも3年間バラバラだからなんとも言えないけど、予想と希望で言うね。次鋒からフィオ、オーグ、ルディの順番で行くよ。恐らく向こうはカーラ、フェリア、ヴィエラで来ると思うんだ」


「分かった。俺の相手はフェリア嬢か。厳しい戦いになりそうだな」


 「フェリアはそんなに強いの?」


「ああ、フェイルバード王国の中でもかなり強い部類に入ると聞いた事がある」


 「なるほど、じゃあオーグも全力出してよ?」


「勿論だ。手を抜いて勝てるほどフェリア嬢は甘くないからな」


 (どうやら、オーグもいつも以上にやる気を出しているようだね。これは試合が楽しみだ)


 僕は心の中でオーグの試合を楽しんで見ようと思った。


 その後、ルディもフィオも自分の順番に対しては「任せて!勝ってくるから」と言っていた。


 メンバーの順番が決まり、試合の開始までみんなで他愛のない話で談笑をするのだった。


――――――――スイウェルside――――――――


 一方その頃、フェイルバード王立学院側も控え室で出場する順番を決めていた。


「じゃあ、これから出る順番を決めていくよ。いつも通り不満があったり意見があったら気兼ねなく言ってきてくれ」


 スイウェルの言葉にメンバー全員が頷いた。


「ありがとう。早速だけど発表するね。まずは先鋒だけどいつも通りザップに任せるよ」


「おう!任せときな。いつも通り勝ってきてやるぜ」


 ザップはいつも勝ち気に溢れている。それがマイナスに繋がることもあるそうだが今回はどうやらプラスになりそうだ。




「続いて、次鋒はカーラで行くよ!」


「分かりました!頑張ってきます」


「うん、頑張ってね!」


 カーラはいい笑顔で頷いていた。




「中堅はフェリアにお願いするよ。多分向こうはオーグが来ると思う」


「オーグさんですか?私も本気でかからないと厳しい戦いになりそうですね」


「お、フェリアの本気が久しぶりに見れそうだな」


「ええ。期待してて下さい」


 フェリアもオーグとの試合が楽しみなのか握りこぶしを作りながら笑っていた。




「副将はヴィエラにお願いするね」


「分かったわ。恐らく相手のリーダーであるユーマくんはスイの相手になるだろうから私にはルディちゃんかフィオ辺りが来そうね」


「恐らくね。向こうのシルフィは獣人族だし機動力があるから出るとしたら先鋒のザップに当てて来るだろう」


「じゃあ、相手はルディちゃんと仮定して作戦を練るわ」


「それで頼むよ。向こうはフィオ以外の1年生4人とも剣も魔法も高いレベルで使えると聞いたからルディもその例に漏れないだろうね」


「今年のイングレア王立の1年生はレベルが高いのね!これは試合が楽しみだわ」




「そして俺が大将をやらせてもらう。恐らく向こうはユーマが来るだろうから俺も最初から全力で行くよ!」


「スイウェルさんも本気でやられるんですね。楽しみですわ!」


「ああ、そうでもしないとユーマには勝てないからな」


 俺たちが話し合っていると、ドアがノックされて向こう側から係員の声が聞こえた。




「そろそろ決勝戦の先鋒戦を始めますので代表選手は準備を済ませた後、闘技場への出入口までお越しください」


 いよいよ、決勝が始まる。
 俺たちにとっては最後の大会だ。


 最後くらい優勝して終わりたい!




「じゃあ、行ってくるぜ!」


「頼んだよ!ザップ」


「おう、任せておけ!」




 ザップは右手を高く上げて、答えてくれた。


―――――――――ユーマside―――――――――


 僕らが、話しているとドアがノックされて係員の声が聞こえた。


「そろそろ決勝戦の先鋒戦を始めますので代表選手は準備を済ませた後、闘技場への出入口までお越しください」




「じゃあ、行ってくるね!」


「うん!行ってらっしゃい。頑張ってね」


「絶対勝ってくるから試合終わったらご褒美頂戴?」


「分かったよ。なにか考えておくね」


「やった!これなら絶対勝てるね」


 シルフィは右手で拳を作って僕達に向けて突き出した。






「さあ!いよいよ始まりました武魔法大会決勝戦!!司会進行は私グリッドがお送りいたします!それでは両チームの先鋒戦に出る選手を紹介します。まずは、フェイルバード学園はザップ・リアースの登場だ!」


 紹介されたザップは右手を高く上げて声援に答えていた。


「ザップ、勝てよ〜!」


「あいつ体格大きいな。対戦相手がどんなやつかは知らないけど可哀想だな」


 ザップはどうやら学園でも人気なようだ。




「続いて1回戦ではディフェンディングチャンピオンであり武魔法大会3連覇中だったノズワール帝国学院を倒し決勝に上がってきたイングレア王立学院からはシルフィ・ホーンベルクの登場だ!」


 シルフィが登場すると、観客席からは応援の声と落胆の声が上がっていた。


 前者は学院の生徒や教師、1回戦でのイングレア王立学院の戦いを直接見た者達だろう。


 後者は、言うまでもないが1回戦での戦いを見ていない者やザップとシルフィの体格差を見ての判断だろう。


「シルフィちゃん、勝ってね〜」


「シルフィ君、頼んだぞ!」


「あの体格差じゃあ勝てねぇな」


「イングレア王立は先鋒戦捨ててるのか?」




「スイウェルの予想通りだな」


「どういう事?」


「さっき控え室で出る順番を決めた時、スイウェルが俺と当たるのはシルフィだって言ってたんだ」


「なるほどね。じゃあ、うちと同じだ」


「まさかそっちもか?」


「うん。うちのリーダーであるユーマが出場順を決める時にフェイルバート側の先鋒はザップ君で来るだろうから私に先鋒戦を任せてくれたんだ。私は見ての通り狐の獣人だからね」


「お互いのリーダーが似た者同士だったわけだ」


「そうみたいだね」


 試合前の緊張なんて感じてないみたいに私は笑って、ザップ君は苦笑いを浮かべていた。




「それではこれより、武魔法大会決勝の先鋒戦を行います。両選手前へ!」


 審判の人の合図に合わせて私とザップ君は1歩前に出た。




「お互い悔いの無いよう全力でプレーしよう!私が女だからって遠慮はいらないからね?ザップ君」


「ああ!勿論最初から全力で行くぜ。あと俺の事は呼び捨てで良いぜ」


「分かったよ!ザップ」




「それでは試合初め!」


 審判の人の右手が上がり、試合の開始が合図された。




「オラッ!」


 ザップは開始と同時に走り出すと、背中に背負っていた斧を手に持ち横に一閃した。


「うわっ!」


 シルフィはそれをギリギリで交していたが、シルフィの後ろの壁に横線を描くように切れ込みが入っていた。




「斬撃を飛ばしたんだね。もう少し避けるのが遅かったらあの壁みたいに斬られていたところだよ」


「その通りだ。今のは空刃という無属性の魔力を斧に乗せて放った技だ。初見で避けれたやつはシルフィで6人目だぜ」


「他の5人は誰なの?」


「うちの他のメンバーと俺に剣術を教えてくれた師匠だ」


 ザップは自分の技を避けられたというのに口元は笑っていた。




「今のはびっくりしたけど今度は私から行くね!」


 シルフィはそういうと、ザップ君の元に駆け出していた。


「まさか正面から突っ切って来るとはな!これでも食らえ!」


ザップ君は、シルフィに目掛けて斧を振り下ろした。




「そんなスピードじゃ私は斬れないよ!」


 シルフィは自身に振り下ろされた斧をひらりと躱すと、獣人族特有のスピードをフルに活かしてザップ君の周りを走っていた。


「なるほどなぁ。これが獣人族のスピードか。かなり早いな。じゃあ、これならどうだ!」


 ザップ君は斧を上に振り上げたと思ったら、詠唱を始めていた。




「また無属性魔法を斧に付けて斬るの?そんな大振りじゃあ、私は捉えられないよ!」


 シルフィはさっきと同じ技が来ると思ったのか、躱す準備をしていたが僕には違和感が拭えなかった。


(ザップ君、さっきと同じ技じゃシルフィには当たらない事くらい分かってるはずなのにまたあの構えに入っているということは当てられる自信があるのか?)




「行くぜ!シルフィ」


「いつでもおいで」


 ザップ君は詠唱を終わらせると、彼の周りにあった魔力が彼の斧にくっついた。




「食らえ!四の型、三又風刃斬り!!」


 彼は斧を振ると、斧から無属性の魔力が3つにわかれそれぞれ同時にシルフィに襲いかかっていた。




「これはすごいけど、まだまだだね」


 シルフィは3つに分かれた無属性の斬撃を避けた後ザップ君の元に瞬時に辿り着いて鳩尾の辺りに身体強化を纏った拳を叩き込んでいた。




「ぐはっ!」


 ザップ君は、大きく吹き飛ばされて壁に激突していた。


(あれでは立てても試合は続行不可能なくらいのダメージを負ったはずだ。でもシルフィのあの顔...まさかザップ君が立ち上がってくるのを見越して警戒を解いていないのか?)




 僕がそんな事を考えていると、土埃からザップ君が現れた。


 その瞬間、会場が沸いた。


「あのザップってやつ、すげぇ!」


「ああ、あの拳は相当効いたと思うが立ち上がってるもんな!」


「良いぞ!ザップ。お前はここからだ!」




「立ち上がってくると思ってたけど、立ち上がられるとやっぱり結構ショックだなぁ。さっきの拳思いっきり力入れたんだけどなぁ」


「いやぁ、結構効いたぜ!だがまだやれるね」


「そうこなくちゃね!じゃあ、続きをしようか!」


「ああ!」


 武魔法大会決勝戦は先鋒戦からより一層の激しさを増す。

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