〜異世界で契約した従魔がEXランクの魔物達でした〜

ノベルバユーザー327690

第40話〜謁見と3人目のプロポーズ〜

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 ザラフくんが魔人化した事件の翌日、僕やルディ、シルフィを含めたシンフィールド家とリザベート家は国王陛下であるガルムさんに謁見するため、王城を訪れていた。


 件の話は、僕が魔人との戦闘に疲れて寝てしまって父さん達には話していないため今日初めて話すことになる。


衛兵A「ここは王城である!」


衛兵B「今日は如何なる理由で参られた!」


  「蒼銀の双翼のユーマ・シンフィールドです。今日は国王陛下に謁見に来ました。アウグスト殿下とも約束してるので確認して貰えますか?」


 僕は、自分のギルドカードを衛兵さんに見せた。


衛兵A「ユーマ殿ですね。アウグスト殿下より指示を預かっております。門を開けるので暫くお待ちください」


 衛兵さんがそういうと、門が開き僕達は中に入れた。


 僕達は、王城に入るといつもの応接室に案内された。


「それでは、謁見の準備ができるまでここでお待ちくださいませ」


 僕達の後に来たメイドさんはそう言うと、一礼して部屋を出た。


ブライト「しかし、ユーマが国王陛下との謁見を取り付けるなんてな!アウグスト殿下の言質があったとはいえ何があったのか教えてくれてもいいんじゃないかな?」


  「昨日は疲れてて言えなかったんだよ。今日なんで謁見を取り付けて貰えたかは後で詳しく話すよ」


ブライト「後で分かるんだな?」


  「うん!それは保証するよ」


ブライト「分かった!じゃあ今は聞かないよ」


  「ありがとう!」


 その後、メイドさんが淹れてくれた紅茶を飲みつつ家族で談笑した。




 暫くすると部屋のドアがノックされて、先程紅茶を淹れてくれたメイドさんがやってきた。


「皆様、お待たせしました。謁見の準備が出来たので私に着いてきて貰えますか?」


 メイドさんの後に着いて行き、謁見の場所である王の間に案内された。


「この先が王の間となっております。謁見の作法などは大丈夫でしょうか?」


  「はい!大丈夫です」


「畏まりました。それでは、お進み下さい」


 メイドさんがそういうと、王の間の扉が開いて荘厳なBGMというかファンファーレが鳴った。


 僕とルディ、シルフィが先頭列を作ってその後ろに僕の父さんと母さんやユリウスさん、エイナさんが並ぶ形で赤い絨毯の切れ目まで歩いて行き片膝をついて右手を左胸に置いた。


 玉座の近くや僕達の近くまで大臣の人や、貴族の当主まで来ていた。


ヨハン「国王陛下のご登場である!」


 宰相であるヨハンさんの掛け声で国王陛下であるガルムさんが登場して玉座に座った。


ガルム「皆、面を上げよ!」


 ガルムさんの一声で、僕らや大臣の人、貴族の当主も顔を上げた。


ガルム「今日は息子であるアウグストから蒼銀の双翼のユーマ・シンフィールドと謁見して欲しいとの申し出があった為、今回の機会を設けた。その理由をそこにいるユーマから話してもらう。ユーマ、説明を」


  「はっ!先日行われたノズワール帝立学院との武魔法大会があった事は皆様もご存知だと思われます。その中で中堅戦である我が校のフィオ・ローレンツさんと帝国側のザラフ・フォン・エーベルバッハさんの試合がありました。最初はフィオさんが押していたのですが、ザラフさんが心臓を右手で掴んだと思うと急にザラフさんに魔力が集まり始めたのです。すると、ザラフさんは赤目に赤黒いオーラを放っておりました」


「まさかそれとは!?」


  「はい!皆様の予想通り、ザラフさんは魔物化した人、魔人となったのです」


 僕の説明にルディ、シルフィ、ガルムさん以外のみんなが口を開いて驚愕の表情を浮かべていた。


「おい!小僧!今の話は本当なのか?」


  「はい!本当です。私がこの目で確認しました」


「その魔人化したザラフはどうなったのだ!」


  「私が討伐致しました!」


 僕が魔人を討伐したと聞いて、父さん達はすごく驚いていた。


ブライト「ユーマ、本当にお前が討伐したのか?」


  「うん!そうだよ」




 大臣達や貴族の当主達が、困惑の声を上げる中ガルムさんが口を開いた。


ガルム「それでは、今回この国を魔人の驚異から救ってくれた蒼銀の双翼のユーマ・シンフィールドに報奨金と銀勲章を与える!受け取ってくれるな?」


  「はっ!有り難く頂戴致します!」


ガルム「これにて、謁見を終了する!蒼銀の双翼と紅銀の大地には、別室で詳しい話をする為ここに残ってもらう」


ヨハン「国王陛下、ご退場!」


 謁見が終わったあと、最初に通された部屋に戻ってきた。


ブライト「ユーマ、どういう事だ?きちんと説明してくれ」


  「ガルムさんが来たら、詳しく話すよ」


 父さんは、詳しい話が聞けると分かると、下がってくれた。


 暫く待っていると、扉が開いてガルムさんとヨハンさん、エリーゼさんが入ってきた。


 僕達が、立ち上がって挨拶をするとガルムさんは手を出して座るよう促してきた。


ガルム「ここは正式な場ではないので、そんなに畏まらないで大丈夫ですよ。とりあえず座りましょう」


 ガルムさん、エリーゼさん、ヨハンさんが座った後に、僕達もソファーに腰掛けた。


ガルム「ではユーマくん、詳しい話をしてくれるかな?」


  「はい!」


 僕は、ザラフくんが魔人化してしまった経緯を話し始めた。


  「まず、武魔法大会中堅戦に出た我が校のフィオさんが僕が教えた無詠唱魔法でザラフくんの虚を突き、序盤から攻めていました」


エリーゼ「ちょっといいかしら?ユーマくん」


  「はい、なんですか?」


エリーゼ「今、ユーマくんが無詠唱魔法を教えたと言っていたけど、あなたは魔法を無詠唱で撃てるの?」


  「はい、撃てますよ。今教えているシャルも直に無詠唱で撃てるようになるはずです」


エリーゼ「魔法って詠唱した方が、威力が上がるんじゃないの?」


  「実は、詠唱しちゃうと形式が決まりすぎて威力が落ちちゃうんです。詠唱する理由としては、イメージしやすいようにとなっていますがイメージが出来るのなら無詠唱の方が形式も決めずに自由に撃てるのです。だから無詠唱の方が威力が高かったりするんです」


エリーゼ「なるほどね。ユーマくんといると、魔法の常識が覆っていくわね」


  「もし良かったら、エリーゼさんにも無詠唱教えましょうか?」


エリーゼ「え!?良いの?」


  「はい!シャルと一緒にで良ければ、お教えしますよ」


サリー「私たちにも、教えて貰えないかしら?」


  「元々落ち着いたら母さんとエイナさんには教えるつもりだから、安心しなよ」


エイナ「ありがとう、ユーマくん」


ガルム「んん!盛り上がってる所悪いがそろそろ本題に戻してもいいかな?」


  「すみません、ガルムさん。では、続けますね。フィオさんの無詠唱による猛攻撃がやんだら、ザラフくんは立ってて、その後ザラフくんが自分の右手で自身の心臓を掴むと呻き声を上げだして、彼の体内に辺りから魔力が集まっていたんです。危険を察知した僕は、1年Sクラスの担任の先生であるラルフ先生にみんなを安全な場所に避難するように念話を飛ばしました。そして、僕はフィオさんを守るのとザラフくんを止めるために闘技場に入ると、ザラフくんの身体の周りに赤黒いオーラを放っていて目が赤かったので、父さん達に聞いていた魔人化だと直ぐに分かりました。僕は、自分の持てる最大の魔法を彼に放ち討伐に成功しました。ざっとした流れはこんな感じですね」


 一気に喋りすぎたせいで、喉が渇いていたのでメイドさんが淹れてくれた紅茶を一気に飲んでしまった。


 ガルムさんがそれに気付いて、すぐに紅茶のおかわりを持ってきて貰えることになった。


ガルム「なるほど。ユーマくん、説明してくれてありがとう」


  「大丈夫ですよ、これくらい。ところで帝国側はなにか言ってますか?」


ガルム「いや、今の所は黙認というか関与していないの一点張りです。彼の個人的な暴走なのかそれとも国や彼の家が総出での関与なのか今現在調べているところです。ところでユーマくん」


  「はい、なんですか?」


ガルム「与える報奨金についてだが、白金貨200でどうかな?それと銀勲章を与えよう」


  「頂けるだけありがたいので、文句はありませんよ」


 スタンピードの報奨金も大量に残ってるのにまた稼いじゃったよ(笑)


 まあ、いっぱいあって困るものでもないしな!


 こんなにいっぱい白金貨で貰っちゃうと金銭感覚狂いそうだ(笑)






 ガルムさんが、近くにあったベルを鳴らすと、ドアから執事さんが現れてお盆を持っていた。


ガルム「銀勲章をここに」


「畏まりました。旦那様」


老齢の執事さんは、お盆に置かれた銀色の勲章をガルムさんの前に置いた。


ガルム「勲章とは、この国において功績や業績を称し、授与されるものなのです」


 ガルムさんはそういうと、僕の胸のところに、銀勲章を付けてくれた。


ガルム「似合ってるぞ。ユーマくん」


  「ありがとうございます!この勲章に恥じぬようこれからも両親やパーティーメンバー、それぞれの従魔や学院の友人と研鑽していきます!」


ガルム「うむ。頑張ってくださいね」


 その後、暫くみんなで談笑したあと帰る時間となった。


ブライト「そろそろお暇するかな?」


サリー「そうね、ガルム。今日はありがとうね」


ガルム「いえ、ユーマくんがこの国を危険から退けてくれたのですから、これくらいはさせて貰いますよ」


ブライト「さ、ユーマ。帰ろう。今日はパーティーにしよう!」


  「みんなは先に帰ってて。僕はもうちょっとガルムさんとお話があるから」


ブライト「分かった。あまり遅くならない内に、帰ってくるんだぞ?」


  「うん、分かってるよ。パーティー楽しみにしてるよ」


 父さん達は、僕の頭を撫でた後応接室を出た。




  「ガルムさん、すみません。僕だけ残ってしまって」


ガルム「大丈夫ですよ。それよりも今からの話は皆さんには聞かせたくなかった情報なのですか?」


  「はい、この情報は神の使徒として、創造神であるゼノン様の代役としてガルム国王陛下にお伝えします」


 僕が、声を低くして神の代役としての情報だと言うとガルムさんとヨハンさん、エリーゼさんは背筋を伸ばしていた。


  「ゼノン様からの情報によると、今この国には2人の魔族が侵入しているそうなんです」


 僕が、魔族がこの国にいることを伝えると、3人とも信じられないような顔をしていた。


ガルム「ユーマくん、それは確かな情報ですか?」


  「はい、ゼノン様が言うには今の所は2人だけだけど今後増える可能性は充分にあり得るとの事でした」


ヨハン「これは一大事ですぞ!陛下」


エリーゼ「そうね、魔族なんてこの国の戦力かき集めて、勝てるかどうかくらいね」


  「その事なのですが、陛下達には、内密に動いて欲しいのです。目立って行動して魔族達に気付かれたら戦力が揃う前に暴れられる可能性がありますからね」


ガルム「分かりました。何かまた情報がわかり次第報告して貰えるかな?」


  「勿論です!」


 僕はガルムさんと握手をして、応接室を出て帰路に着いた。


 その帰りがけに、アクセサリー店に寄って赤い宝石が埋め込まれたネックレスを買った。


 その日の夜、フィオさんに念話を入れた。


  【こんばんわ、フィオさん。今大丈夫?】


フィオ【ユーマくん?大丈夫よ。どうしたの?】


  【明日って予定ある?】


フィオ【明日?明日は大丈夫だよ!】


  【じゃあ、明日会いたいんだけど何処に集合しようか】


フィオ【じゃあ、王都の中央にある噴水広場にしようよ。あそこなら待ち合わせ場所の定番だし】


  【じゃあ、お昼ぐらいに噴水広場に集合ね!ランチでも行こうよ。話したいこともあるし】


フィオ【分かったわ。楽しみにしておくね】


  【うん!おやすみ〜】


フィオ【おやすみなさい】


 就寝の挨拶をしあって、僕は早めに休んだ。




 翌日、お昼前...


  「母さん、今から出かけてくるね。お昼は外で食べるから要らないよ」


サリー「分かったわ。気を付けて行くのよ」


  「分かってるよ。じゃあ、行ってきます!」


サリー「行ってらっしゃい!」


 僕は、約束の時間の30分前に噴水広場に着いていた。


  (早く来すぎちゃったかなぁ。今日が楽しみすぎたんだもんな)


 しばらく待って、約束の10分前にフィオさんが手を振ってやってきた。


フィオ「おはよう!ユーマくん。もしかしてだいぶ待っちゃった?」


  「ううん、僕も今来たところだよ」


フィオ「じゃあ、そろそろ行こうか!」


  「うん、こっちだよ。僕の行きつけのお店に連れてってあげるよ。味は保証するよ」


 僕は、フィオさんの手を握った。


フィオ「あっ!?」


  「ひっ!人が多いからはぐれたら大変だからね!」


フィオ「うっ!うん...」


 僕は、フィオさんの手を握って歩いた。


 時間にして、徒歩10分位のところで、目的のお店に着いた。


  「ここだよ。外観はあまりオシャレじゃないけどね(笑)」


フィオ「そんな事ないよ!ユーマくんの行きつけのお店かぁ。味が楽しみだよ」


 僕は、そのままお店に入った。


 お店に入ると、このお店の女将さんであるシズナさんと看板娘である猫獣人の娘、エナクが接客をしていた。


エナク「いらっしゃいませー、あ!ユーマお兄ちゃんだ!ユーマお兄ちゃん久しぶりだね。」


  「うん、エナクも元気にやってるみたいだね!」


エナク「うん!」


 僕が頭を撫でてあげると、エナクは気持ち良さそうに目を細めていた。


シズナ「エナク?どうしたんだい?ってそこにいるのはユーマかい!?」


  「シズナさん、お久しぶりです!」


シズナ「久しぶりだねぇ。元気にやってるかい?」


  「まあ、程々ですね」


シズナ「そっちの美人なお嬢さんは、初めましてだね。私はシズナ。このお店の女将をしているよ。こっちは娘のエナクだ」


フィオ「初めまして、私はフィオって言います」


シズナ「フィオちゃんは、ユーマの彼女かなにかかい?」


フィオ「いえ、彼女ではなくて学園の先輩後輩ですね。それにユーマ君には、可愛らしい彼女もとい婚約者が2人もいますから」


シズナ「ユーマに婚約者?」


  「ここの所忙しくて、このお店に顔を出せなかったので知らないのも無理は無いですよ。僕の幼馴染であるルディと、僕の専属メイドだったシルフィに告白とプロポーズをして婚約者になったんです」


シズナ「あんたの幼馴染ってことは、ユリウスとエイナの娘かい?」


  「そうですよ」


シズナ「そうかいそうかい。なんにせよおめでとうだね!」


  「ありがとうございます」


 僕に、婚約者がいることを知ったエナクが頬を膨らましていた。


  「どうしたの?エナク」


エナク「私だってユーマお兄ちゃんと結婚したいよ!」


 急な爆弾発言に、僕も面食らってしまった。


シズナ「エナク、いきなり言ったらユーマだってびっくりするだろう!」


エナク「急じゃないもん!お母さんを助けてくれた時から、気になってたし気付いたら好きになってたんだもん」


 エナクは泣きながら2階にある自宅の部屋に上がってしまった。


シズナ「ユーマ、すまないね。あの子は年上に憧れが強い子だから」


  「いえ、大丈夫ですよ」


 すると、ここまで黙っていたフィオさんが口を開いた。


フィオ「ユーマくん、エナクちゃんのところに行ってあげて」


  「え、でも...」


フィオ「私はここで待ってるから行ってきなよ!」


  「分かったよ!シズナさん、上に上がってもいいですか?」


シズナ「ああ、構わないよ。娘を頼んだよ!」


  「はい!」


 僕は、シズナさんとフィオさんに頷くと、階段を上がってエナクの部屋の前に行った。


 エナクの部屋の扉をノックすると、エナクが泣きながら入っていいよと言ってきたのでそっとドアを開けた。


  「エナク...」


エナク「ユーマお兄ちゃん、いきなりあんな事言ってごめんなさい!びっくりしちゃったよね」


 僕は、エナクの頭を撫でながら言った。


  「そんなことは無いよ。確かにびっくりしちゃったけど、嬉しかったよ!だけど、今は一緒に来ていた女の子に気持ちを伝えたいんだ。その後になっちゃうんだけど、エナクのこともしっかり考えてから答えを出したい。だから、もう少しだけ待てる?」


エナク「うん!私待ってるね!」


  「ありがとう、エナク」


 僕は、エナクの頭を撫でながら抱きしめてあげた。




 エナクは部屋で考えることがあると言うので、僕が先に下に降りた。


シズナ「ユーマ、おかえり。エナクはどうしたんだい?」


  「エナクに自室で考え事をしたいから先に降りててと言われたので、僕だけ降りてきました」


シズナ「そうかい、ありがとうね」


  「いえ、大丈夫ですよ」


 僕はフィオさんの待つテーブルに向かった。


 テーブルに向かおうとしたら、フィオさんに声をかけている冒険者らしき若い男性が目に入った。


 フィオさんも困惑の色を表情に出していたけど、その男性は気付いていないようだった。


 僕は、早歩きでそのテーブルに向かった。


  「すみません、僕の連れに何か用ですか?」


「ああ?君みたいな子供はすっこんでな。僕は、この美しいお嬢さんに用事があるんだ」


  「だから、彼女は僕の連れだって言ってるじゃないですか!」


「おい、君!本当にこんな子供がいいのかい?僕の方がかっこいいし、収入も冒険者活動をしていてその子より絶対多いよ?」


 この人、全く聞く耳を持たないな!


  「フィオさん、テーブルを変えよ。この人達の近くだと、ご飯が美味しく食べられなくなっちゃうからね」


 フィオさんの手を取って、移動しようとした僕の道を、その冒険者が塞いできた。


  「何なんですか?あなたは。しつこいと衛兵に突き出しますよ。これだけ目撃者がいれば、どっちが悪いかなんて明白だと思いますけどね」


「君が素直に、そのお嬢さんを渡していれば怪我をしなかったのにね。僕に逆らった罪は償ってもらうよ」


 男性はそういうと、懐からダガーナイフを取り出して、こっちに飛んできた。


  「あーあ、ナイフ抜いちゃったよ。あんたからやってきたんだから、どうなっても知らないよ」


 僕はそういうと、飛んできた男のナイフを躱して魔法を唱えた。


  <闇鎖シャドウバインド


 すると、男性の影から、黒い鎖が飛び出してその男性を縛り上げた。


  「まあ、怪我を負わされた訳じゃないから牢で1日反省するんだな」


 騒ぎを聞きつけて、飛んできた衛兵さんにその男性を引き渡して、しっかり牢で反省してもらうよう伝えた。




  「フィオさん、ごめんね!騒がしくしちゃって」


フィオ「ううん、そんな事ないよ!ユーマくん、かっこよかった」


  「あ...ありがとう」


 暫くすると、シズナさんがメニュー表を2つ持ってきてくれた。


シズナ「お疲れ様だね、ユーマ。ユーマは小柄だし顔立ちも中性的だから舐められることも多いだろう!」


 シズナさんは、大きな声で笑っていた。


  「シズナさん、笑い事じゃないですよ!結構まじで絡まれること多いんですから困ってるんですよ」


シズナ「でも、ユーマなら今みたいに返り討ちに出来るだろう?」


  「まあ、そこは否定しないですけどね」


 僕は、頭を掻きながら苦笑いを浮かべていた。


 因みに、料理は相変わらず美味しくてフィオさんにも好評だった。


  「シズナさん、ごちそうさまでした!相変わらず美味しかったですとブルガさんにも伝えて貰えますか?」


シズナ「ああ、必ず伝えておくよ。フィオちゃんもまた来てね」


フィオ「はい!絶対にまた来ます」


 僕とフィオさんはシズナさんに手を振り、お店をあとにした。




 ご飯を食べた僕達は、王都から少し出た丘に来ていた。


  「フィオさん、今日はありがとうね」


フィオ「私の方こそありがとうだよ。あんなに美味しいお店教えてくれたんだし」


 暫く談笑して、僕は真剣な顔でフィオさんを見た。


  「フィオさん、今から大事な話をするけど良い?」


フィオ「うん、どうしたの?」


 フィオさんの可愛らしい顔が、僕の顔をじっと見ていた。


  「武魔法大会の時に、僕に告白してくれたでしょ?あれの返事...今からしても良い?」


フィオ「う...うん」


 恥ずかしかったけど、僕の事を好きって言ってくれたフィオさんにはちゃんと答えを出したい。


 だから、意を決して伝えた。


 僕の気持ちが、まっすぐはっきりとフィオさんに伝わるように彼女の顔を見つめて


  「フィオさん、僕もあなたが好きだよ。ザラフくんに傷つけられていたフィオさんを見て胸が苦しくなって、僕が酷い事を言ってフィオさんが泣いた時の顔を見て胸が痛くなってその後にフィオさんのことが好きだって気が付いたんだ。だから、僕と付き合ってください!」


 フィオさんは僕の返事に驚いていたけど、次第に瞳に涙を浮かべて首を縦に振った。


フィオ「嬉しい……ユーマくんの事は、最初弟みたいって思ってたけど武魔法大会に向けての練習中からだんだん惹かれて行って、極めつけは私の家庭事情や暗いところを見せても幻滅せずに、私のことを支えてくれた。そんなユーマくんが好きだったから、そのユーマくんに好きだと言って貰えて、私、嬉しくて、涙が止まらない……」


 良かった、告白は成功のようだ。


 僕は、告白した後昨日買っておいた赤い宝石が埋め込まれたネックレスが入った箱を取り出した。


フィオ「ユーマくん、それって...」


  「告白した後で急なんだけど、フィオ・ローレンツさん!僕と結婚してください!」


 フィオさんは最初、目を見開いていたけど、次第に泣きながら頷いてくれた。


フィオ「はい...!喜んで!」


 僕はフィオさんの後ろに回り、ペンダントを付けてあげた。


フィオ「ユーマくんに告白してもらった上に、プロポーズまでされるなんて……嬉しくてどうにかなっちゃうよ!」


 フィオさんが涙を流しながら振り向き、僕に抱き着いてきた。
 僕も彼女を抱きしめ返した。
 そして、僕達は顔を合わせ、ゆっくりと唇と唇が近づいていき、それが触れ合って僕達は幸せなキスを交わした。


 暫く、抱き合っているとフィオさんが僕の胸の中で口を開いた。


フィオ「武魔法大会の時にも、言ったけど私の家というかお母様が厳しい人なんだけど、私で良かったの?」


  「フィオさんだからいいんだよ。同じ家庭状況でも、別の人なら告白もプロポーズもしてないと思うしね」


フィオ「もう!ユーマくん、かっこよすぎるよ」


 そう言って、フィオさんはまた僕の胸に顔を埋めた。


フィオ「ところでユーマくん?」


  「どうしたの?」


フィオ「彼女というか婚約者になった女の事、さん付けで呼ぶの?」


  「そっそれは...」


 フィオさんは珍しく小悪魔みたいな笑顔を浮かべていた。


フィオ「学園の先輩後輩っていう関係から婚約者に変わったんだから、呼び捨てで呼んで欲しいなぁ!(ちらちら)」


  「分かったよ!じゃあ、これからはフィオって呼ぶね」


フィオ「うん!よろしく」


 僕はもう1回キスをした後フィオを家まで送り家への帰路に着いた。


 家に着く前に、ルディとシルフィには念話を入れてフィオに告白を返してプロポーズしてOKを貰った事を伝えると凄く喜んでくれた。


 前世では、恋人がいなかったのにこっちではもう3人もの可愛い婚約者が出来るなんて、地球に住んでた頃の俺に言っても信じてくれないだろうなぁ。


 そのあとの自宅でのパーティーはとても楽しかったのは言うまでもないだろう。

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