サムライだけど淫魔なので無双します ~淫魔王の血を引く少年は、剣と淫力で美少女達を屈服させる~
第7話 スリード死す
オリガとソフィアが敵に辱めを受けている時、スリードとイリーナの二人は、洞窟の奥深くで道に迷っていた。
「どっちに行けばいいんだろ……」
何度目になるのか、またもや分かれ道にぶつかり、スリードは困り果てていた。
歩き疲れたイリーナは、
「もう一歩も動けないわよ」
と駄々をこねて、その場に座り込んだ。スリードが立ち上がるように頼んでも、頑として受け付けない。
「一歩も動きたくないの! そもそも、あの馬鹿アルマのために、どうして私がこんな苦労しなければならないの? あ~あ、面倒だなぁ」
「そんなこと言わないで……行こうよ。ね?」
「もう足腰がクタクタよ」
イリーナは横をプイと向いた。拗ねている。
「弱ったなー」
最初からイリーナは戦闘要員ではないと気が付いていた。自警団の中でも、サポート的なポジションにいるのだろう。それにしたって体力が無さ過ぎる。
さてどうしようかとスリードが考えあぐねていると――
突然、洞窟の奥から剥き出しの殺気がぶつけられてきた。
スリードとイリーナは、あまりにも強大な殺気に驚き、お互い身構えて、殺気が飛んでくる方向から距離を取った。
黒髪、黒装束。長い髪を後頭部で束ねて、ポニーテールにしている。
鷹の如く鋭い眼。凛とした表情。その形相は、百戦錬磨の修羅にふさわしい。
女性にしては背が高く、スリードよりもやや大柄。腰の帯に挿している刀も、スリードの刀より、20センチほど長い。そのたったの20センチほどの違いが、恐怖感を二倍も三倍も増している。
これが、スリードの師匠、蒼麟だ。
「し、師匠⁉ やっぱりこの町にいたんですね!」
ようやく出会えた喜びを隠し切れず、スリードは駆け寄ろうとした。しかし、蒼麟の全身から殺気が放たれているのに気が付き、すぐに間合いを取った。
「師匠――?」
眉をひそめるスリード。まさか、先ほど放たれた殺気は、蒼麟が発したものだというのか。
「悪いが、再会を喜ぶ気ではないな、スリード」
師である蒼麟は、寒気のするほど冷たい声で、スリードに問い掛けてきた。
「なぜこのアズラックへ来た」
「もちろん師匠を探しにです。僕はまだまだ教わることがいっぱいある。だから」
「残念だ、スリード」
ジャキッと音がする。蒼麟が刀の鍔に指をかけ、いつでも抜けるように鞘から押し出したのである。
「し、師匠⁉ どうして⁉ 僕はただ理由を――」
「問答無用!」
皆まで言わせず、蒼麟は刀を抜いた。
キィィン! 軋むような金属音。
顔面まで迫った刃を、ギリギリでスリードは防ぎきった。蒼麟との度重なる練習が、体に記憶として染み込んでおり、相手の攻撃のタイミングを見切ることが出来た。が、並の人間ならば、確実に両断されている攻撃だった。
「なんで……こんなことを……⁉」
戸惑うスリードに対し、蒼麟は今度は横薙ぎに斬りかかってきた。スリードは刀の向きを変える。耳をつんざく激突音。腰を真っ二つにされる直前で、何とか防ぎきることが出来た。
蒼麟の眼には、凶暴な光が宿っている。
ギチギチギチ。
互いの刀が、鍔迫り合いで悲鳴を上げている。二人の両手が震え出した。
キン!
金属音の後、蒼麟の方から間合いを取った。
「ここへ来なければ、お前を斬る必要もなかった」
「じゃあ、僕はどうしたらよかったんですか! 何も説明も無しに、急にいなくなって! 僕は、他に頼れる人もいない、師匠しかいなかったんです! だから追うしかなかった!」
「だったら、私の力になってくれないか」
「力?」
その時、スリードは、謎のサムライが邪教徒の祭壇跡に現れるという噂があるのを思い出した。
「師匠、一体何を企んでいるんです?」
「……」
「やっぱり、湖に現れる、噂のサムライは――師匠だったんですね⁉」
「だったら?」
「もしも良くないことを計画しているのなら、一ヶ月前の邪教徒達のようなことを企んでいるのなら、今すぐにやめてください!」
「それがお前の答えか。残念だ」
蒼麟は冷ややかに言い放った。
「お前とは相容れないようだ。だが、お前と何合か斬り結ぶ内に、情が湧いてきてしまった。お前を殺したくはない……でも、殺さないといけない」
「師匠、ちゃんと話してください! 何があったんですか! どうして、こんな急に――」
「わかっている。お前が苦しんでいることは。突然いなくなって悪かったと思っている。だが、私だって苦しいんだ……だから」
グンッと腰を落とし、蒼麟は抜刀術の体勢を取った。
「だから、二度と私の近くに来ないよう……やはり、ここで命を絶つ」
蒼麟の体内から、どす黒い気が放出され始める。スリードは、この感覚を、ある練習の時に一回だけ味わったことがある。
そう、この技は確か――。
(無間活殺時限斬!?)
「イリーナさん、伏せ――」
「チェストオオオオオオオ!!」
まるで呪文のような、奇抜な気合いを発し、蒼麟は渾身の力を込めて刀を振り下ろした。スリードとの間合いは、互いの攻撃が届かないほど離れている。
突然、スリードの腰がバックリと裂けて、赤い血が噴き出した。
「ぐふっ!」
「え⁉ ス、スリード⁉ いやああ!」
イリーナは悲鳴を上げた。
スリードは、虚ろな目で、自分の傷口を眺めている。やがて、立つ力を失い、膝をついた。
「うっ……」
格が違う。弟子である自分が、こんなに強い師匠に、勝てるわけがない。意識が遠のき、あえなくスリードは倒れ伏してしまった。
「蒼麟、そろそろ行くよ」
最悪なタイミングで、洞窟の奥から獣人エイミが現れた。イリーナは「ひっ」と引きつった声を上げ、後じさりする。だが、エイミは一切イリーナのことを気にかけていない。相手するまでもない、と言わんばかりに。
「あれ⁉ この子、スリード君じゃないの⁉」
エイミは、倒れているスリードを見て、眼を丸くした。
「え、殺しちゃったの?」
「……」
「どうして?それでいいの?」
「……」
「ったく、何をやってるんだか。しょうがないなあ」
そして、エイミは腰の巾着袋から傷薬を取り出すと、イリーナに向かって放り投げた。
「……?」
放心状態のイリーナに、イライラした顔で、エイミは忠告する。
「スリード君を殺したくないんなら、早く私の薬を使うことね。人間の傷薬よりも、効き目は抜群だから」
それだけ言うと、エイミはさっさと立ち去った。
後に残された蒼麟は、涙を流している。たった今、自らの手で弟子を手にかけておきながら、そのことを悔いるかのように。
「すまない……スリード」
謝罪の言葉を残して、蒼麟はエイミの後を追い、洞窟の外へと向かっていった。
「行った……」
イリーナはぼんやりとしている。自分も殺されてしまうのかと覚悟していたが、なぜか見逃された上に、スリードのための傷薬までもらって、正直何がどうなっているのか頭が追いついていない。
「とにかく、薬を使わないと」
腰を抜かしていたイリーナは、何とか気を確かにし、エイミから貰った塗り薬をスリードの傷口に塗り始めた。右手を血まみれにしながらも、イリーナは一心不乱に応急治療を続ける。
「お願い、死なないで、死なないで……」
敵に立ち向かえなかった悔しさ、自分が弱いためにスリードに重傷を負わせた申し訳なさ、あらゆる感情が入り混じって、両目に熱いものが込み上げてくる。
「悔しい……悔しい……」
勝てない自分が、悔しかった。涙がこぼれる。
もうスリードは呼吸をしていない。
恐る恐る、胸に耳を当ててみる。
「!」
ボロボロと涙が溢れてきた。無力な自分を呪う涙だった。自警団の一員でありながら、肝心の時に目の前の人を助けられない、役立たずの人間だと、イリーナは自分を呪った。
スリードの心臓は、すでに止まっていた――。
「どっちに行けばいいんだろ……」
何度目になるのか、またもや分かれ道にぶつかり、スリードは困り果てていた。
歩き疲れたイリーナは、
「もう一歩も動けないわよ」
と駄々をこねて、その場に座り込んだ。スリードが立ち上がるように頼んでも、頑として受け付けない。
「一歩も動きたくないの! そもそも、あの馬鹿アルマのために、どうして私がこんな苦労しなければならないの? あ~あ、面倒だなぁ」
「そんなこと言わないで……行こうよ。ね?」
「もう足腰がクタクタよ」
イリーナは横をプイと向いた。拗ねている。
「弱ったなー」
最初からイリーナは戦闘要員ではないと気が付いていた。自警団の中でも、サポート的なポジションにいるのだろう。それにしたって体力が無さ過ぎる。
さてどうしようかとスリードが考えあぐねていると――
突然、洞窟の奥から剥き出しの殺気がぶつけられてきた。
スリードとイリーナは、あまりにも強大な殺気に驚き、お互い身構えて、殺気が飛んでくる方向から距離を取った。
黒髪、黒装束。長い髪を後頭部で束ねて、ポニーテールにしている。
鷹の如く鋭い眼。凛とした表情。その形相は、百戦錬磨の修羅にふさわしい。
女性にしては背が高く、スリードよりもやや大柄。腰の帯に挿している刀も、スリードの刀より、20センチほど長い。そのたったの20センチほどの違いが、恐怖感を二倍も三倍も増している。
これが、スリードの師匠、蒼麟だ。
「し、師匠⁉ やっぱりこの町にいたんですね!」
ようやく出会えた喜びを隠し切れず、スリードは駆け寄ろうとした。しかし、蒼麟の全身から殺気が放たれているのに気が付き、すぐに間合いを取った。
「師匠――?」
眉をひそめるスリード。まさか、先ほど放たれた殺気は、蒼麟が発したものだというのか。
「悪いが、再会を喜ぶ気ではないな、スリード」
師である蒼麟は、寒気のするほど冷たい声で、スリードに問い掛けてきた。
「なぜこのアズラックへ来た」
「もちろん師匠を探しにです。僕はまだまだ教わることがいっぱいある。だから」
「残念だ、スリード」
ジャキッと音がする。蒼麟が刀の鍔に指をかけ、いつでも抜けるように鞘から押し出したのである。
「し、師匠⁉ どうして⁉ 僕はただ理由を――」
「問答無用!」
皆まで言わせず、蒼麟は刀を抜いた。
キィィン! 軋むような金属音。
顔面まで迫った刃を、ギリギリでスリードは防ぎきった。蒼麟との度重なる練習が、体に記憶として染み込んでおり、相手の攻撃のタイミングを見切ることが出来た。が、並の人間ならば、確実に両断されている攻撃だった。
「なんで……こんなことを……⁉」
戸惑うスリードに対し、蒼麟は今度は横薙ぎに斬りかかってきた。スリードは刀の向きを変える。耳をつんざく激突音。腰を真っ二つにされる直前で、何とか防ぎきることが出来た。
蒼麟の眼には、凶暴な光が宿っている。
ギチギチギチ。
互いの刀が、鍔迫り合いで悲鳴を上げている。二人の両手が震え出した。
キン!
金属音の後、蒼麟の方から間合いを取った。
「ここへ来なければ、お前を斬る必要もなかった」
「じゃあ、僕はどうしたらよかったんですか! 何も説明も無しに、急にいなくなって! 僕は、他に頼れる人もいない、師匠しかいなかったんです! だから追うしかなかった!」
「だったら、私の力になってくれないか」
「力?」
その時、スリードは、謎のサムライが邪教徒の祭壇跡に現れるという噂があるのを思い出した。
「師匠、一体何を企んでいるんです?」
「……」
「やっぱり、湖に現れる、噂のサムライは――師匠だったんですね⁉」
「だったら?」
「もしも良くないことを計画しているのなら、一ヶ月前の邪教徒達のようなことを企んでいるのなら、今すぐにやめてください!」
「それがお前の答えか。残念だ」
蒼麟は冷ややかに言い放った。
「お前とは相容れないようだ。だが、お前と何合か斬り結ぶ内に、情が湧いてきてしまった。お前を殺したくはない……でも、殺さないといけない」
「師匠、ちゃんと話してください! 何があったんですか! どうして、こんな急に――」
「わかっている。お前が苦しんでいることは。突然いなくなって悪かったと思っている。だが、私だって苦しいんだ……だから」
グンッと腰を落とし、蒼麟は抜刀術の体勢を取った。
「だから、二度と私の近くに来ないよう……やはり、ここで命を絶つ」
蒼麟の体内から、どす黒い気が放出され始める。スリードは、この感覚を、ある練習の時に一回だけ味わったことがある。
そう、この技は確か――。
(無間活殺時限斬!?)
「イリーナさん、伏せ――」
「チェストオオオオオオオ!!」
まるで呪文のような、奇抜な気合いを発し、蒼麟は渾身の力を込めて刀を振り下ろした。スリードとの間合いは、互いの攻撃が届かないほど離れている。
突然、スリードの腰がバックリと裂けて、赤い血が噴き出した。
「ぐふっ!」
「え⁉ ス、スリード⁉ いやああ!」
イリーナは悲鳴を上げた。
スリードは、虚ろな目で、自分の傷口を眺めている。やがて、立つ力を失い、膝をついた。
「うっ……」
格が違う。弟子である自分が、こんなに強い師匠に、勝てるわけがない。意識が遠のき、あえなくスリードは倒れ伏してしまった。
「蒼麟、そろそろ行くよ」
最悪なタイミングで、洞窟の奥から獣人エイミが現れた。イリーナは「ひっ」と引きつった声を上げ、後じさりする。だが、エイミは一切イリーナのことを気にかけていない。相手するまでもない、と言わんばかりに。
「あれ⁉ この子、スリード君じゃないの⁉」
エイミは、倒れているスリードを見て、眼を丸くした。
「え、殺しちゃったの?」
「……」
「どうして?それでいいの?」
「……」
「ったく、何をやってるんだか。しょうがないなあ」
そして、エイミは腰の巾着袋から傷薬を取り出すと、イリーナに向かって放り投げた。
「……?」
放心状態のイリーナに、イライラした顔で、エイミは忠告する。
「スリード君を殺したくないんなら、早く私の薬を使うことね。人間の傷薬よりも、効き目は抜群だから」
それだけ言うと、エイミはさっさと立ち去った。
後に残された蒼麟は、涙を流している。たった今、自らの手で弟子を手にかけておきながら、そのことを悔いるかのように。
「すまない……スリード」
謝罪の言葉を残して、蒼麟はエイミの後を追い、洞窟の外へと向かっていった。
「行った……」
イリーナはぼんやりとしている。自分も殺されてしまうのかと覚悟していたが、なぜか見逃された上に、スリードのための傷薬までもらって、正直何がどうなっているのか頭が追いついていない。
「とにかく、薬を使わないと」
腰を抜かしていたイリーナは、何とか気を確かにし、エイミから貰った塗り薬をスリードの傷口に塗り始めた。右手を血まみれにしながらも、イリーナは一心不乱に応急治療を続ける。
「お願い、死なないで、死なないで……」
敵に立ち向かえなかった悔しさ、自分が弱いためにスリードに重傷を負わせた申し訳なさ、あらゆる感情が入り混じって、両目に熱いものが込み上げてくる。
「悔しい……悔しい……」
勝てない自分が、悔しかった。涙がこぼれる。
もうスリードは呼吸をしていない。
恐る恐る、胸に耳を当ててみる。
「!」
ボロボロと涙が溢れてきた。無力な自分を呪う涙だった。自警団の一員でありながら、肝心の時に目の前の人を助けられない、役立たずの人間だと、イリーナは自分を呪った。
スリードの心臓は、すでに止まっていた――。
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