【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

855話 魔法の絨毯で採掘場へ向かう

 ナオンに加護(小)を付与してから数日が経過した。

「さて……。今日は採掘場を視察しておくか」

 ラーグの街に帰ってきてからというもの、俺はそこそこ忙しくしている。
 近い内にヤマト連邦に向けて出発するので、その前にできるだけの用事を処理しておきたいからだ。
 まぁ処理しきれないものがあったらトリスタやセバスに引き継げばいいだけなので、無理をする必要はないのだが。

「あいつら、大人しく働いているかな?」

 王都で捕らえた『黒狼団』『白狼団』『闇蛇団』、そして道中で捕らえた『灰狼団』。
 彼らは、西の森の奥にある採掘場で働き始めている。
 犯罪奴隷として隷属の首輪を嵌めた上で、だ。

 ブギー頭領やジョー副頭領の戦闘能力や指揮能力は高いし、上手く活用すればハイブリッジ男爵領のさらなる発展に貢献してくれるだろう。
 もっとも、使い潰すつもりはない。
 彼らの今後の働きぶりを見ながら、扱いを考えていくことになる。

「タカシお兄ちゃんっ! 早く行こうよっ!!」

 マリアが元気よくそう言う。
 他のメンバーと比べて、彼女は俺と行動を共にすることがやや多い。
 ハイブリッジ男爵家の面々はみんな強いが、一番強いのは当主である俺だ。

 とはいえ、不意を突かれればどうなるかわからない。
 物陰から飛び出してきてグサリ……とかな。
 俺の意識が保たれていれば、『リジェネレーション』や『ヒール』で自力回復できる。
 俺の意識が失われるほどの大ダメージであったとしても、即死でさえなければ他の者の治療魔法で回復できる可能性が高い。
 警戒すべきは初撃の大ダメージだけだ。

 というわけで、俺は基本的に単独行動を控えている。
 ミリオンズもしくは警備兵が同行することになっている。
 その中でも特に同行頻度が高いのがマリアというわけだ。
 彼女は移動能力に長けており領地の各部を視察する際に便利で、しかも治療魔法も使えるからな。

「ああ、そろそろ時間だな。準備できているか? キサラにトパーズ」

「オレはいつでもいけるぜ、タカシ親分」

「私も大丈夫です」

 そう返答したのは、元黒狼団のメンバーであるキサラと、元闇蛇団のメンバーであるトパーズだ。
 元々の予定では、彼女にも採掘現場で働いてもらう予定だった。
 しかし、思うところあって保留にしたのである。
 今回、鉱夫になったメンバーに出遅れる形で採掘場に合流することになる。

「よし、ではこの魔法の絨毯に乗れ」

「――へ? 魔法の絨毯だって?」

「これは何ですか? 私はてっきり、馬車か徒歩で向かうものだと……」

 キサラとトパーズが言う。
 戸惑いを見せる彼女たちに対し、俺は笑って告げた。

「いいから乗ってくれ。――いくぞ、マリア」

「うんっ!」

 4人ともが乗ったことを確認し、俺とマリアは魔法の絨毯に魔力を込める。
 すると、ふわりと体が浮き上がった。

「うおっ!?」

「きゃっ!?」

 驚く2人。
 俺はそんな彼女たちの様子を楽しんだ後、声を掛ける。

「ふふふ。これなら、移動が楽だろ? 魔物も無視できるし」

「お、おう」

「こんな魔道具があったなんて……」

 この魔道具は、ジェイネフェリアの作品だ。
 彼は結構有名らしく、王都に滞在中もその名をチラホラと聞く機会があった。
 そんな彼の独創的かつ高品質な魔道具に、俺の魔力を掛け合わせれば、かなりの性能を発揮できるというわけだ。

 俺たち一行は、空中を飛びながら採掘場へと向かう。
 位置関係としては、東から順にラーグの街、草原、西の森、採掘場といった感じだ。
 徒歩なら採掘場まで1日以上掛かるが、魔法の絨毯ならそれほど掛からない。
 いやはや、便利なものである。

 ――10分以上空を飛び続けた頃。

「……ん? あれは?」

 俺たちの眼下には、草原が広がっている。
 まだ西の森には入っていない。

「――!!」

「――っ!!!」

 数人の子どもが、ファイティングドッグと戦っているようだ。
 この辺りは危険度が低く、ファイティングドッグくらいしか出ない。
 初級冒険者向きの狩り場だな。

 しかし稀に、西の森から出てきた魔物と遭遇することもある。
 そのため、どちらかと言えば北の草原の方が初心者には人気だ。
 俺もかつては北の草原で狩りをしていたことがある。
 こっちの西の草原で狩りをするのは、西の森への行きがけの冒険者くらいのはずだ。
 そんなことを考えながら、俺は子どもたちの狩りを眺める。

「ほう……。ファイティングドッグは無事に倒したか。なかなかやる子どもたちだ」

 ファイティングドッグは低級の魔物である。
 だが、それは冒険者にとっての話だ。
 一般人にとっては十分な脅威である。
 ましてや、そこらの子どもでは数人がかりでも安定して倒すことは難しい。
 俺は感心した。

「や、やりましたぁ」

「…………(ぐっ!)」

「リン先輩とロロ先輩は強いですね。信じられないです」

 子どもたちがそんな会話をしている。
 すごい子どもたちだと思ったら、彼女たちだったか。

「よ、呼び捨てで良いですよぉ。ノノンさんの方が年上なのでぇ」

「…………(こくこく)」

「でも、ハイブリッジ男爵家の中ではお二人の方が先輩ですから。そこははっきりしないと」

 ちびっ子三人組。
 リンは8歳、ロロは7歳、そして新入りのノノンは12歳といったところだ。
 リンとロロは明確な幼女である一方、ノノンは膨らみかけの少女だな。

「――ん?」

 言わんこっちゃない。
 西の方から、数匹のゴブリンが近づいてきているじゃないか。
 やはり初心者は北の草原で狩りをする方が無難だぞ。
 彼女たちの実力なら自力で撃破できるのかもしれない。
 だが、ここは念のため助けておくことにするか。

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