【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

852話 可愛い妹

「はぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「うおおお!!」

 ナオンとナオミ。
 2人が同時に動いた。

「せぇいやああ!」

「ふんぬぅぅぅ!」

 激しい打ち合いが続く。
 どちらも一歩も引かない攻防だ。

「くっ……。流石に強いですね」

「ふふふ……。当たり前だ。貴様が『飛竜の型』を使えたのは驚きだが、所詮はそこまで。地力の差を痛感したか?」

 ナオンの言葉に、ナオミの顔が歪む。

「次でトドメだ。はああぁ……!」

「アタシだって……! はああぁ!」

 2人が大きく闘気を練り上げる。

「【亜空斬撃】!!!」

「【飛竜・爆砕波】!!!」

 凄まじい剣技と闘気弾がぶつかり合う。
 辺りに土煙が舞い上がった。
 やがて、徐々に視界が晴れてくる。

「はぁはぁ……。私の勝ちのようだな……」

「姉様……」

 ナオミが仰向けに倒れていた。
 ナオミの剣は折れており、ナオンの頬には小さな切り傷がある。

「アタシの負けだよ……。やっぱり姉様は強いや……。敵わないなぁ……」

「……そんなことはない。貴様の実力は本物だった。騎士団の厳しい鍛錬に音を上げず、閣下に才能を見出されただけはある。素晴らしい一撃だった」

 ナオンは剣を鞘にしまう。
 そして、倒れているナオミの方に歩いていく。

「お前は可愛い妹だ。危ない仕事をしてほしくなくて、頑張って突き放してきた。しかし、要らん心配だったようだな」

 ナオンが倒れている妹に手を差し出す。

「姉様ぁ……」

「ナオミ……」

 姉妹が見つめ合う。
 俺は思わず目を潤ませた。
 感動的なシーンじゃないか。

 これで一件落着だな。
 よかったよかった。

「素晴らしい試合だったぞ」

 俺が拍手をしながら近寄っていくと、ナオミとナオンがこちらに顔を向けた。

「ありがとうございます」

「……感謝します」

 ナオミとナオンが頭を下げる。

「今、傷を治してやろう。――【ヒール】」

 俺は2人に治療魔法をかけた。

「おぉ! 痛みが消えました! ありがとうございます!」

「相変わらず、ハイブリッジ様の治療魔法はすごいです!」

 2人共、元気になったようだな。

「――それで、だ。ナオミちゃんの実力は分かっただろう? ナオンの治安維持隊に入れようと思うんだが、どうだ?」

「これほどの実力を見せられては、反対はできませんな。私と5人の部下にナオミを加えて、7人でこの街の治安を守っていきましょうとも」

「そうか、それは良かった」

 とりあえず、これで一段落かな。
 王都から連れてきた者たちの中で、まずはナオミの配属先が無事に決まった感じだ。

「じゃあ、今後もよろしく頼むぞ。俺はこのあたりで失礼し――」

 俺がさっそうと立ち去ろうとした時だった。

「お待ち下さい! 閣下!!」

 ナオンが俺を呼び止めた。

「ん? なんだ? 他に何か問題でもあったか?」

「いえ、そういうわけではありませんが。ナオミの急成長のことです」

「うむ。それは元々持っていた基礎力に、俺という刺激剤が加わることで開花したんだ」

「そういう話でございましたね。ですが、基礎力で言えば私も負けてはいないつもりです」

 ナオンがそう力説する。
 彼女は『亜空斬撃』という大技こそ持っているものの、その戦闘能力を支えているのはしっかりとした基礎力だ。
 言っていることはその通りなのだが、何の話をしたいのかイマイチ分からないな。

「うむ。それで?」

「どうか私にも指導をしていただけないでしょうか? 試合には勝ちましたが、『飛竜の型』は私もまだ安定して使えない技なのです。このままでは、姉としての面目が立ちません。どうか私に、指導してください」

「いやいや、そんなことを気にしなくてもいいって。というか、指導ならたまにやっているじゃないか」

 ナオンを雇用してからというもの、時間が合えば模擬試合や鍛錬の監督などを行なってきた。
 ついさっきも、模擬試合をしていたし。

「ご指導にはいつも感謝しております。ただ、もう一歩踏み込んだ特別なご指導があるのではございませんか?」

「特別な指導?」

「はい! 閣下が見出されてきた者たちは、一足飛びに成長している者が多いです。そんな中、治安維持隊の私たちは取り残されているようで不安なのです。私たちが知らない特別な指導があるのではと思っています」

 ナオンがそんな不安を抱いていたとはな。
 確かに、ナオンを除く多くの者がその才能を開花させている。
 セバス、キリヤ、クリスティ、ネスター、ロロ、リンなどなど……。
 彼らは全員、俺の加護(小)の条件を満たしている。

 ナオン、王都組、採掘場組以外で加護(小)を未付与である配下は……。
 オリビアとクルミナくらいか。
 冒険者のトミーやアランもまだだが、彼らは現時点では御用達冒険者であり、配下ではないしな。

「ふぅむ……」

 俺は言葉に詰まる。
 特別な指導など、ない。
 強いて言えば、俺と仲良くなるイベントをこなすことが特別な指導とも言えるが。
 加護(小)の条件を満たせるか否か。
 その差が大きい。

「わ、私ではまだ閣下の信を得られるような働きができておりませんか?」

 ナオンが目に涙を浮かべながら訴えてくる。
 彼女の必死さが伝わってきた。
 ここで断るのは可哀想だな……。

「よし、分かった。特別に指導をしてやる。ただし、条件がある」

「条件ですか!? どのような条件でも仰せのままにいたします!」

「途中でのリタイアは認めないし、俺に抵抗することも認めない。そして、特別な指導にはナオミちゃんにも同席してもらう」

「はっ! 承知いたしました!」

 ナオンが背筋を伸ばして敬礼する。
 満足げな表情だ。
 それとは対称的に、妹のナオミは顔をこわばらせている。

「……えっ!? ま、まさかハイブリッジ様は……」

「ナオミちゃん。君も通った道だ。強力してくれるな?」

「で、でも……。姉様はそういった方面に疎くて……」

「大丈夫さ。俺に任せておけ。上手くいったら、ナオミちゃんにもまたやってあげるからな」

「は、はうぅ……」

 ナオミが顔を真っ赤にして俯く。
 姉妹だし、たぶん同じようなやり方でいけるだろう。
 弱いところも同じだったらやりやすいのだが。

「よし、それじゃあ行くぞ!」

 俺はナオミとナオンを連れて、屋敷に戻り始めたのだった。

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