【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

843話 ラーグの街に帰還

「ふう。ラーグの街も久しぶりだな」

 馬車に揺られながら、窓から見える景色を見つめる。
 ラーグの街から王都に向けて出発したのが、9月の上旬。
 今は11月の上旬。
 実に2か月ぶりの帰還である。

「もうすぐ到着するぞ。屋敷の前で解散とするからな」

「懐かしの我が家ですね!」

 俺の声に、ミティが反応した。
 俺やミリオンズの面々、それに愛する我が子たちは、もちろん屋敷の本館に帰る。

「ふっ。長旅もようやく終わりか」

 キリヤ、ヴィルナ、ネスター、シェリー、オリビア、クルミナなどハイブリッジ男爵家の配下の者たちは、屋敷の別館に住んでいる。
 留守番だったクリスティ、ヒナ、トリスタ、セバス、リン、ロロあたりと合流して、また日常の業務に戻ることになるだろう。

「……またこの街を拠点に活動しよう……」

「そうね。ちゃんと割の良い依頼を紹介してもらいましょう」

「花ちゃんはしばらくゆっくりしたいな~」

 雪月花は、あくまで御用達冒険者であり、直接の配下ではない。
 彼女たちはラーグの街の手頃な宿屋を借りることになる。

(だが、そろそろ彼女たちも配下に登用してもいい頃合いか?)

 一般の冒険者、御用達冒険者、配下。
 その3つの違いは何か?
 主に、俺からの依頼をどの程度優先してもらうかと、俺からどの程度の報酬を渡すかだ。

 一般の冒険者は、特に俺の依頼を優先して受けることはない。
 もちろん貴族からの依頼をこなせば箔がつくので、優先度が少しくらいは上がる可能性はある。
 しかし同時に、貴族の依頼は厄介の種と見なされて敬遠されることも多い。
 総合的には、通常の依頼と同じように依頼難易度や報酬を考慮して受注が決定されるだろう。
 ハイブリッジ男爵家が一般の冒険者に依頼を出す際には、相場観から大きく逸脱しない報酬額としている。
 潤沢な我が男爵家の経営資金からすれば、特に問題のない額だ。

(あまりにも多くの者を配下として登用してしまうと、いずれ財政が傾いたときに立て直しが困難になるんだよな……)

 配下の活動内容はハイブリッジ男爵家当主もしくは上層部によって決定される。
 第三者からの依頼が優先されることはあり得ない。
 毎日のようにしてほしい依頼があるのであれば、配下として登用しておいた方が確実だ。

 しかし同時に、報酬額も嵩んでくる。
 いくら優秀な冒険者だからといって、全てを配下に登用しようと思えば、金がいくらあっても足りない。
 対価として金銭だけではなく、他のものにも価値を感じてくれる者が理想的だ。

(月は名誉、花はのんびりした生活、そして雪はウォシュレットトイレといったところか……)

 特に花と雪には加護(小)を付与済みだし、信頼できる。
 月はまだ加護(微)にとどまるが、何かきっかけがあればそのうち条件を達成できるだろう。
 タイミングを見て、登用を打診してみるか。

「ここがアタシの新たな職場……。粉骨砕身の覚悟で働きます!」

 そう意気込むのはナオミだ。
 彼女は配下として登用済みである。
 給料の分、しっかりと働いてもらおう。
 それと同時に適度に甘やかしたりスキンシップをすることで、忠義度も高めていくつもりだ。

「わたしたちにできる仕事はあるのかな?」

「ノノンは無理に働く必要はないぞ。お父さんとお母さんで何とか稼いでいくからな」

 ノノンとニッケスが呟く。
 ニッケスは元Cランク冒険者であり、実力は確かだ。
 しかし腕と足の欠損がまだ完全には治っていない。
 俺やサリエで継続治療を行いつつ、ジェイネフェリアに義足と義手を作ってもらえば本格的な復帰も可能だろう。

 ノノンは、現代日本の感覚で言えばまだ働くような年頃ではない。
 だが、この国では家計次第で子どもが働くこともある。
 ノノンとしては、働くことに対して前向きなようだ。
 彼女には加護(小)を付与済みだし、同年代の女の子と比べて優秀なのは間違いない。
 本人が乗り気なら、活躍の場を探してあげたいところだ。

「モニカちゃんが街を離れるまでに、しっかりと料理を吸収するのです」

「あたしも、マリア様が出発されるまではこの街を観光させていただきます」

 料理人ゼラとハーピィの少女レネがそう言う。
 俺たちミリオンズは、しばらくラーグの街に滞在した後、ヤマト連邦の件でまた街を離れる予定だ。
 ヤマト連邦に関する指令は秘匿事項なので伝えていないが、近い内に街を離れることは伝えている。
 ハイブリッジ男爵家は冒険者から成り上がった貴族家なので、領都を離れること自体は極端に不自然なことではない。
 2人とも、特に違和感なくすんなりと受け入れてくれた。

(何とか、この街の魅力を伝えて滞在期間を延長してもらいたいが……)

 王都からここまでの旅路で、ゼラやレネとも多少は親睦を深めることができた。
 いずれは加護の付与を狙っていきたい。
 そのためには、俺と身近な場所に住んでもらうことは必須だ。
 それぞれサザリアナ王国王都やハガ王国に帰ってしまうよりも、このラーグの街に永住してもらった方が都合がいい。

 俺がそんなことを考えている間にも、馬車は進んでいく。
 そして門をくぐり、ラーグの街の中に入ったのだった。

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