【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

841話 空を飛んでますっ!!

「わああぁ! 空を! 空を飛んでますっ!!」

「ああ、気持ちがいいよな」

「はい!」

 俺の腕の中で興奮気味にはしゃぐラフィーナを見て、微笑ましい気分になった。
 俺とラフィーナは今、上空にいる。
 重力魔法の『レビテーション』で浮いているのだ。
 そして、ラフィーナを抱っこしている。
 そう!
 いわゆる『お姫様抱っこ』だ。

 『レビテーション』は本来、限られた対象物の重力を軽くする魔法である。
 複数人でまとめて浮きたい場合は上級の『エリアレビテーション』を使う。
 だが、俺の魔力の高さ、そしてラフィーナがまだ幼女であり軽いという事情により、レビテーションでも2人が浮けるというわけである。

「すごいです! まるで鳥みたいです!」

「そうだな。俺も最初は驚いた」

 俺はそう言って笑う。
 重力魔法を取得したばかりの頃は、自重をほんの少し軽くする程度が限界だった。
 自重を軽くした状態でジャンプすれば、通常よりも遥か高くに到達できる。
 また、崖などから飛び降りた後に自重を軽くすれば、比較的安全に着地できる。
 そんな使い方しかできなかった。

「貴方様、凄いです! 私、こんな景色初めて見ました」

「喜んでもらえてよかった。俺も、誰かと2人きりで飛ぶのは初めてだよ」

「えへへ、貴方様の初めてをいただいちゃいました」

 嬉しそうな顔で言うラフィーナ。
 ちなみに今は午前10時くらいだ。
 馬車の件の打ち合わせを終え、俺はラフィーナと共に時間を潰すことにしたのである。

「ほら、目的の街が見えてきたぞ」

「あ、本当ですね。大きい街……」

「ああ、王都ほどじゃないけどな」

 俺たちは高度を下げ、目的地に着陸した。
 ここはラフィーナの村から最寄りの街だ。
 ハイブリッジ男爵領の領都であるラーグの街より、一回り小さい。
 だが、さすがに山村と比べると大きい。
 村から出たことのないラフィーナがせがむので、こうして俺が連れてきてあげたわけだ。

「わわっ! あれは何ですか?」

「教会だな。お祈りをしたり、結婚式なんかをしたりする場所だ」

「じゃあ、あの建物は何でしょう? 見たことがない形の建物です」

「うーん……。図書館かな? この街には色々な建物があるようだな」

 俺たちはそんな会話をしながら、街の中を歩く。
 図書館か……。
 ラーグの街にあったかな?
 たぶんなかった気がする。
 財政に余裕があれば、建設してみてもいいかもな。

 途中で美味そうなまんじゅうを見つけた。
 ゼラへのお土産として買っておく。
 これで、昨晩のセクハラをチャラにしてもらおう。

「あっ! あれは何ですか?」

「冒険者ギルドだな。この街は初めてくるが、ここにあるのか」

「わぁ~、大きな建物ですねぇ」

「確かに、立派な建物だな」

 冒険者ギルドは世界中にあるらしい。
 文字通り世界中だ。
 このサザリアナ王国の各地だけじゃなく、新大陸における他の国々、あるいは中央大陸における各国にもあるとか。
 かなりの大型組織だ。
 組織内の資金運用がどのようになっているのかは知らないが、冒険者ギルド全体としては潤っているのだろう。
 俺が今まで見てきた冒険者ギルドは、立派な建物が多かった。

「ラフィーナは冒険者に興味があるのか?」

「あ、いえ……。私は荒事が苦手ですので」

「まぁそうだろうな」

 荒事が得意な6歳児がいたら、それはそれでヤバい。

「でも、貴方様は元は冒険者なのですよね? それで、活躍を認められて男爵様になられたとか……」

「ああ。正確に言えば、今も冒険者だけどな」

 貴族になってから、冒険者として活動することがやや減った。
 領主としての仕事が増えたためだ。
 本来、これ以上冒険者として活動する意味合いは薄い。
 シュタインなんかも、貴族になってからは活動を縮小していたそうだし。

 だが、俺の場合はそうはいかない。
 世界滅亡の危機に立ち向かうためにも、魔物を狩ってレベルを上げて、冒険者ランクも上げていきたいところだ。

「へえぇ……」

 ラフィーナが物珍しそうな目で冒険者ギルドの建物を見ている。

「入ってみるか?」

「えっ!? いや、その……いいんですか?」

「ああ、別にいいんじゃないか」

 俺はそう言うと、ラフィーナを連れて冒険者ギルドに入った。
 特に依頼を受けるつもりはないので、ぶらっと適当に見て回る。
 そんな中――。

「あら! ”犬狩り”じゃない!!」

 突然、声を掛けられた。
 振り向くと、そこには金髪の女性がいた。
 年齢は20代前半といった感じだろうか?
 美人だが、どことなく強気な雰囲気のある女性だった。
 そして、彼女は俺の顔を見て言った。

「やっぱり! あなた、”犬狩り”のタケシだったわね! 久しぶりだわ」

「ああ……。久しぶりだな……」

 俺はそう返す――が、名前を思い出せない。
 誰だっけ?
 うーん……。
 というか、俺の名前はタケシじゃなくてタカシなんだが。
 向こうもうろ覚えだし、付き合いはさほど深くなさそうだ。

(ここは頑張って思い出さないと……)

 面と向かって名前を問うのは、最後の手段だ。
 なんとか情報を繋ぎ合わせて、過去の記憶を掘り起こすのだ。
 俺ならばできる!
 うなれ、俺の灰色の脳細胞よ!!

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