【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

798話 タカシさん大好き~

 タカシと雪月花たちは、夜営中の食事を楽しんでいる。
 彼のアイテムルームに用意してあった料理は絶品だ。

「「「…………」」」

 その光景を羨ましそうに見ている者たちがいる。
 ヤナギたちだ。
 彼らは雪月花に返り討ちにあった後、タカシに治療してもらった。
 だが、Cランク下位の冒険者である彼らはアイテムバッグを持っていないし、夜の森に入って十分な量の食料や薪を集められるほどの能力もなかったのだ。

「……ん? なんだ、お前らも欲しいのか?」

「え? ええ、まぁ……」

 タカシの問いに、ヤナギがそう答える。
 治療直後にひと攻防交えたことにより、彼はタカシの実力を概ね把握していた。
 逆立ちしても勝てない相手だと悟っている。
 雪月花襲撃の件はなんだかんだウヤムヤになっている今、下手に刺激することは避けたかった。

「早く言えば良かったのに。ほら、遠慮なく食え」

 タカシは小皿に取った肉をヤナギたちに差し出す。

「……いいのですかぁ?」

「もちろん。好きなだけ食うがいい」

 タカシには加護付与スキルがある。
 彼に対して一定以上の忠義を向けた相手を強化するというスキルだ。
 その条件を満たしていくため、彼は誰に対しても優しく振る舞う傾向がある。

 これまでの経験から、年齢がより幼く、社会的地位がより低く、そしてタカシにとっての異性である方が条件を満たしやすい。
 よって、例えば騎士見習いのナオミや薄幸の少女ノノンのような者へ手を差し伸べることを、彼は最優先としている。

 ヤナギたちは、雪月花よりもひと回り年上であり、すでにCランク冒険者であり、男だ。
 そんなヤナギたちの優先度は高くない。
 だが、無理のない範囲で優しくすることはタカシにとって不自然なことではない。

「では、遠慮なくいただきましょうかぁ」

「「「ゴチになります」」」

 ヤナギたちが料理に手を伸ばす。

「……むっ! ボクもまだまだ食べるよ……」

 雪が自分の分を確保する。
 魔法使いであると同時に武闘家でもある彼女は、雪月花の中でもやや大食いなのだ。

「ふう。雪はよく食べるわね。私はお腹いっぱいよ」

「花ちゃんも~。たくさん食べて幸せ~」

 一方、月と花は食事を終えた。
 食べ終えるタイミングの違いが、ちょっとした運命の差を生むことになる。
 だが、そのことをまだ誰一人として気付いていない。

 そうこうしている内に食事は終わった。
 後片付けを済ませる。



「よし、寝るか」

 食事を終えたタカシは、テントに向かう。
 こちらも、食事を作る際に合わせてアイテムルームから取り出していたものだ。

「わ、私共もお借りしてもよろしいのですかぁ?」

「もちろんだ。好きに使うがいい。お前の要求通り、ちゃんと2つのテントを用意してやったんだからな」

 ヤナギの問いに、タカシが答える。
 ヤナギのパーティは6人構成だ。
 2つのテント――1人用と5人用が欲しいと言われて不思議に思ったタカシだが、深くは追及しなかった。
 パーティごとに独自の夜営編成などがあるのかもしれないと思ったからだ。
 1人用テントはパーティリーダーのヤナギが利用するようだ。

「ほら、雪月花。お前たちもおやすみ」

「ふふ~。タカシさんのおかげでたくさん寝れそう~。あふぅ……」

 タカシの言葉を受け、花がそう答える。
 彼は雪月花のためにもテントを1つ用意している

「花姉さんは夜に弱いからねぇ……」

「……そう言う月姉ぇも眠そうだよ? 最初の夜警はボクが担当してあげる……」

「そう? 悪いわね、雪」

 ここは森の中。
 Cランク以上の冒険者の集団とはいえ、魔物の襲撃には警戒する必要がある。
 当然、見張り役が必要となるわけだ。

「おう。よろしく頼むぞ。まぁ、俺もある程度は警戒しておくが」

 タカシには、気配察知術や夜戦術といったスキルがある。
 それらを使えば、魔物の接近に気付けるだろう。
 だが、それでも完全に安心できるものではない。
 万一のことを考えれば、誰かが起きているというのは安心感がある。

「そんなことより、本当にいいのか? 俺も同じテントに泊まって」

「もちろんだよ~。花ちゃんとタカシさんの仲じゃない~」

 花が呑気に答える。
 しかし、彼女とタカシの関係と言えば、一線を超える直前になって彼女がそれを拒絶したという間柄なのだが。

(ふふ。これは今度こそオーケーサイン! ……というわけでもなさそうだな)

 率直に言って、花は深く物事を考えていない。
 特に今は眠気が強くて頭が回っていない状態だ。
 同じテントに泊まる許可を出したことに深い意味はないだろう。

「タカシさん大好き~。何でもしてくれるし、何でも出してくれるし~。ぎゅ~」

「むほほ……」

 花に抱きつかれたタカシは、鼻の下を伸ばす。
 普段の花はこれほど距離感が近くないのだが、眠気によりリミッターが外れ気味なのかもしれない。
 ひたすらに甘やかしてくれるタカシという男は、おっとり系にしてぐうたらな花にとってストライクゾーンそのものだった。

(やはりいい香りがする……。それに、体が柔らかい)

 三姉妹の雪月花だが、その性格や体型には差がある。
 体型のふくよかさという点では、花が随一だ。
 そして植物魔法を操り、たまにハイブリッジ男爵家の花壇を管理している影響か、彼女からはいい香りが発せられている。

「二人共、その辺にしておきなさい!」

 見かねた月が2人を引き離すまで、タカシと花のイチャイチャは続いたのだった。

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