【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
793話 雪月花の冒険者活動
Cランクパーティ『雪月花』は冒険者ギルドを訪れていた。
「さぁ、今日は稼ぐわよ!」
「お~! 花ちゃんも頑張るぞー!」
「……うん。体を鈍らせないためにも、気合を入れないとね……」
次女の月がパーティを鼓舞し、長女の花が軽い感じでそれに同調する。
三女の雪は物静かに意気込んだ。
三姉妹の彼女たちは、ハイブリッジ男爵家の御用達冒険者である。
ラーグの街から王都までの護衛。
そして到着後にハイブリッジ男爵家が拠点としている宿屋の警護を担っている。
ただし24時間体制というわけではないし、時には休日も設けられている。
「せっかくの休みなのに、付き合わせて悪いわね」
「確かにゆっくりしたかった気持ちもあるけど~。月ちゃんが頑張りたいって言うなら、お姉ちゃんとして付き合っちゃうよ~」
「……それに、お金はいくらあっても困ることはないしね。たくさん稼ごう……」
三姉妹の性格はそれぞれ異なる。
月は上昇志向が強い。
ハイブリッジ男爵家の当主であるタカシの妻になることを狙いつつ、同時に冒険者としての功績を積んでランクを上げることに執念を燃やしていた。
そのため、日々の努力を欠かさない。
花のマイペースな性格は、月とは対照的だ。
のんびり屋で労働嫌いの彼女は、タカシの妾を狙っている。
彼の自室に招かれてそういうことを致そうとした時もあったのだが、土壇場で彼女は拒否した。
泰然自若とした雰囲気のある彼女だが、意外に初なところもあるのだ。
しかし、いざ戦闘になると、その実力を発揮する。
雪もまた、真面目で向上心が高い。
ただ、月の狙いが名声や権力に向いているのに対し、雪の目的は金銭だ。
男に養ってもらうのではなく、自分で稼いで生きていこうという意識が、彼女にはある。
そんな彼女たちは、王都近郊の森でゴブリン退治を請け負った。
さっそく森に向かう。
「いくわよっ! 【影縫い】」
「【ブランチスピア】~」
「……【アイスレイン】」
三姉妹はCランク冒険者だ。
月は剣術と影魔法。
花は剣術と植物魔法。
雪は武闘と水魔法を操る。
それらを活用し、容易くゴブリンを倒していった。
「ふぅ、これで依頼達成かしら?」
「お疲れ様~。でも、まだ油断しちゃダメだよ~」
「……そうだね。後少しだけ倒していく……?」
「そうね。時間はまだあるし、少しでも余分に狩っておきましょう」
冒険者ギルドの依頼形式にはいろいろとある。
ゴブリンのように害のある魔物の場合は、討伐依頼が常時設定されている。
そのため、1匹単位でも討伐に対して報奨金が出されるし、少しずつではあるが功績も加算されていく。
1匹でも多く狩っておくのは無駄ではない。
彼女たちが次の獲物を探して歩き始めたときだった。
別の冒険者パーティと遭遇した。
Cランクの冒険者パーティだ。
「おやおや~。雪月花さんたちじゃないですか~」
リーダーらしき男が嫌らしい笑みを浮かべながら声をかけてきた。
どうやら顔見知りのようだ。
「――ッ! あんたは、ヤナギ!」
「覚えてくれていて嬉しいですよ~。あの時はよくも殴り飛ばしてくれましたねぇ……」
ヤナギと呼ばれた男がそう言う。
彼は中性的なイケメンだ。
年齢は20代前半といったところだろうか。
パーティメンバーは20代後半のオッサンばかりであり、パーティ内でもやや目を引く存在だ。
「……」
月は嫌悪感を隠そうとしない。
彼女たちは、かつてヤナギのパーティと合同で護衛依頼を受けたことがある。
「あんたが私たちのお尻を触ってきたからでしょう!?」
「いやぁ、あれはスキンシップですよぉ~。同じ対象を護衛する仲間として、親睦を深めようとしたんです~」
「嘘つけ! 今さら何の用よ? またセクハラしに来たわけ?」
「いえいえ……。たまたまですよぉ。しかしどうです? 今度こそ一緒に組んでみませんかぁ~?」
「お断りよ! 誰があんたらなんかと一緒に!」
月が異性に求めているのは、名声と権力。
あるいは、『いずれはそれらを手に入れそうだと思える』レベルの才覚である。
Cランク冒険者にしてイケメンのヤナギであっても、月のストライクゾーンからは外れていた。
「……それは残念ですねぇ。では失礼しますよぉ~」
月の拒絶の言葉に、ヤナギは肩をすくめて去って行った。
セクハラ男ではあるが、ストーカー気質ではないらしい。
「もう! あいつのせいで気分が悪いわ! もっと狩りましょ!」
「……賛成。このイライラを発散しよう……」
「花ちゃんも頑張るぞー!」
3人はその後も狩りを続けた。
当初の予定では夕方前には切り上げるつもりだったのだが、結局日が暮れるまで続けた。
そして――
「今日はこれぐらいにしといてあげるわ! ゴブリンどもめ!!」
「……うん。今日はたくさん倒したから満足……」
「花もたくさん頑張ったから、気持ちよかったよ~」
三姉妹は気分良く狩りを終えた。
「じゃあ、帰ろっか」
「お~」
「……えっと。帰り道はどっちだっけ……?」
「こっちよ。しっかりしなさいな。まぁ、暗くて道が分かりにくいのは確かだけど……」
しっかり者の月が先導し、帰路につく。
日が暮れてしまっているが、大きな問題はない。
雪月花はCランクパーティで実力確かだし、そもそも王都近郊にあるこの森の危険度はさほど高くないからだ。
だが、この日は事情が違った。
「――なによ、これ……」
「……どういうこと……?」
「う~ん。これは……まずいかな~」
三姉妹は唖然としていた。
目の前に広がっていた光景に、ただ言葉を失っていた。
「こんなところに倒木なんてなかったはずなのに……。どうして……?」
月は疑問を口にした。
彼女たちの行く手を阻むかのように、巨木が倒れ込んでいたのだ。
「どうする~? 脇道に回る~?」
「……でも、迂回すると時間がかかり過ぎるかも。あれぐらいの倒木なら、乗り越えられないこともない……」
「悩ましいところね」
三姉妹が意見を交わす。
そのときだった。
「――ッ!?」
三姉妹は気付いた。
自分たち以外の何者かの気配があることを。
「おやおや、こんなところで何をしているのですかぁ?」
「「「……ッ!」」」
三人は一斉に振り向く。
「さっきぶりですねぇ~。雪月花のみなさん」
そこにはヤナギを筆頭に、6人の冒険者が立っていたのだった。
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