【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

761話 全員で掛かってこい

 俺は王都騎士団の訓練場を訪れている。
 ナオミをハイブリッジ家に勧誘するためだ。
 彼女から快諾をもらえたまでは良かったのだが、周りの少女騎士たちから猛反発を受けてしまった。
 俺が思っていた以上に、ハイブリッジ家というのは有望視されているらしい。

 だが、さすがに王都騎士団からハイブリッジ家に何人も引き抜くわけにはいかない。
 そのため、急遽希望者を集めて模擬試合をすることになったのだ。

「タカシちゃん、まさかそれで戦うつもりなの?」

 イリーナは呆れた様子を見せる。
 騎士たちが普段使う武器は、当然金属製のものだ。
 訓練であれば、木剣を使用する。
 それに対して、俺が使用する武器は……

「ああ。当然だろ? この俺が一般騎士や見習い騎士を相手に、ガチの武器を使うはずがないじゃないか」

 俺のベスト装備は『紅剣アヴァロン』だ。
 ラスターレイン伯爵領のアヴァロン迷宮で手に入れた『錆びた剣』を、一流鍛冶師のミティや魔導技師のジェイネフェリアに鍛えてもらった一品だ。

 魔力を通すと刀身に炎を纏い、『領域』を展開する特殊能力を持っている。
 もちろん切れ味や剛性も高いため、並の鎧程度なら容易く切り裂くことが可能だ。
 だが、そんな高威力の武器を対人戦で使うわけにはいかない。

 次点の武器として『紅剣ドレッドルート』『紅剣クリムウェル』『紅剣クリム』などもある。
 『紅剣アヴァロン』に比べればマシとはいえ、いずれも金属製のためやはり威力が過剰だ。
 それならばとアイテムルームから取り出したのが、俺が今手にしている木製の棒だ。
 木の枝と言ってもいい。

「でも、大丈夫なの? いくら何でも、それは舐めすぎじゃない?」

「そうですよ。いくらハイブリッジ男爵とはいえ……」

 イリーナとレティシアが心配そうにする。

「いや、むしろこれでちょうどいいくらいだと思うぞ?」

 俺はニヤリと笑う。

「へぇ……。じゃあ、見せてもらおうかな」

「ああ、望むところだ」

 イリーナの挑発的な視線に、俺も不敵な笑みを返す。
 俺やナオミ、それに他の少女騎士たちは、訓練場の中央に集まる。
 審判役を買って出たイリーナが、少女騎士たちを見回して口を開く。

「ルールは簡単。タカシちゃんと1対1で勝負して、自分の実力をアピールすること。金属製の剣や魔法の使用は禁止。あくまで木剣のみで戦うこと。いいね?」

「「「はいっ!!」」」

 ナオミを含めた少女騎士たちが元気よく返事をする。

「タカシちゃんもそれでいいよね?」

「構わない……と言いたいところだが……」

「あれ? やっぱりこの条件はキツすぎるのかな? なら、もう少しまともな木剣を使いなよ。持ってないなら、騎士団の訓練用のが……」

「いや、その必要はない」

「へ?」

 イリーナがきょとんとする。

「むしろ、条件が緩すぎるという話だ。金属製の剣や魔法も使っていいことにしよう。俺の防御力なら致命傷はまず負わないし、治療魔法も使えるからな」

「タカシちゃんが良くても、みんなの方は怖がると思うけど……」

「いやいや、金属製の剣や魔法を使っていいのは、もちろんそっちだけの話さ。俺はこの木剣で戦ってやる」

 俺はそう言って、木剣を悠然と構える。
 まぁ、正確に言えばただの木の枝だが。

「なっ! いくらハイブリッジ様とはいえ、私たちを舐めすぎですよっ!」

「武器の差があれば、私たちだってきっと勝てます!」

「…………」

 少女騎士たちが騒ぎ出す。
 そんな中、ナオミだけは静かにこちらへ視線を向けていた。
 彼女は、俺の実力をある程度深く知っているからな。
 武器や魔法の差があったところで、勝利確実とまでは言えないと理解しているらしい。

「みんな、落ち着いて。その悔しさは、試合でぶつけたらいいよ」

 イリーナが苦笑しながら、少女騎士たちを宥める。
 さすがに大隊長だけあって、部下の扱い方が上手いな。

「わかりました! なら、まずは私がやります!」

 1人の少女騎士が進み出る。
 確か、名前はルシエラだったか。
 気が強そうな娘だ。
 一番手に名乗りを上げるのは、評価できるが……。

「なに勘違いしているんだ?」

「え?」

「全員で掛かってこい。全員まとめて相手してやる」

「な、なんですって!?」

 俺の言葉を聞いた瞬間、少女騎士たちの表情が変わった。

「ふぅん……。面白いじゃん」

「確かに、これは試すチャンスかもしれません」

「ハイブリッジ様に、どこまで近づけるか……」

 少女騎士たちが、闘志を燃やし始める。

「ちょ、ちょっと待ったーっ!! さすがにそれはダメだよっ!!」

 慌てるイリーナ。

「なんだ? 何か問題でもあるのか? 俺は別に構わないけどな」

「いやいや、大ありだから。もしタカシちゃんが負けたら、みんながハイブリッジ家に大移籍する流れになるかもしれないんだよ? そんなことになったら、私の立場が……。ああっ、もうっ!!」

 頭を掻きむしりながら叫ぶイリーナ。
 どうやら、本気で焦っているようだ。

「心配するな。俺が負けるはずがない。これはあくまでテストで、筋がいい者を見極めるだけのことだ」

 俺の見立てでは、ナオミが優秀だ。
 何と言っても、加護(微)を達成しているのが大きい。
 加護(微)だけなら他にも若干名が達成しているのだが、ナオミの忠義度はその中でも最も高い。
 そのため、加護(小)に向けて普段から優先的に指導を行っている。
 また、本人の気質もとてもがんばり屋さんなので、メキメキと実力を向上させているのだ。

「でも、万が一があるでしょ!」

 イリーナは必死だ。

「そんなに俺が信じられないか?」

「うぐ……。だ、だってさ……んぷっ!?」

 俺はイリーナの唇に自分の唇を押し当てた。

「んちゅ……れろ……ちゅぱ……はぁ……はぁ……」

 イリーナは抵抗しなかった。
 むしろ積極的に舌を絡めてくる。

「ぷはっ! わ、わかったよ。そこまで言うなら好きにしていい。ただし、危なくなったらすぐに止めさせるからね」

「ああ。それでいい」

 イリーナの説得を終えた俺は、少女騎士たちに向き直る。

「お待たせ。それじゃあ、始めようか」

「「「…………」」」

 彼女たちは、何やら赤い顔をしている。
 いったいどうしたのだろうか?

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