【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

743話 変態五人衆

 俺たちは地下の闇ギルドに潜入している。
 高レートギャンブルの現場を押さえたので、もういつ実力行使でもいい。
 だが、やはり頭目のロッシュを引きずり出しておきたい。

 俺、ネスター、シェリー、ナオミはそれぞれギャンブルで荒稼ぎした。
 ミティの稼ぎ具合次第では、そろそろ頭目のロッシュが動き出すだろう。

「レイズ」

「……コール」

「ドロップだ……」

 ミティは、ポーカーに参加していた。
 相手は数人。
 いずれも『闇蛇団』の構成員ではなさそうか。

 ルーレット、ブラックジャック、スロットあたりは胴元との勝負。
 一方、ポーカーは他の参加者たちとの勝負となる。
 ミティが勝っても『闇蛇団』に直接的な打撃を与えることはできない。
 だが、これにはこれで意味がある。

「再びレイズします」

「くっ。ドロップする……」

「……俺もだ」

「そうですか。では私の勝ちですね。ワンペアです!」

 ミティが力強く勝利を宣言した。
 ワンペアは、ブタ(役なし)の次に弱いカードの組み合わせである。

「はあぁっ!? ワンペアかよ!」

「くそっ! 勝負しておけばよかった……」

 そんなことを呟く男の手からこぼれたカードには、3枚の同じカードがあった。
 もし勝負していたら、彼の役はスリーカード。
 ミティのワンペアよりも強い。

「舐めやがって!」

「ずるいぞ、嬢ちゃん!」

 男たちがミティに文句を言う。
 別に、ミティはルール違反をしていないのだが……。

「ふん。骨なしチキンのザコどもが。恨むなら、自分の肝っ玉の小ささを恨みなさい」

 ミティはそう言って、舌を出した。

(あはははははは。ミティ、ナイスな演技だよ)

 俺は笑いを堪える。
 普段は温厚な彼女だが、こうして相手を挑発したり威圧したりする能力もある。

「てめぇ、ぶっ殺すぞ!」

「調子に乗りすぎなんだよ!」

 一部の男たちがミティに詰め寄るが……。

「ふんっ!」

「「ぐっはあああぁ!」」

 ミティの強烈なパンチにより、壁際まで吹き飛んでいった。

「他に私に文句がある人は? 死にたいなら掛かってきなさい」

「「くっ……」」

 残りの参加者たちもミティに思うところはあるようだが、向かってはいかなかった。
 賢明な判断だ。
 あの超パワーを見てからも挑むような奴がいれば、ただのアホである。

「ちっ! やってられっか!!」

「こんなムチャクチャな賭け方をする奴と、これ以上ゲームなんかできるか!」

「二度と来ねぇよ!!」

 男たちは口々に悪態をつきながら、去っていった。
 そう。
 『闇蛇団』の構成員ではない一般の客が、俺たちによって金をむしり取られたらどうなるか。
 こうして、資金難により撤退するわけだ。

 普通の負け方なら、日を置いてまた来るだろう。
 しかし、今回は負け方が負け方だ。

 ミティは強気で、弱い役のときにもレイズしまくっていたのだろう。
 強心臓でパワフルな彼女らしい戦い方だ。
 十分にうまい人を相手に長期で戦うにはあまり適していない戦い方だが、資金にやや心もとない者や、ノミの心臓を持つ者を相手にする場合にはとても有効な戦法である。

 何より、この戦法によって負けた相手は、大きくプライドを傷つけられる。
 なにせ、そのまま勝負していれば自分が勝っていたのだ。
 ミティの強気のレイズにビビって降りたのは、他ならない自分自身なのだから。

「さあ、次のカモは誰ですか!」

 ミティがテーブルに手をついて、大きな声を上げる。
 だが、誰も名乗りを上げない。
 そこに、1人の職員が近づいていく。

「お客様。ご提案がございます」

「何ですか?」

「お客様は、普通の勝負ではご満足いただけない様子。そこで、特別な席と特別な相手をご用意いたしました。どうぞこちらへ……」

「はぁ。まあいいでしょう」

 ミティが職員に付いていく。
 向かった先は、賭博場の中央だった。
 ちょっとしたステージのように高くなっており、豪華なテーブルとイスが設置されている。

「これは……」

 ミティが立ち止まり、ステージを見回している。

「特別舞台での特別なお遊びです。通常のレートとは異なりますが……」

「ふふふ。いいじゃないですか! 受けましょう!」

 ミティが一歩を踏み出したときだった。

「!? なっ……。うわあぁっ!?」

 ミティが悲鳴を上げ、踏み出し掛けた足を慌てて引っ込める。
 彼女の足元には、いつの間にか男が寝そべっていたのだ。

「ああ……。これは残念。文字通り、あと一歩のところで踏んでいただけませんでしたか」

 男が残念そうな表情をしながら、体を起こす。

「ど、どういうことです?」

 ミティが冷や汗をかきながら尋ねる。

「どういうことも何も。私はあなたのような幼女に踏まれることを趣味にしていましてねぇ。新たな幼女を入荷して楽しもうとしていた矢先、賭博場で暴れている者がいると報告を受けたのですよ」

「…………」

「いやはや、仕事なんて面倒くさいと思っていましたが、まさか暴れている者も幼女だったとは! これは楽しそうです。はっはっは!」

 男は愉快そうに笑った。

「つまり……あなたは変態ということですか」

 ミティが冷たい目でそう言う。
 女性に踏まれることを好むこの男は、まさしく変態だろう。
 しかも、幼女限定とか。
 まぁ、俺も踏まれることは結構好きだから共感するところはあるが……。

「変態? ありがとうございます! 我々の業界では褒め言葉です。お礼に、他に4人の変態も紹介して差し上げましょう」

 彼がようやく起き上がり、手をパンッと叩く。
 すると、どこからともなく4人の男たちが現れた。

「へへへ。俺は生粋の幼女愛好家! 好きな幼女は7歳だ!」

「僕も幼女好きだけど、実物には興味ないよ。魔道具で撮った写真を眺めるのが日課さ!」

「甘い奴らだ。俺は泣き叫んでる幼女が好きなんだぜぃ!」

「やれやれ。素人どもが……。傷つき泣いている幼女を慰めるときこそ、至高の時間だというのに……」

 4人が口々に自分の性癖を語る。
 全員、どう見てもヤバい人たちである。

「……ふっ。さすがは闇カジノ。控えている人材も粒ぞろいということですか……」

 ミティが白目をむきながら呟く。

(無理するなミティ、と言いたいところだが……)

 彼らをギャンブルで打ち負かせば、いよいよ頭目のロッシュを引きずりだせるはず。
 ミティに変態の相手をさせるのは少し不安だが、とりあえずは様子を見ることにしよう。

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