【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
720話 合流と後処理
真っ先に駆け寄ってきたのは、ミティだった。
彼女は俺の胸に飛び込んできた。
「おおっと、ミティ。心配かけたな。俺は無事だよ」
俺はそう答える。
「無事なら無事だって言ってほしかったけどねー」
「ほんとにね。通信の魔道具で連絡するって話だったのに、いつまで経っても来ないし」
「ふふん。それに、こっちからかけようと思ったら、何度やっても繋がらないし。何かあったのかと思ってたわよ」
アイリス、モニカ、ユナが文句を言いながらも、安堵の笑みを浮かべている。
「すまん。魔道具が壊れていたみたいでな……」
「そ、それは困りものですね。その魔道具はジェイネフェリアさんが作ったものでしたね?」
「ラーグの街に帰ったら、一言注意しておかねばなりません」
ニムとサリエがそう言う。
温厚で優しい女性ばかりのミリオンズだが、その中で少しだけ厳しいのがこの2人だ。
依頼した仕事がきちんとなされていないとなれば、怒るのは当然だろう。
「あれ? タカシお兄ちゃん、これはちゃんと動くよ?」
「ピピッ! こちらの魔道具は正常に動作していると報告します」
マリアとティーナがそんなことを言い出す。
「え? だが、このボタンを押しても反応しないぞ? ……あれ? 今は動く……」
「ピピッ! まずは魔力を通しながらこちらの起動ボタンを長押しする必要があったと通達します」
「な、なるほど。そういうことか」
俺は魔道具を起動しないまま、あれこれ操作しようとしていた。
日本で言えば、電源の入っていないパソコンやゲーム機の操作ボタンを必死に押していたようなものか。
情けない話だ。
穴があったら入りたい……。
「だ、だいじょうぶですわよ。わたくしも、魔道具のことはさっぱりわかりませんわ」
「うむ。拙者もでござる。どうも、ああいう類のものは受け付けなくてな……」
リーゼロッテと蓮華がフォローしてくれる。
気持ちはありがたいのだが、この2人と同レベルか……。
いや、バカにする気はないのだが、こういうものに特に疎い彼女たちと一緒というのは、ちょっと凹んでしまう。
「タカシは強いからいいじゃないっ! 私は強いタカシの味方だよ!」
ドラちゃんがそう言う。
うーむ。
それもそうか。
やはり冒険者パーティのリーダーたる者、求められているのは戦闘能力だな。
「そうだろそうだろ。やっぱり、リーダーには強さが求められるよな」
「うんっ! 私も強くてカッコイイタカシが好きっ!」
「よしよし」
俺はドラちゃんを撫でる。
「…………いやしかし、これは本当に凄まじいな……」
「ええ。私たちの出る幕は一切ないようね……」
俺の配下の奴隷である、ネスターとシェリーがそう呟く。
2人は警備兵兼世話役として、キリヤ、ヴィルナ、オリビア、レイン、雪月花あたりとともに、この王都まで来ている。
そして今回、本人たちの希望により盗賊団の掃討作戦に参加することになった。
何やら盗賊団に思うところがあるらしいが……。
彼らの出番を奪うことになってしまったな。
「すまんすまん。せめて、捕縛作業を手伝ってやってくれ。それに、別の区域には残党がいるはずだ」
「了解だ」
「ちょっとでも貢献しないとね」
ネスターとシェリーはそう言って、賊の捕縛作業に取り掛かった。
彼らの忠義度は30を超えており、加護(微)の条件は満たしている。
だが、加護(小)には届いていない。
彼らと同時期に購入した奴隷は、全部で6人。
リン、ハンナ、ニルス、クリスティには加護(小)を付与済み。
残るはネスターとシェリーだけだ。
この2人の忠義度がやや低めにとどまっている理由として、やはり年齢のことが関係しているだろう。
俺よりも年上の者は、忠義度が稼ぎづらいのだ。
その上、ネスターとシェリーは恋仲なので、俺と男女の仲を深めることもできない。
彼らはちょっとした肺の病を患っていたが、失明していたリンほどの重病ではない。
どうしても、地道に稼いでいくしかないのだ。
(だが、たった今、俺の戦闘能力を見せつけたのは効果があったようだ。あと一歩だな……)
彼らの忠義度を稼げそうなちょっとしたイベントがあれば、加護(小)を付与できそうだ。
盗賊団に思うところがあるようだし、そこからアプローチするのがいいだろうか?
「ハイブリッジ様! こちらの捕縛作業は完了しました!」
「ん? ああ、ご苦労」
元気に報告してきた騎士見習いの少女に、俺はねぎらいの言葉をかける。
彼女の名前はナオミ。
俺のことを心から慕ってくれている少女だ。
彼女は真面目で正義感の強い性格をしている。
つい数時間前に人質として黒狼団に捕らわれていたところを救出したばかりなのだが、もう切り替えて仕事に励んでいる。
荒くれ者の盗賊団に攫われるなんて、普通ならトラウマになってもおかしくない状況だったと思うのだが……。
なかなかに精神力が強い。
「次は残党狩りを行おうと思うのですが、いかがでしょうか?」
「許可しよう。ただし、無理はするなよ」
「はいっ!」
彼女は敬礼して、次の現場へと駆けていく。
(こっちも、忠義度40まであと一歩なんだよなぁ……)
出会ってからの期間という点では、ネスターやシェリーとは比べ物にならないほどに短い。
だが、ネスターやシェリーからの忠義度が低いわけでは決してない。
むしろ、ナオミの忠義度の上がり方が早すぎるのだ。
(まあ、上がりやすい条件が揃っているからなぁ……)
まず、俺よりも目下の立場であること。
これは、貴族家当主である俺と騎士見習いであるナオミとでは、身分的にどちらが上なのかは明白だからだ。
年齢も、俺より一回り下だしな。
次に、女性であり、配偶者や彼氏がいないこと。
忠義度の中には恋愛感情も内包されている。
男性や既婚女性よりも、未婚の女性の方が俺に対する忠義度は上がりやすい。
もちろん、俺の顔や雰囲気が生理的に無理である場合は、女性であっても忠義度は上がってくれないが。
実際、ナオミと同世代の少女騎士の中でも、忠義度の上がり方に差はある。
その中でも、ナオミはトップクラスによく上がってくれている。
どうやら、俺の顔や雰囲気が嫌いではないらしい。
(そして最後に忘れてはならないのが、何かしらのイベントだよな)
これはゲームではないのでイベントという呼び方は少しおかしいかもしれないが、敢えてこう呼んでおく。
例えば、命を救われるとか、窮地を救ってもらうとかだ。
そういったシチュエーションを通せば、忠義度が跳ね上がる。
ナオミの場合は、黒狼団によって誘拐されたところを俺が助けてあげたのだ。
(ネスターとシェリーのあと一押しは、何かを探す必要があるが……。ナオミの場合は……。ぐふふ……)
俺は遠くない未来に思いを馳せ、ニヤリとした笑みを浮かべるのだった。
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