【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

717話 目が!! 見えないっ!!!

 困った。
 通信の魔道具の使い方がわからない。
 ダメ元で賊にも聞いてみたが、知っている者はいないようだ。

 それならばと、せめて主だった賊を撃破しておくことにした。
 手始めに、”白狼団”の頭領ホプテンスを蹴り飛ばした。
 彼はガレキの中で倒れ込んでいる。

「頭領というからには、頑丈なのだろうなぁ。一応、追撃しておくか。【百本桜】」

 100個のファイアーボールが宙に展開される。
 そしてそれらは、ホプテンスへと向かっていった。

 ドドドドド!!
 連続する着弾音。
 なかなか迫力がある。
 賊の頭領相手なら、これぐらいがちょうどいいだろう。
 俺はそう思ったが……。

「…………」

 なんと、ホプテンスは起き上がってきた。
 服はそれなりにボロボロだが、身体に大きなダメージは見当たらない。
 彼が口を開く。

「さすがだ。想像の遥か上を行っている」

「おかしいな……」

 俺の先ほどの攻撃は、かなりの威力だったはず。
 もちろん殺す気はなかったが、戦闘不能に追い込むつもりで攻撃した。
 まさか、これほどピンピンされるとは思わなかった。

「……”紅剣”相手にたった10個じゃ、心もとないな……」

 彼がそう呟くと同時に、彼の右腕から魔石が排出された。
 それは魔力を完全に失っているようだ。
 ボロボロに崩れ、風に流されてどこかへ飛んでいく。

 まさか、あの魔石にダメージを転嫁したのか?
 そのような技術は聞いたことがないが、工夫次第ではできなくもないのだろうか……。
 俺が少し考え込んでいるときだった。

「うわぁ! ……どうっ!!!」

 巨漢がこちらにふっ飛ばされてきた。

「はあ、はあ……。参った……。何という強さ……」

 彼は肩で息をしながら、周囲の様子を確認している。

「っ!? まさかお前は、”紅剣”のタカシか!?」

「ん? ああ、いかにもそうだ」

 俺もずいぶんと有名になったものだな。
 賊の間で知られていても、さほど嬉しくはないが。

「……何という不運……! 前方に”紅剣”、後方に”聖騎士”。くそっ、ここまでなのか……?」

 巨漢がそう呟く。
 なるほど。
 彼をここまでふっ飛ばしたのは、シュタインだったか。
 見れば、彼もすぐそこまで来ている。

「……そうでもない。お前にはまだ死相が出ていない」

「ふふ。”白狼団”のホプテンスか。普段は敵だが、今は冗談でもありがたい」

 巨漢が笑みを浮かべる。
 この男にも見覚えがあるな。
 重要な標的の1人だ。
 白狼団とはまた別の盗賊団の頭領である。
 シュタインと協力して、2人とも捕縛するか。

「……あぁ~!!」

 巨漢が声を上げる。
 それと同時に、闘気が膨れ上がった。

「ずいぶんと痛めつけられたが……。さて、ここからは反撃の時間だ!」

 巨漢の身体に変化が起きる。
 筋肉量がさらに増し、体格も大きく変化した。
 特殊体質……、あるいは特殊な技か?
 この世界には、まだまだ俺の知らない武技があるんだなぁ。

「うはっ! 見ろ! あいつがあの技を出すのは久々だぞ! こりゃ面白え!」

「ヤバいっすよ! あいつらみんな殺されます! アックスさん、俺たちは逃げましょうよ!!」

 物陰に隠れている男たちがそんなことを言っている。
 そういえば、彼らもいたか。
 俺の主な標的は、占い師のホプテンス、巨漢、そして隠れているアックスだな。
 もちろん他にも捕らえるべき賊はいるが、そこはベアトリクスやミティたちが頑張ってくれるだろう。
 俺は目の前の敵に集中だ。

「ずいぶんと痛めつけてくれたな。今までのオレとは思わないことだ!!」

 巨漢がシュタインに殴りかかる。
 なかなかの闘気量、そして速度だ。

「ぐっ!」

 シュタインがたまらず防戦一方になる。
 俺も加勢しようか?
 そう思ったときだった。

 グサッ!
 シュタインの剣が巨漢の足を貫いた。
 大ぶりになった攻撃のスキを逃さない。
 さすがだ。

「ぐわぁっ! 痛え!!」

 巨漢が地面に倒れこむ。
 シュタインは追撃を加えようと、彼に近づいていく。
 あっちはシュタインに任せておけばいいだろう。

「さあ、俺の相手はお前だな」

「……【降魔の術】」

 ざわざわ。
 ホプテンスの姿が異形へと変わる。

 降魔……。
 悪魔と契約でもしたのか?
 この世界に来て、悪魔と会ったことはないが……。
 魔法、魔物、幽霊、ドラゴンなどの存在は確認しているし、今さら悪魔の存在くらいで驚きはしないが。

「おいおい……。おっかないじゃないか……」

 まるで悪魔のような形相だ。
 驚きはしなくとも、やはり怖いものは怖い。
 俺は思わず一歩後ずさってしまった。

「くらえっ!」

 ズババッ!
 ズバババッ!!
 ホプテンスが俺に攻撃を繰り出してくる。

 やはり、大幅にパワーアップしているな。
 まあ、俺に触れられるほどではないが。

 すっ。
 俺は彼の目の前に、2本の指を持ってくる。

「【ライト】」

 ピカッ!!
 眩しい光が発生する。
 これは最近取得した最初級の光魔法だ。
 初級魔法でも、術者の力量によってその威力は上下する。

「おわあああぁっ!! 目が!! 見えないっ!!!」

 ホプテンスはまともに喰らい、目を手で覆って苦しんでいる。
 俺のMPや魔力のステータスは高い。
 初級の光魔法だろうと、俺にかかれば必殺級の目眩ましとなる。
 さ、仕上げといこうか。

「【ストーンショット】……【ストーンショット】……」

 俺は絶え間なく石弾を発射する。
 また【百本桜】でも良かったのだが、さっきは通じなかったからな。
 少し攻め方を変えてみた。

「うっ!!!」

 ホプテンスが苦しんでいる。

「ふうむ。いったいどういうタネがあるのか知らないが……。実体はあるなぁ。ネルエラ陛下のような特殊な纏装術ではなさそうだ」

 ネルエラ陛下の場合は、斬撃と打撃を全て無効化する。
 本人がそう断言していた。

「頭領ーー!!!」

「マズイぞ! ダメージの限界が……」

「頭領が死んじまう!!」

 取り巻きの賊たちが叫んでいる。
 ホプテンスもタフだが、限界があるようだな。
 そろそろ終わらせるか。

「終わりだ」

「ぐっ!!」

 ホプテンスが抵抗の素振りを見せるが、ダメージは大きい。
 無駄なことだ。

「……ん?」

 シャーン、シャーン。
 ドンガ、ドンガ。
 パフパフー。

 どこからともなく、音楽が聞こえてくる。
 こんなスラムで、それも戦闘中に音楽など聞こえてくるはずがないのだが……。

「へいへい! オレの演奏を聞いていけよ! ”紅剣”のタカシさんよぉ!!」

 そう叫んだのは、ずっと物陰に潜んでいたアックスだ。
 彼は仲間とともに楽器を持ち、演奏している。

 ポロロン。
 ブーパー、ブーパー。
 チャカポコ、チャカポコー。

 聞いたことのない曲だ。
 いや、どこかで聞いたような気もするが……。

「くらいやがれっ! ”シャーン”!!」

 彼がシンバルを叩く。
 それと同時に……。

「うっ! なんだぁ?」

 俺の右腕に斬撃が入った。
 遠隔攻撃?
 そんな気配はなかったが……。

 俺は警戒度を高める。
 これ以上得体の知れない攻撃を受ける前に、さっさと倒しておこうか。
 だが、俺がそう判断した直後、すかさず追撃が入った。

「”ドーン”!!!」

 アックスが太鼓を叩く。
 ドゴオオォーン!!!
 俺の腹のあたりで爆発が起きる。
 その衝撃で、俺は倒れ込んでしまったのだった。

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