【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

706話 追跡

 俺たちミリオンズは、金貨を盗み出した賊を追いかけている。
 誓約の五騎士のイリーナやゼフと共に、王都の東門に到達した。

「とにかく急がないとね。行っくよぉ! 【クロック・アップ】!!」

 イリーナがそう言うと同時に、彼女の体が淡く光り輝く。

「ゼフちゃん、タカシちゃん! ボーっとしてたら置いていくからね! はぁああ!!」

 彼女は気合の声を発しながら、目にも留まらぬ速度で駆け出す。

「…………」

 そのあとを無言のまま、ゼフが続く。
 彼は彼で、何かの魔法を発動している様子だ。
 黒色のマントから不思議な気配を感じる。

「俺たちも負けてられん。みんな、この魔法の絨毯に乗ってくれ」

 俺の指示に従い、ミリオンズの面々が素早く絨毯に乗る。

「いくぞ、マリア!」

「うん! 任せて! 息を合わせるよっ!!」

 俺はマリアとともに、重力魔法の詠唱を始める。

「「我らの願いに応えよ! 空の理を示せ! 【ワイドエリア・レビテーション】!!」」

 2人で同時に発動した重力魔法により、絨毯周りの重力が一気に軽減される。
 初級重力魔法のレビテーションは、発動者本人や、特定の対象物のみの重力を軽減する魔法だ。
 中級重力魔法のエリアレビテーションは、発動者の周囲までその効力が及ぶ。

 だが、現時点での俺やマリアでは、それぞれの単独魔法としてはミリオンズの大人員を運ぶことができない。
 そのため、2人の合同魔法として新たな重力魔法を開発したのである。
 ジェイネフェリアが製作した魔法の絨毯を補助として使用することにより、制御も安定している。

「よし、みんな乗ったな? では次だ。ミティ、蓮華、頼む」

「はいっ! お任せください!」

「準備万端でござるよ!」

 俺の問いに、ミティと蓮華が元気よく答える。
 そして、それぞれが魔法の詠唱を始める。

「「【エアバースト】!!!」」」 

 2人の風魔法が後方に発射される。
 俺たちを乗せた魔法の絨毯は、それにより勢いよく前進を始める。
 そして、先行していたイリーナとゼフに追いついた。
 彼女たちがこちらを見る。

「へえ! すごいじゃん!」

「……陛下が一目置かれるだけのことはある……」

 2人が感心しながらそう言う。
 少しはいいところを見せられたか?
 まあ、こんなのはただの移動手段だけどな。
 本来の目的である、賊の捕縛と金貨の奪還を頑張らないと……。

「それで、賊が逃げている方角はこちらで合っているのか?」

 俺は並走するイリーナとゼフにそう問う。

「もち! アタシが方向を間違うはずないじゃん! この街道を真っ直ぐ行けば、いずれ追いつくよ!」

「……脇道に逃げられたら少し厄介だが……。それならそれで、後詰めとともに捜索すればいい……」

「なるほどな」

 王宮から10000万枚もの金貨を盗み出した賊は、どのように逃走すると考えられるか。
 大きく考えて、3パターンあるように思う。

 1つは、今回のように主要な街道を使って一直線に逃げる方法。
 最もシンプルかつ確実な方法である。
 とにかく遠くへ逃げれば、それだけ追手に追いつかれるリスクが減るし、金貨を使った際に足がつく危険性も減る。
 場合によっては国外へ逃げられればベストだろう。

 次に、街道から脇道に逸れ、潜伏して追跡を振り切る方法。
 追手が少数精鋭の武闘派の場合は、こちらの方が有効だろう。
 一直線に逃げて追いつかれて戦闘になるよりも、隠れることで戦闘を回避し、時間を稼ぐことができるからだ。
 しかし、後詰めで捜索人員が拡充されると苦しい。
 いずれは見つかってしまうだろう。

 そして最後に、灯台下暗しという言葉通り、身近に隠れ潜み、追跡者をやり過ごすというやり方だ。
 今回で言えば、そもそも逃げずに王都に潜伏するといった感じだな。

「イリーナ、ゼフ、ちょっと聞きたいんだが……」

「何?」

「ネルエラ陛下が”黒狼団”の逃走経路を把握していたのって、なぜなんだ?」

 俺はそう疑問の言葉を口にした。

「陛下は、特別な力があるからね。他者の心の声が聞こえるんだったかな?」

「……その通り。耳を澄ませば、王都近郊までであれば、かなりの広範囲の声を聞くことができるらしい……」

「へぇ、そんな力が……」

 俺は感心する。
 さすがは一国の王だ。
 聞いたこともない力を持っている。

 俺との戦闘時にも、強力な力をいくつも見せつけてきた。
 高威力の雷魔法。
 打撃や斬撃を無効化する特殊な体。
 俺に押し勝つ身体能力。
 火魔法で消し炭にされてもあっさりと復活する回復能力。
 それらに加えて、広範囲の声とやらを聞くことができるとはな。
 彼とは絶対に敵対しないようにしよう。

「よし! このまま一直線だな? では、俺たちミリオンズがさらに先行して、賊を捕らえてきてやるよ!」

「えっ? まだスピードを出せるの?」

「……消耗して、賊を拿捕する際に手間取っては元も子もないぞ……」

 イリーナとゼフが、心配そうな声を上げる。

「問題ないさ。なあ?」

「はい! 私は風魔法の出力をまだまだ上げられますよ!」

「拙者も同じくでござる! 魔力切れの心配は無用!!」

 俺がミティと蓮華に視線を送ると、2人とも元気よく答えてくれた。

「そっか! じゃあ、お願いね! アタシもすぐに追いつくからさ」

「……気をつけるようにな……」

 イリーナとゼフが、俺らに激励の言葉を贈ってくれた。

「ああ。では行くぞ!」

 俺はミリオンズの面々に声をかける。
 ミティと蓮華が風魔法を発動する。
 そして、俺たちを乗せた魔法の絨毯はさらに加速していくのであった。

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