【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

682話 鉄心ニム

「さあ、料理コンテスト決勝の料理が出揃いました! 各ブロックを勝ち抜いた猛者たちが、素晴らしい料理を披露しております! 優勝は誰の手に渡るのか!?」

 実況席のカエデが熱の入った口調でそう語りかける。
 決勝戦に残ったのは4チーム。

 まずはAブロック。
 ボフォイの街から遠征に来た『まんぷく亭』の面々。
 餅料理を得意とする。

 次にBブロック。
 王都の新人料理人ゼラ。
 麺料理を得意とする。

 そしてCブロック。
 美食家冒険者パーティ『トリックルバード』。
 捕獲したコカトリスを連れてきて、新鮮な卵料理を披露した。

 最後にDブロック。
 ハイブリッジ騎士爵第三夫人にして”雷脚”の二つ名を持つBランク冒険者、モニカ。
 予選では、素早い動きでたこ焼きを作り上げた。

「さあ、いよいよ優勝者の発表です! まんぷく亭、ゼラ、トリックルバード、モニカ! 誰が優勝してもおかしくありません!」

 実況のカエデがそう言うと、観客たちから大きな歓声が上がる。
 そして……。
 ドドン!!!
 審査員たちが一斉に紙を差し出す。
 その紙には、それぞれが誰を支持するかが記載されている。

「まんぷく亭、ゼラ、ゼラ、トリックルバード、モニカ……」

 カエデが読み上げていく。

「まんぷく亭、モニカ、ゼラ、モニカ、モニカ……」

 カエデが読み上げる度に、会場内がどよめきに包まれる。

「集計が終わりました! 優勝者は……モニカ選手です!」

「「「わああああぁっ!!!」」」

 カエデが大きな声で優勝者を告げると、会場中から割れんばかりの拍手が巻き起こった。

「おめでとうございます! モニカ選手! 素晴らしい料理の数々、感動しました!!」

 彼女が笑顔で祝福の言葉を送る。

「ありがとうございまーす!!」

 モニカが満面の笑みで応じる。

「今回の優勝の決め手はなんでしょうか?」

「そうですね。スピード感を重視しました。後は……義妹の応援や、夫のアドバイスのおかげもありますね」

「スピード感! 確かに、素晴らしい調理速度でした。あれはどういった原理なのでしょうか?」

「纏装術といって、魔法の力を自身に纏う技術ですね。高ランク冒険者なら使える人も多いですよ。ただ、疲れるのが難点ですが……」

 モニカが苦笑いしながらそう話す。

「な、なるほど……。魔法の力ですか……。それはまた、興味深い話ですね。……ところで、義妹と仰いましたが」

「はい。あそこで応援してくれていますよ。……おーい! ニムちゃーん!」

 モニカが手を振りながら、観客席にいるニムに呼びかけた。
 ニムはそれに応えて、手を振り返す。

「素晴らしい姉妹愛ですね! モニカ選手の引き続きのご活躍に期待しましょう! 次に、準優勝者のゼラ選手にインタビューを……。……おや? 何か騒がしいですね……」

 カエデが不思議そうな表情でそう呟く。
 すると、先ほどまで調理が行われていた会場から、怒号が聞こえてきた。

「おい! 何やってんだ!!」

「鎖が引きちぎられて……。だ、だめだ!」

「逃げるしかないぞ!!」

「だが、こんな場所でコカトリスが暴れたら……」

 騒いでいるのは4位に入賞した冒険者パーティ『トリックルバード』のメンバーたちだ。
 新鮮な卵を用意するために連れてきていたコカトリス。
 それが暴走して、鎖を引き千切ってしまったのだ。

「こ、これはいけません! 皆さん、逃げてください!」

 カエデが慌てて指示を出す。
 しかし、すでに遅い。

「コアアァッ!!」

 雄叫びを上げながら、コカトリスが『石化の邪眼』を発動させる。

「え!?」

「なんだ!?」

「きゃあ!? 体が動かないわ!」

 近くにいた観客たちが続々と倒れていく。
 コカトリスの石化の邪眼を受けてしまったのだ。
 とはいえ、何も実際に石になるわけではない。
 肉眼では捉えられないほど小さな麻痺針がそれぞれの体に突き刺さり、動きを阻害しているだけにすぎない。
 時間経過、あるいは治療魔法などにより治すことはできる。

「た、大変です! コカトリスが観客の方々に……」

 カエデが焦りの声を上げる。
 今のところは麻痺しているだけなので、実質的な被害はないと言ってもいい。
 だが、このままだとケガ人が出るのも時間の問題である。

「ちっ! トリックルバードの奴らめ……。雷脚、すまないが力を貸してくれないか?」

 ベネッタがモニカにそう声を掛ける。
 コカトリスは上級の魔物だ。
 そこらの冒険者では歯が立たない。
 Bランクのモニカに声を掛けるのは正解だろう。

「別にいいですけど、ちょっと疲れてて……」

「そんなことを言っている場合か!? ……ああっ! 見ろ、お前の義妹が襲われて……」

 ベネッタの視線の先には、コカトリスに襲われそうになっているニムの姿があった。

「くそ! 間に合ってくれ!」

 彼女はコカトリスに元に急行する。
 が、間に合わない。

「コケエエエエェ!!!」

 コカトリスが叫ぶ。
 ガキン!!!
 コカトリスのクチバシがニムを貫いた。
 ……ように思えた。

「や、やはりその程度ですか。わたしの”絶対無敵装甲”を破るには、力不足ですね」

 ニムがそう言う。
 彼女は強固な岩の鎧を纏っている。
 お得意の土魔法だ。

「コケエッ!?」

 コカトリスは自慢のクチバシが通用せず、戸惑いの声を上げた。

「こ、今度はこちらから行きます!」

 ニムが魔法の詠唱を始める。
 そして、コカトリスに向かって手のひらをかざした。

「50万カラット……」

 土魔法レベル5に達しているニムの得意技の出番だ。
 彼女の魔力が高まっていく。
 そして、彼女はそれを開放した。

「ダイアモンド・スピア!!」

「グギャアアッ!!」

 ニムの土魔法により地面から超硬度の槍が生成された。
 そのまま、コカトリスを串刺しにする。
 ちなみに技名はイメージなので、実際にダイアモンドが生成されたわけではない。

 だが、それでもコカトリスを貫くには十分過ぎる硬度だ。
 コカトリスはしばらくジタバタしていたが、やがて絶命した。
 ようやく近くにまで駆け寄ってきたベネッタは、唖然とした表情を浮かべる。

「す、すごいな……。コカトリスを瞬殺とは……。いったい君は何者なんだ……?」

「わ、わたしですか? モニカお姉ちゃんにも紹介してもらったように、わたしの名前はニムですけど」

「名前ではなく、君の素性を知りたいという意味なのだが。……いや待て。ニムだと?」

「な、なんですか?」

「君は、”鉄心”ニムか!!」

 ベネッタがようやくニムの正体に気がついた。

「サザリアナ王国南部における、冒険者ランクや特別表彰者関係の最年少記録をいくつも塗り替えたあの……。今のギルド貢献値は6900万ガルだったか……」

「え、えっと……。はい。多分そうだと思います」

「なんてことだ……。若くしてとんでもない強さを持っているとは聞いていたが、これほどとは……!」

 ベネッタが驚愕の声を上げる。
 彼女の目の前にいる少女は、紛れもなく天才中の天才であった。

「一時はどうなることかと思われましたが、モニカ選手の義妹であるニムさんによって、無事にコカトリスは討伐されました! 皆さん、安心してください!!」

 司会のカエデがそう叫ぶ。

「すげえぞ!」

「小さな女の子なのにあれほど強いなんて!!」

「”鉄心”ニムさんっていうらしいぜ!」

「かわいい~」

「いや、カッコよさの方が勝る!」

「サインもらおう!」

 観客たちが歓声を上げ、拍手を送る。
 その後は、カエデやベネッタにより治療魔法使いが手配され、麻痺させられていた者も無事に回復した。
 コカトリスの管理責任者であるトリックルバードには、もちろん多少のペナルティが課される。

「す、少しびっくりしましたが、無事に片付いてよかったです。モニカお姉ちゃん、改めて優勝おめでとう」

「ニムちゃんが応援してくれていたおかげだよ。最後もすごく頼りになったよ。ありがとうね」

 ニムとモニカが満足げな表情でそう呟く。
 こうして、料理コンテストは幕を閉じたのであった。

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