【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

660話 村に凱旋

「なんと!? ゴブリンだけではなく、オークまでいたのですか!?」

 俺たちがゴブリンやオークを倒したという報告を受けた村長が、驚きの声を上げた。

「ああ。ゴブリンは合計で数十体。オークが数体。そして、報告してくれていた通り、ゴブリンジェネラルも1体確認した」

「そ、それは……」

 村長の顔が青ざめる。
 そして、ガバっと頭を下げ、土下座の姿勢を取った。

「申し訳ありません! 不正確な情報をお伝えしてしまいました!」

「なに、仕方あるまい。ゴブリンが数匹いるだけでも、村にとっては危険だろう。ジェネラルまで目撃してしまっては、他に何がいるのか正確に把握するのは難しい」

 俺はそう慰める。
 ベアトリクスも同じ意見のようで、うんうんと首を縦に振っていた。
 彼女の場合は、そもそも村長からの情報を話半分程度にしか聞いていなかった節がある。
 別に民を侮っているわけではなく、王族として情報の取捨選択がうまいのだろう。

「あ、ありがとうございます……。お怪我がないようで何よりでした……。それで、討伐作戦の今後はどうされるのでしょうか?」

「ん?」

「王都にもラーグの街にも、今は誤って過小な脅威を報告してしまっている状態です。情報の訂正を急ぎ伝えますが、それほどの規模の集団が相手となりますと、果たして戦力が整いますかどうか……」

 村長は必死な形相だ。
 確かに、ゴブリン数十体に加えてオークやゴブリンジェネラルまでいる集団となると、そこらの冒険者では荷が重い。
 複数のCランクパーティが協力してやっとといったところか。
 あるいは、王都の騎士団に中隊規模以上の兵力を要請するか。
 どちらにせよ、すぐに対応はできない。

「何を言っている? もうことは済んだぞ」

「え?」

「ゴブリンジェネラル、オーク、ゴブリン。全て討伐したと言っている」

「はぁっ!?」

 村長が目を丸くする。

「そ、そんなバカな……。いくら”剣姫”ベアトリクス殿下と”紅剣”ハイブリッジ騎士爵様がご一緒とはいえ、わずかな手勢でそれだけの群れを倒せるなんて……」

「しかしな。討伐したのは事実なのだが」

「我も証言しよう。魔物の群れは殲滅した」

「…………」

 俺とベアトリクスの言葉を受け、村長は絶句する。
 そして、しばらく黙り込んだ後、ゆっくりと口を開いた。

「ベアトリクス殿下とハイブリッジ騎士爵様が口を揃えて仰るのです。信じないわけにはいきません。村民を代表して、心より感謝を申し上げます」

「ああ」

 俺は鷹揚に頷く。
 そんなやり取りを聞いていた他の村人たちが、歓声の声を上げる。

「聞いたか? ゴブリンの奴らをあの方々が全部やっつけちまったってよ!」

「ああ! さすがはベアトリクス殿下だ! 俺たち庶民の味方!」

「隣にいるのはハイブリッジ騎士爵だよな? 農業改革とかですごい功績を上げているそうだが……。戦闘能力もあったとは」

「バカ言え! あの方は、冒険者登録をしてわずか1年ほどでBランクに昇格し、騎士爵を授かったんだぜ! むしろ戦闘が本業だ!」

「凄え! 俺たちの村にあんな方々が来てくれるなんて!」

 村人たちは、まるで英雄でも見るような目つきで俺とベアトリクスを見つめていた。
 だが、ベアトリクスはどこか居心地の悪そうな表情を浮かべていた。

「我は何もしていない……。痺れて動けなくなった奴らにトドメを刺しただけなのだが……」

 彼女が小声でそう呟く。
 村人たちの喧騒にかき消される程度の声量だが、隣に立っている俺には聞こえた。

「ハハ。まあ、いいじゃないか。今回は俺たちの方が活躍しやすい状況だったというだけのことだ」

 俺は軽く笑う。
 実際、ベアトリクスの活躍は殆どなかったと言ってもいい。
 だが、戦況によっては”剣姫”の二つ名を持つ彼女の方が活躍することも有り得ただろう。

「……そうだな。それに、民が安心して笑っている。我にはそれで十分だ」

「おう」

 俺とベアトリクスは、互いに顔を見合わせ、微笑み合う。
 その後、村長から今回の討伐報酬、そしてゴブリンとオークの素材買い取りについて説明を受ける。
 俺は”報酬など不要”と言ってカッコつけたのだが、ベアトリクスと村長から揃って止められてしまった。
 魔物の討伐依頼にも相場というものがあり、通りすがりの高ランク冒険者がホイホイと格安で受けるべきではないらしい。

 まあ、それはその通りだな。
 ラーグの街に卸している高品質な武具や、サリエやアイリスによる治療回りも、市場価格に配慮して利益が出るように売値を設定している。
 それと同じような理屈だ。
 特に今回の場合は、王都とラーグの街にそれぞれ討伐依頼を出した後だ。
 少なくとも、それよりも下の値段を報酬として受け取ることは避けたほうがいい。

「ま、それなら、最初に冒険者ギルドへ提示していた金額と同じで構わないぞ」

「ええっ!? しかし、魔物の集団が想定以上に多かった分の追加報酬は……」

 村長が驚く。

「うーん。俺たちにとっては誤差みたいなものだからな。ベアトリクスもそれでいいよな?」

「誤差というには大きな差だが……。まあ、我もそれで構わぬ。無償でさえなければ、相場を大きく崩すことはなかろう」

「……ということだ。ではそれで報酬を用意してくれ」

「あ、ありがとうございます! すぐにご用意致します!!」

 村長が深々と頭を下げる。
 こうして、村には平穏が訪れたのだった。

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