【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

642話 蓮華と人外トリオ

「お、おいしいものがたくさんありますね。つい食べすぎてしまいそうです」

「こっちのハガ王国のおいしいよっ! ニムお姉ちゃん!」

 花嫁のニムとマリアが料理を食べながら話している。
 マリアが皿に取り分けた肉料理を、ニムがぱくりと食べる。

「んーっ! おいしいです!」

「うんっ! マリア、ママの料理と同じくらい好きっ!」

 2人とも笑顔で幸せそうだ。
 仲の良い姉妹のような雰囲気がある。

「ふふん。こっちのウォルフ村風のカレーは絶品よ」

 ユナが自慢げに言う。

「そうなのですか? じゃあ、いただきますね」

 サリエが素直に答え、カレーを一口食べた。
 しかし……。

「うっ!? うぅ……辛くて涙が出ちゃいます」

「そうかしら? ピリ辛ぐらいだと思うのだけど。私の故郷の味よ。食べ慣れた味だわ」

 ユナが幸せそうにそう言う。

「そ、それはよかったですね……」

 サリエはちょっと苦しそうな表情で返事をした。

「大丈夫ですか? サリエさん」

 リーゼロッテが水の入ったグラスを差し出す。

「あ、ありがとうございます」

「辛いものは苦手なのですね。無理しない方がよろしいですわ」

「はい。少し休ませてもらいます」

 サリエは水を飲んで一息つく。

「落ち着いたら、こっちの寿司を食べるといいでしょう。お父様たちがラスターレイン伯爵領から持ってきてくださった、とても美味しい海の幸で握られています」

 リーゼロッテがそう勧める。

「えっと……ではこの緑色のやつを……」

 サリエが寿司を箸で掴んで口に運ぼうとする。

「ちょっと待った。それは、ワサビ寿司だろう?」

 俺は思わず声を掛けてしまった。

「ワサビ寿司? あ、ああっ! そういえば、とんでもなく辛い寿司がありましたね……。思い出しました」

 サリエはラスターレイン伯爵領で、ワサビ寿司を食べてしまったことがある。
 外見から抹茶のような味わいを想像していたところに、強烈な刺激が襲ってきたため、悶絶したのだ。

「サリエさん。こちらのエビやサーモンがオススメですわよ。ワサビ寿司は除けておきましょう」

 リーゼロッテが親切にも教えてくれる。

「あ、ありがとうございます」

「さすがリーゼだ。寿司のことはお手の物だな」

 ラスターレイン伯爵領は海に面している。
 ヤマト連邦とも以前は少しだけ交流があり、その時に寿司の文化が伝わったと聞いたことがある。

「ふふふ。食べ物のことならお任せくださいまし。こっちのナス寿司もオススメですわよ」

 リーゼロッテが次々と薦めていく。

「ちょ、ちょっと待つでござる。茄子寿司は流石に邪道……。拙者はこちらの鮪を勧めるでござる」

 蓮華が対抗して、自分の推すマグロをアピールしてくる。
 彼女の故郷はヤマト連邦だ。
 寿司には拘りがある。

「ふむ。この生魚を使った握りという文化も面白いな」

「ええ。さすがはハイブリッジ騎士爵家です。このような料理にも精通しているとは」

「何でも、これはあのヤマト連邦の料理らしいではないか」

「なんと。そうだったのか」

「あちらの女性はヤマト連邦の出身者らしいぞ。武者修行の旅をしているとか」

「おお……。鎖国中の国からこの国に来るとは、よほどの覚悟がおありなのでしょうな」

「剣術の達人と聞いている。かつて我が国からの親交大使を追い返した”侍”という戦士だろう」

「侍か……。国境の海岸線を守る侍たちがあれほどまでに強くなければ、多少強引にでも国交を結べたというのに……」

 少し離れたところにいる貴族たちがそんな会話をしている。

「ピピッ! マスターと交友のある人物として、新たに30名以上を登録しました。サザリアナ王国を始めとした各国における爵位、家族構成、魔力量、闘気量などを登録済みです」

 高性能アンドロイドのティーナがそう報告してきた。
 俺も頑張って自力で覚えようとしているのだが、どうしても限られた時間だけでは無理がある。
 彼女に覚えてもらえれば確実だ。

「なんだ? あの少女は」

「一見すると普通の少女だが、よく見れば少し違和感があるな……」

「噂では、ゴーレムの一種らしいぞ」

「バカな……。あれがゴーレムだと?」

「ハイブリッジ騎士爵の人脈を使えば、あれほどのゴーレムを開発することも可能ということか」

「もしくは、どこぞのダンジョンか何かから得たものかもしれぬぞ。この街から西に行ったところに、古代遺跡があるらしいではないか」

 ティーナも注目の的になっているな。
 彼女の出どころがダンジョンというのは正解だが、場所はハイブリッジ騎士爵領内のダンジョンではなく、ラスターレイン伯爵領にあるアヴァロン迷宮である。

「ユナ! タカシ! 結婚おめでとう!!」

 1匹のトカゲが俺たちに近寄ってきて、祝福の言葉を贈ってくれた。
 彼女はファイアードラゴンのドラちゃん。
 ユナによってテイムされている。
 人語を解するが、ちゃんと意思疎通ができるのは俺とユナ相手のみだ。

「あのバカでかいトカゲはなんだ?」

「分からぬ……。なぜか新婦のユナ殿の関係者席に座っておったが……」

「ユナ殿はテイマーとしても才能豊からしい。テイムした魔物か何かだろう」

「あれはペットとして飼っているのだろうな。あれほどのんきそうな顔をしたトカゲも珍しい」

「確かに。見ていると不思議と癒される感じがあるな……」

 貴族たちがヒソヒソと話し合っている。
 ドラちゃんはトカゲじゃなくてドラゴンなんだよなぁ。
 知らぬが仏だ。
 こんな街中にファイアードラゴンがいるとバレれば、騒ぎになるかもしれん。

(ふふふ……。今日はずいぶんと賑やかだね……。それに、良質な魔力持ちがたくさん集まっている……。心地いい……)

 どこからともなくそんな声が聞こえた。
 この声の持ち主は、幽霊のゆーちゃんだ。
 俺たちが今の家に移り住んだ頃からの付き合いである。
 当初はおぼろげにしか気配を感じなかったが、徐々に存在感が強まってきている感じがある。

 おそらくだが、存在を確立させるために一定量の魔力を集める必要があるのだろう。
 今のところは害はないし、それどころかたまに贈り物をしてくれることもある。
 彼女との意思疎通が確立する日を楽しみにしておこう。

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