【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
616話 宴会
通路を塞ぐアダマンタイトの巨石への対処を考えているところだ。
「ブギー頭領とジョー副頭領の2人掛かりでもダメなんだな」
「ああ。見ての通り、俺たちが全力で力を入れてもビクともしねえ」
「この採掘場で働いているメンバーの中では、僭越ながら俺たちが最も力が強いのですが……。それで無理となると、専用の魔道具が必要かと考えています」
2人がそう言う。
「そうだな。だが、その前に試しておきたいことがある」
俺は、自分の身体に闘気を流す。
そして、アダマンタイトの巨石の前に立つ。
「タカシお兄ちゃん?」
「タカシさん?」
マリアとリーゼロッテが声を掛けてくる。
索敵能力や魔法などにおいて高い能力を持つ彼女たちだが、腕力や闘気においてはそれほどでもない。
ここは俺の頑張りどころだ。
「まあ見ていてくれ。……ふんっ!」
少しだけ力を込め、アダマンタイトの巨石に触れる。
ズシッとした感触。
「…………」
そのままの状態で数秒が経過する。
……変化はない。
ギアをもう一段階上げよう。
「ふうっ」
俺は小さく息を吐くと、全力を込める。
「うおおおぉっ!!」
ゴゴゴ……!
「なっ!? これは……」
「嘘でしょう……?」
ブギー頭領とジョー副頭領が驚きの声を上げる。
アダマンタイトの巨石が、数センチだけ動いたのだ。
このまま完全に通路からどければ、問題なく通れるようになる。
……のだが、さすがにそれは無理だった。
「はあっ、はあ……。重いな、これは……!」
俺は全身汗まみれになり、肩を大きく上下させる。
「タカシお兄ちゃん、すごい!」
「さすがですわね」
マリアとリーゼロッテが称賛の言葉を口にしてくれる。
「ふっ。やるじゃねえか」
「さすがはハイブリッジ騎士爵様です」
「我が神なら当然のことだ!」
護衛のキリヤとヴィルナ、それに『紅蓮の刃』のアランも声をかけてくる。
「まあ少し動いただけだがな……」
今の俺の身体能力や闘気量では、これが限界だ。
「それでも十分すげえぜ。俺たちの力じゃ、動かすこともできなかったんだからな」
「その通りです。こんな巨岩を一人で動かせる方なんて、この国に数人しかいないのではないでしょうか」
ブギー頭領とジョー副頭領が言う。
この国に数人はさすがに大げさな気もする。
しかし、あまり多くはいないことは確かだろうな。
ミリオンズ内でも、俺よりも明確に力が強いのはミティだけだ。
あとは、ニムが俺と互角か少し強いぐらいである。
「褒めてくれるのは嬉しいが、これ以上は無理だぞ」
今の全力で闘気と体力を消耗してしまった。
「ふっ。なら、次は俺が挑戦してみるか」
「俺もいきますぜ!」
キリヤとアランが名乗り出る。
「わかった。頼む」
「おう!」
「任せてください!」
こうして、今度は2人の男が巨石に挑むことになった。
「キリヤくん! 頑張ってください!!」
ヴィルナが声援を送る。
彼女は不参加だ。
兎獣人であり聴覚や脚力は一級品だが、腕力はさほどでもないからな。
押す場所が限られているこの岩を動かすには、向いていない。
無理に参加するよりは、少数精鋭で取り組んだ方がいいだろう。
「ぬおおぉっ!!」
「おりゃああぁっ!!」
2人が全力で力を込める。
しかし、やはり動かない。
「ぬぐぐぐぐっ!!」
「ぬぬぬぬぬっ!!」
2人とも必死の形相で、さらに力を込める。
ゴゴ……!
「おおっ! 少しだけ動いたぞ!」
俺は思わず声を上げてしまう。
距離にして、ほんの1センチ程度だろうか。
わずかだが、確かに動いたように思える。
「はあ……はあ……。やったぜ!! ……と言っていいのか?」
「ぜえ、ぜえ……。しかし、2人がかりでこれか……」
キリヤとアランが、額の汗を拭いながら言った。
「お疲れ。まあこれでも飲め」
俺はアイテムボックスから飲み物を取り出し、2人に渡す。
「おお、サンキュー! 助かるぜ」
「ありがとうございます!」
2人は水をごくりと飲む。
「ふう……。生き返った」
「美味い」
「しかし、これほどの重量だと力でどけるのは難しいな」
俺は改めて巨石を見つめる。
「タカシの坊主の力には驚かされたが、さすがにこれ以上は無理か」
「やはり人力では限界がありますね。専用の魔道具を仕入れていただく必要があるかもしれません」
ブギー頭領とジョー副頭領が言う。
「そうだな。手配しておこう。ま、それほど急がなくてもいいんだろう?」
魔道技師のジェイネフェリアに依頼すれば、いい感じの魔道具を作ってくれるだろう。
ただ、結構な出力が必要となるし、材料の仕入れや製作にも時間がかかるはずだ。
「ああ。この先に何があるか気になるが、本来の仕事の採掘や伐採作業には関係ねえからな」
「優先度は、領主であるタカシ殿の裁量範囲内となります」
ブギー頭領とジョー副頭領がそう言う。
この奥に何があるか気になるが、最優先というほどではないな。
気長に取り組むことにしよう。
……ん?
何も魔道具に頼らなくても、ミティなら何とかなるかもしれないな?
しかし残念。
彼女は妊娠中なので、こんな重労働はさせられない。
そもそも、西の森の中を移動してもらうことすら少し怖い。
少なくとも、出産して落ち着くまでは無理だ。
その後、古代遺跡を出て、今度は採掘場や周辺の開発状況を見せてもらった。
かつてのブギー盗掘団の面々も、チラホラと見かけた。
元気にやっているようである。
「うむ。順調に作業を進めてくれていたようだな。ありがたいことだ」
ブギー頭領とジョー副頭領、それに他の作業メンバーを一同に集め、俺はそう声を掛ける。
「ハッハ! そう言ってくれると嬉しいぜ」
「頑張ってきたかいがありましたね」
ブギー頭領とジョー副頭領が笑顔で言う。
「この調子で頼む。ボーナスとして、これを振る舞ってやろう」
俺はアイテムボックスから酒樽を出し、彼らに差し出した。
さらに、酒が飲めない者もいるので、他にもいくつかの飲み物とツマミを用意している。
「おお! 気が利いてんじゃねえか」
「これはこれは、どうもありがとうございます」
ブギー頭領とジョー副頭領が嬉しそうな顔をする。
「ひゃっはー! 今日はたくさん飲むぜ!!」
「ひーはー! 俺もだぜ!」
ブギー盗掘団の下っ端戦闘員コンビがそう叫ぶ。
……ああ、少し正確ではなかったか。
ブギー盗掘団は解散しているので、今はブギー採掘団と言った方がいいかもしれない。
そして、今の彼らは下っ端ではない。
現場からの推挙や文官トリスタの支持を受けて、俺の権限で主任採掘師に任命しているのだ。
「では、皆のもの、乾杯!」
「「「カンパーイ!!」」」
こうして宴会が始まった。
古代遺跡の探索、採掘場における採掘作業、周辺の開発。
少し長い視点での取り組みが必要となりそうだが、進捗自体は順調だ。
ブギー頭領やジョー副頭領に任せておけば、うまくやってくれるだろう。
俺は満足感や期待感を抱きつつ、みんなと共に宴会を楽しんだのだった。
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