【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

606話 俺を超えるのか

 みんなでラーグの街の入口まで戻ってきた。
 俺、クリスティ、雪月花、『紅蓮の刃』のリーダーであるアラン、そしてそのメンバーの男が2人だ。
 魔法の絨毯を着陸させる。
 ここからは徒歩の移動だ。

「では……、俺たちはここで失礼しやす」

 男がそう言う。

「む? 冒険者ギルドには行かないのか?」

 俺は尋ねる。

「へい。リーダーがまだ起き上がれない状態ですので……」

「宿屋で休ませようと思います。ハイブリッジ騎士爵様のことは、伝えておきやす」

 男たちがそう言う。
 彼らのリーダーであるアランは、クリスティと共闘してリトルベアを撃破したまでは良かったが、その後は極度の疲労により意識が不明瞭となっている。
 冒険者ギルドへの報告も大切だが、それ以上にまずは休息が必要だと判断したのだろう。

「わかった。養生しろよ」

 俺が治療魔法を掛けたので、命に関わることはないだろう。
 だが、できれば早めに回復してほしい。
 俺の正体をバラしたときの反応が気になるからな。
 ちょっとしたドッキリを仕掛けたような気分だ。

 できれば目の前でバラしたかったが、こればかりは仕方ない。
 アランが起きるまで隣で待つわけにもいかないからな。
 俺はそこまで暇ではないのだ。

「ありがとうございます! では、失礼させてもらいやす!」

 男たちは頭を下げつつ、去っていった。

「さて。では、俺たちだけで冒険者ギルドに向かうか」

「そうね。早く行きましょう!」

 月が同意してくれる。
 こうして、俺たちは冒険者ギルドへ歩き始めたのだった。


●●●


「ええ!? 崖から落ちたのですか!?」

 大声でそう驚くのは、冒険者ギルドの受付嬢ネリーだ。

「ああ……。ヘマをしちまったぜ……。くそっ! 情けねえ……」

 クリスティが悔しげに歯噛みする。

「まあまあ。そんなに自分を責めるなよ。無事で済んで良かっただろ?」

 俺は慰める。

「そうだな……。ご主人のおかげで助かったんだもんな。ありがとよ」

「気にするなって。俺たちはハイブリッジ家の仲間なんだから」

「……仲間か」

 クリスティが意味ありげな表情でそう呟く。

「ケガもなく終わったようで良かったです。さすがはタカシさん!」

 ネリーが明るい声で言う。

「いやいや……。たまたま運良く助けることができただけさ」

 俺は謙遜しておく。
 ネリーの忠義度は……。
 いい感じに微増を続けているな。
 一昨日の『紅蓮の刃』との一件でも上がったし、今回の報告でも上がった。
 もうひと押しで加護(小)の条件を満たす。

「花ちゃんももう少しちゃんと見ておけばよかったね~」

「そうね。正直、Cランク冒険者として不甲斐なかったわ」

「……まさかあんなところに崖があるとはね……」

 花、月、雪がそう言う。

「いや、花たちはちゃんとクリスティのことを気にかけてくれていた。それは分かっている。あれは不幸な事故だ」

 『透明マント』を利用してストーキングしていたが、雪月花は役割を全うしようと努力していた。
 想定以上のクリスティの独断専行に、不慮の事故が重なった形だ。
 西の森の魔物もそこそこ減ってきたし、木々の伐採や道の整備をしていく頃合いかもしれない。

「何か対策を考えておこう。土魔法ならニムかな……。いや、彼女は結婚式が控えていて忙しいしな……。それが終わればまた旅に出ることになるし……」

 俺はそう呟く。
 結婚式の後の予定はまだ確定していない。
 そろそろ叙爵式があってもおかしくない時期だ。
 王都に行くことになるかもしれない。

 あるいは、修行のために剣の聖地ソラトリアや魔法学園都市シャマールに行くのもいいだろう。
 蓮華の故郷ヤマト連邦でも、何やらきな臭い動きがあるという噂だ。

「え? ご主人、また街を離れるのか?」

 クリスティが少し驚いた顔で言う。

「そうだな。随分長い滞在だったが、ついにお別れだ。もちろんまた戻ってくるが。寂しいか?」

 俺はこのあたり一帯の領主だ。
 戻ってこないという選択肢はないのだが、今後世界滅亡の危機に立ち向かうためにも各地を回り、見聞を広めておく必要がある。

「……ああ。正直言って、寂しいぜ。だけどよ、あたいは今回の件で自分の力不足を感じた。もっと強くならないといけねぇ」

「いい意気込みだ。クリスティなら、近いうちにCランクになれるだろう。応援しているぞ」

 俺はそう言う。
 Cランクともなれば、一人前の冒険者だ。
 雪月花やトミーと同格である。
 一般的には間違いなく強者の部類だが……。

「それじゃ足りねえ! あたいはご主人を守れるほど強くなるんだ! Bランク……いや、Aランクになってみせる!!」

 クリスティが力強い目で俺を見つめてくる。
 その目に宿るのは、強い決意と向上心だ。
 彼女の強さへの渇望は、相当なものだな。

 それにしても、Aランクとは大きく出た。
 チートの恩恵を受けまくっている俺ですら、まだBランクなのに。

「ほう……! この俺を超えるのか」

 俺はニヤリと笑う。
 そして、羽織っている上着を脱ぐ。

「……じゃあ、この上着をお前に預ける。俺の大切な上着だ」

 少し前に、サリエやオリビアと共に作ったものである。
 左の袖はなくなっているが、まだまだ着れる。

「……これは」

 クリスティが驚きの顔を見せる。

「いつかきっと返しに来い。立派な冒険者になってな」

「……ああ! 必ず返すぜ!! 待っててくれよ!」

 クリスティが力強く宣言した。
 こうして、クリスティと『紅蓮の刃』とのイザコザは一件落着したのだった。

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