【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

582話 ニルスとハンナが故郷の村に向けて出発

 季節は春。
 5月も後半に差し掛かろうとしている。
 タカシがニルスとハンナのサプライズ結婚式を執り行ってから1週間以上が経過したある日のことだ。

「おお……。これは壮観だなあ……」

 ニルスがそう呟く。
 彼の視線の先にあるものは、馬車の荷台に積み上げられた大量の食料だ。

「本当にすごい量だね……。これだけあれば、みんなも満足してくれるはず……」

「ああ。それにしても、さすがはお館様だ。奴隷である俺たちとの約束をきちんと守ってくださるだけはなく、これほどの量を用意してくださるとは……」

 ハンナとニルスがそんな会話を交わす。

「本当に立派なお方だね。奴隷になったときはどうなるかと思ったけど……。優しいし、器もとんでもなく大きい」

「ああ。そうだな。お館様にお仕えできて、俺たちは本当に幸せ者だよ」

 ハンナの言葉に同意するニルス。
 彼らが言うお館様とは、もちろんタカシのことだ。

 普段からの優しい態度、奴隷とは思えない高待遇、農業改革というやりがいのある仕事。
 購入されてからというもの、彼らからタカシに対する忠義度は徐々に上昇していた。

 さらには、サプライズ結婚式、オリハルコンのクワ、想像を超えた十分な量の食料支援など、数々の出来事が積み重なって、ニルスとハンナの心は完全にタカシのものとなっていた。

「せっかくいただいた食料だもん。無事に村まで運ばないとね」

「大丈夫だ。俺に任せろ」

「ニルスに? 何か自信があるの?」

「ああ。何だか最近、体の調子がとてもいいんだ。アイリス様に教わっている格闘術の力量も向上した気がする」

「へえ。いつ頃から?」

「あの結婚式の日に、ハンナを幸せにすると誓った頃からだな。それと同時に、生涯お館様にお仕えすると決めた日でもあるが」

「ニルスもそうなんだ。実は私もなんだよね」

 ハンナがそう言う。
 それもそのはず。
 彼らには、結婚式の後ぐらいのタイミングでタカシから加護(小)が付与されている。

 その恩恵は、基礎ステータスの2割向上。
 さらには、一部のスキルのレベルが1上昇する。

 ニルスは栽培術と格闘術、ハンナは栽培術と弓術のスキルレベルがそれぞれ1ずつ上昇した。
 栽培術はレベル3から4に。
 格闘術はレベル2から3に。
 弓術はレベル2から3になっている。

 レベル4と言えば、その道一筋のプロ級である。
 ベテラン並みの技量であり、その能力だけで十分に家族を養っていけるほどのものだ。

 レベル3は、中級だ。
 その能力だけでも、何とか食べていけるぐらいの水準となる。
 ニルスとハンナの本職は農業改革担当官であり、戦闘は専門外であることを考えると、格闘術レベル3や弓術レベル3でも十分過ぎる水準だと言えるだろう。

 基礎ステータスが2割向上していることもあり、彼らの戦闘能力は既に平均的なDランク冒険者を大きく超えていると言っても過言ではない。
 まあ、冒険者には索敵能力や判断能力も必要なので、総合的に見て彼らがDランク冒険者よりも優れているかと言えば、それはまた別の話ではあるのだが。

「よし、行くか」

「ええ。気を引き締めて行こう」

 ニルスの言葉にハンナが応じる。
 2人は、大量の食料を乗せた馬車に乗り込んだ。

 ちなみに、最初の御者はハンナが担当する。
 ニルスと交代制だ。
 そしてもちろん、同行者がいる。

「へへっ! 護衛は俺たちに任せな!」

「私たちがしっかり護衛するわよ!」

 Cランク冒険者のトミーと月がそう言う。
 今回の食料支援にあたり、護衛としてハイブリッジ家から指名依頼が出されたのだ。

「農業改革には花ちゃんもたくさん仕事したからね~。ニルスくんとハンナちゃんの故郷まで、しっかりと届けるよ~」

「……それほど危険はない道だけど、報酬は多め。割のいい仕事をもらえてラッキー……」

 花と雪がそんなことを言う。

「ふふん。ちゃんと報酬に見合った活躍に期待しているわよ」

「そうでござるな。もちろん拙者も頑張らせてもらうでござるが」

 ユナと蓮華がそう言う。
 彼女たちも、タカシに頼まれてこの食料支援の旅に同行する。

 タカシ本人は不在だ。
 彼には領主としての仕事がある。

 また、ニムもラーグの街のとどまっている。
 農業改革はひと段落したとはいえ、まだ一部の仕事は残っている。
 主導してきたニルス、ハンナ、花が抜けた穴を埋めなければならないからだ。

 ここで、この旅の同行者をまとめておこう。
 ニルスとハンナ。
 トミー、雪月花。
 ユナと蓮華。
 それに、その他の一般護衛兵が数人である。

 ずいぶんと大所帯だが、仕方ない。
 一定以上をの価値がある大量の食料を遠くの村まで運ぶのだ。
 盗賊はさほど出ないはずだが、魔物に襲われるリスクもある。
 また、近年不作に見舞われている地域へ赴くため、食い詰めた農民に狙われる可能性だってゼロとは言えない。
 だから、念のため戦力を多く用意したというわけだ。

「みんなの驚く顔が楽しみだな……」

「そうね。口減らしのために奴隷として売られたのは複雑だったけど……。仕方のないことだったし」

 ニルスとハンナがそう呟く。
 そうして、彼らは出発したのだった。

「【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く