【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

577話 豊作

 1週間ほどが経過した。
 今日は、ラーグの街の外にある畑地帯に来ている。

「ほう。ずいぶんと豊作だな」

 俺は、一面に広がる畑を見てそう言った。

「はい。これも、お館様やニム様のおかげです」

「ハイブリッジ騎士爵領で、飢える者などもういないでしょう」

 ニルスとハンナが感慨深げに言う。
 彼らは、領外の村にて口減らしのために奴隷となった。
 飢えの克服に対する熱意は人一倍強い。

「それはいいことだな。2人ともよく頑張ってくれた。もちろん、ニムと花もだ」

 俺はそう言って、4人を労う。

「え、えへへ。嬉しいです」

 ニムが照れ笑いしながら応えた。

「花ちゃん、がんばったよね~。しばらくはゆっくり過ごさせてもらおうかな~」

 花が幸せそうにそう言う。

「ああ。たっぷりと休むといい」

 労働嫌いなのに、よくやってくれたものだ。
 今後も末永くハイブリッジ家に貢献してくれるよう、英気を養ってもらうことにしよう。

 その後、4人の指示の元で領民や雇われ冒険者たちが動き、農作物がどんどん収穫されていく。
 この光景を見るだけで、本当にこの領の未来が明るいことが実感できる。

「ところで、お館様」

 作業中に声をかけられたので振り返ると、そこにはニルスがいた。

「どうした?」

「いえ、あの……少し相談がありまして……」

 何だか歯切れが悪い感じだ。

「ん? 何だ?」

「はい……実は、その……」

 彼が言いよどむ。
 そこにやって来たのが、ハンナだ。
 彼女はニルスをチラッと見ながら、俺の方へ顔を向ける。

「相談したいのは、報酬の件です。奴隷の身で、このようなことを言うのは烏滸がましいのですが……」

 ハンナが遠慮がちにそう言う。
 ニルスとハンナは、2人とも俺の奴隷だ。
 奴隷である以上は、主人のために働くのは当然の義務である。

 この国は人権意識が結構しっかりしているので、生殺与奪の権までを俺が握っているわけではない。
 しかし、働きに対する報酬や待遇を決めるのは主人に一任されている。
 最低限の衣食住さえ与えていれば、本来は無報酬でも全く問題はない。

「ああ。農業改革が無事に成功すれば、報酬として2人の故郷に食料支援をするという話だな? もちろん覚えているとも」

 俺はそう言う。
 主人と奴隷という関係性のもとで交わされた口約束だ。
 反故にしてしまっても、誰も文句は言えない。

 だが、もちろん反故になどしない。
 忠義度を稼ぐためだ。
 彼ら2人に加護(小)を付与できれば、ハイブリッジ家の未来はさらに明るくなる。
 また、例のミッションの達成に向けて大きく前進することになる。

 そもそも、下手に約束を破ったりすれば、心優しいミティやアイリスが黙っていないだろうし。
 約束を履行する以外の選択肢はない。

「あ、ありがとうございます! 覚えていてくださったとは!」

 ニルスがそう喜ぶ。

「だが、喜ぶのはまだ早いぞ? 豊作は間違いないようだが、具体的な収穫量はまだ不透明だ。一定の食料援助をしてやることまでは確定したが、今後の頑張り次第では更に追加の援助ができるかもしれない」

「はい。心得ております。微力ではありますが、精一杯働かせていただきます」

「私も、全力を尽くします」

 ニルスとハンナがそう言う。

「ああ。期待しているぞ」

 2人の忠義度は、後少しで40に達しそうだ。
 早く加護(小)の条件を満たしてほしい。
 さらなる豊作に期待しよう。

「それじゃ、引き続き頑張ってくれ」

 俺はニルスとハンナの肩をポンと叩いて、その場を離れた。
 そして、ニルスとハンナの様子を窺っていたニムに話しかける。

「ニルスたちについてどう思う?」

「と、とてもよく頑張ってくれていましたよ。あの2人は、タカシさんのためなら大抵のことはするでしょう」

 ニムが真面目な顔でそう言った。
 彼女の言葉からは、ニルスとハンナへの強い信頼が感じられる。
 実際のところ、忠義度40前後は『タカシのためなら大抵のことはする』というぐらいの感情なのだろう。
 これが忠義度50となると、『場合によっては命すら投げ出す覚悟がある』ぐらいの感情なのかもしれない。

「そうか……。俺も頑張らないとな」

 各種のチートスキル頼みとはいえ、忠義度40や50を超えている者がずいぶんと多くなってきた。
 彼らの信頼に応えられるよう、俺も気を引き締めていかなければならない。

「彼らは、あと少しで例の条件を満たしそうなのだが……。故郷への食料援助以外で、何か案はないだろうか?」

 故郷への食料援助を一定以上行うという確約をしたことで、忠義度が少し上がった。
 このままでも、収穫が順調に進めば、忠義度は微増していくだろう。
 そして実際に食料援助を行うに至れば、さらに忠義度は上がるはずだ。
 場合によっては、彼ら自身に故郷へ届けてもらってもいい。

 その段階まで来れば、加護(小)の条件を満たしている可能性が高い。
 今、これほど焦る必要はないのだが……。
 可能であれば、早めに加護(小)を付与しておきたい。
 本当にあと少しなんだよな。

「そ、そうですね……。では、こういうのはどうでしょうか?」

 ニムが俺に耳打ちする。

「ふむ……。なるほど。悪くなさそうだ。その案を試してみるか」

 俺はニムの案を快諾した。
 忠義度40に到達できるかは別として、少なくとも下がる可能性は低いだろう。
 ミティやアイリスのアドバイスも貰いつつ、計画を進めていくことにしよう。

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