【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

536話 千秋との記憶

 夢を見ていた。
 ここは……。
 中学生のときの俺の部屋か。

「たかし君。どうかした? ボーッとしちゃって」

 声をかけてきたのは、中学の時のクラスメートの女子だ。
 名前は千秋。
 大人しい雰囲気の、目立たない感じの女子である。
 俺とは幼なじみの関係だ。

 どうやら、中学生のときの夢を見ているようである。
 一人称視点の夢だ。
 せっかくだし、過去を満喫させてもらうか。

「ああ、ごめん。ちょっと考え事していただけだ」

「そう? てっきり、その宿題が難しすぎて悩んでいるのかと思ったよ。わたしも分かんないし」

「これはそんなに難しくないぞ。ほら、この公式を使ってさ」

 俺は千秋に問題の解き方を教えていく。

「なるほどね~。これでいいんだ」

「うん。それで正解だよ」

「ありがとう! やっぱり、たかし君と勉強したら捗るよ」

「別に、これくらいならいつでも教えてやるけど?」

「本当!? じゃあ、これからもよろしくお願いね!」

「おう。まかせとけ」

 それからも、夢の中の俺たちは勉強会を続けていった。
 懐かしいな……。
 幼なじみの彼女とは、こんな感じで結構仲が良かったんだよな。
 年頃の少年少女が2人きりで勉強とか、漫画みたいな話だ。

「ねえ、たかし君。次はここの問題なんだけど……」

「ん? どれどれ」

 俺は、彼女が指差した問題を覗き込む。
 そのときだった。
 さわっ。
 俺の前髪と千秋の前髪が触れ合った。

「「あっ……」」

 その瞬間、彼女の顔が真っ赤に染まる。

「ご、ごめ……」

 俺は謝罪しようとするが……。

「う、うわあっ!!」

 千秋が突然立ち上がった。
 それだけならまだいいのだが……。
 ガコッ!
 彼女が机に足を引っ掛け、バランスを崩す。
 そのまま彼女は俺の方に倒れ込んできた。
 ゴンッ!!

「いてぇ~」

「あうっ!」

 俺は頭を押さえながら、痛そうな悲鳴を上げる。
 一方の千秋も、頭を両手で押さえている。
 どうやら、お互いの頭をぶつけてしまったらしい。

「「…………」」

 しばらくの間、俺たちは無言で痛みに耐えていた。
 ようやく落ち着いてきたが、今度は別の問題がある。

 俺は仰向けに倒れ込んでいる。
 そして、千秋はそんな俺の上に馬乗りになっていた。
 彼女のスカートはめくれ、俺の下腹部に暖かな感触が伝わってくる。

 あったな~、こんなこと。
 素晴らしいラッキースケベだ。
 しかし残念ながら、この後は普通に勉強を再開したんだよな。
 お互いに顔を真っ赤にしながらの勉強だったので、青春のいい思い出ではあるのだが。

 さあ、千秋よ。
 俺の記憶の通り、無難に俺の股から下りるのだ。

 そんなことを考えつつ、千秋の行動を待つ。
 だが、なぜか彼女は全く動こうとしない。
 むしろ、さらに体を密着させてきた。

「えへへ。たかし君の体って大きいよね」

 おい、何やってるんだ!?
 史実と違うぞ!
 早くどいてくれ!

「わたし、ずっと前から思っていたの。いつか、たかし君とそういう関係になるのかなって……」

 ちょ、ちょっと待て!
 お前、まさか俺のこと好きだったのか?
 いや、でもあの頃の俺に対する気持ちなんて、ただの幼なじみに対する親愛の情程度のものだったはずだ。
 恋愛感情があったとは思えないのだが……。

 くそっ!
 そうと知っていれば、積極的に行動を起こしたのに!

「だから、今ここでしてもいいかな?」

 いやいやいやいや、ダメだろ!
 夢とはいえ、ご都合展開過ぎるぞ!

「たかし君は、嫌なの?」

 千秋がそう言って、俺の股の上で腰を前後に動かし始めた。
 やばいって。
 俺の息子さんが元気になってきてる……。

「たかし君。わたしたち、恋人同士になろうよ」

「いや、俺には……」

 俺にはミティという愛する妻がいる。
 それに、アイリスやモニカも……。
 いや待て。
 彼女たちは、異世界に来てから知り合った女性たちだ。
 いかんな。
 昔の夢と現実がごっちゃになっている。

「ねえ……。いいでしょ?」

 千秋が妖艶に微笑み、腰を前後に動かす。
 気持ちいい……。
 なんなんだこのリアルな感覚は。
 まるで本当にヤッているような……。

「ああっ! や、やめてくれ千秋! 俺たちにそういうのはまだ早い!」

 夢の中の俺たちは、まだ中学生だぞ。
 キスぐらいならまだしも、大人の階段を上るのは早いだろ!

「んーん。遅いぐらいだよ。わたしはずっと待ってたんだから……。それなのに、急にいなくなって……」

 千秋がそんなことを言いつつ、腰の動きを加速させていく。

「ずっと待ってた? 何の話だ? ……くうぅっ!」

 夢の中とはいえ、意味深なことを言わないでほしい。
 気になって夜しか眠れなくなるじゃないか。
 いや、こんなことを考えている場合ではない。
 千秋の腰使いに負けて、俺の中から熱いものがこみ上げてきている。

「たかし君のここ、すっごく熱いよ。わたしの方にも伝わってくる……」

 千秋が頬を赤く染めながら、俺の顔を見つめてきた。

「ああ、もう限界だ。出るっ!!」

 ドピュッ!!
 俺は勢いよく出した。

「きゃっ!?」

 同時に、千秋がビクンと痙攣する。
 俺のズボンの中に、生暖かい液体が広がっていく。
 彼女にも、この暖かさは伝わっているはずだ。

 いや、そんなことよりも……。
 やっちまったな、これは。
 間違いなく夢精というやつだ。
 いい年して、こんなことをしでかすとは。

 早く起きて、メイドのレインやクルミナにバレないうちに洗濯しないと……。
 俺はそんなことを考えつつ、目覚めに向けて意識を集中する。
 幸い、俺のがんばりは通じたようだ。
 夢の中の千秋の姿が薄れていく。

「今日のところはこれで満足したよ。……ばいばい、たかし君。また今度ね……」

「ああ、また会おう」

 夢の中ではあるが、俺はなぜかその言葉を言うべきだと思ってしまった。
 俺は異世界に来たのだし、彼女と再会できる可能性はかなり低いのだがな。

 まあいい。
 それよりも、さっさとパンツの洗濯をしないと。
 夢の世界が閉じ、徐々に現実世界の意識が覚醒していく。

「…………ん?」

 ぼんやりと目を開けた俺の視界には、想定外の光景が広がっていたのだった。

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