【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

479話 キリヤたちとの遭遇

 ラーグの街の近郊にまで帰ってきた。
 クリスティ、キリヤ、ヴィルナ、ヒナ、オリビアの5人がファイティングドッグ狩りをしているところに出くわした。
 俺たちは馬車で彼女たちに近づいていく。

 ピクピク。
 兎獣人のヴィルナの耳が動く。

「むっ! 何者! って、この気配は……」

「ハイブリッジ騎士爵様! おかえりなさいませ!」

 ヒナが元気よくそうあいさつをする。
 俺と彼女たちの距離はまだ結構ある上に、俺は馬車の中央あたりに座っている。
 あっちからはまだよく見えないはずだが。
 ”天眼”によって俺の存在を把握したのだろうか。
 俺たちの馬車は、さらに彼女たちに近づいていく。

「よう。みんな元気そうで何よりだ」

 俺はそう声を掛ける。

「はん。もちろんだぜ! 衣食住しっかりと与えてもらっているしな!」

 クリスティがそう言う。
 俺が不在の間も、セバスがきっちり管理してくれていたはずである。

「オリビア。長く空けてごめんなさいね」

「いえ。サリエお嬢様の将来の旦那様の領地に貢献するのも、私の務めですので。それで、首尾の方は……」

 サリエとオリビアが何やら耳打ちして情報交換をしている。

「ハイブリッジ騎士爵サマ。他領での用件とやらは無事に終わったのか?」

 キリヤが慣れない敬語でそう言う。
 名前を様付けで呼んでおいて、その他の部分でタメ口なのは違和感があるな。
 まあ、俺にとっては口調などどうでもいいことだが。
 加護付与スキルの副次的な恩恵により、各人の忠義度は測ることができる。
 俺への忠義度がある程度高い者がタメ口を使ったところで、ただ不器用なだけで気にするほどではないのだ。

「ああ。まあ、いろいろあったけど、どうにかこうにか乗り切ったよ」

 シュタイン=ソーマ騎士爵の浄化、アヴァロン迷宮の攻略、ファイアードラゴンのテイム、ラスターレイン伯爵家の浄化など。
 いろいろなことがあった。

「ふん。さすがだな」

「あとは屋敷に戻ってゆっくり休むさ。キリヤやクリスティたちもしっかり働いてくれてるみたいだな。それに、オリビアさんもご苦労だった」

 クリスティは俺の奴隷。
 キリヤ、ヴィルナ、ヒナは俺が雇っている警備兵である。
 この4人と俺には、明確な上下関係があると言っていい。
 年齢も俺より下だしな。

 しかし、オリビアは別だ。
 彼女はサリエの付き人としてこの街に滞在しており、サリエがミリオンズとして活動している間は街で待機していただけである。
 ファイティングドッグ狩りを行っていたのも、善意で手伝ってくれていた感じだろう。

 俺とオリビアの間には、明確な上下関係は存在しない。
 年齢も近いしな。
 強いて言えば、騎士爵である俺と平民である彼女という点で身分差はあるが。

「はい。そう言っていただき、ありがたき幸せにございます」

 オリビアが深く頭を下げる。

「それじゃ、俺たちはこのまま街に向かうことにするよ。キリヤたちはどうするんだ?」

 俺はキリヤの方を向いてそう問う。
 おそらくだが、この5人の中でリーダー格は彼だろう。

 実力は、キリヤ、クリスティ、オリビア、ヒナ、ヴィルナの順だと思う。
 年齢は、オリビア、キリヤ、ヒナ、ヴィルナ、クリスティの順のはずだ。
 そして身分は、クリスティが奴隷で、その他の4人は平民である。

 総合的に考えて、キリヤかオリビアあたりの発言力が強くなるのが自然だ。
 しかし、オリビアはあくまでハルク男爵家の次女サリエの付き人であり、この場にいるのはただのお手伝いとしてだ。

「俺たちは、もう少し狩りをしていくつもりだ。護衛が必要なら、狩りを切り上げて付いていってやってもいいぜ?」

 キリヤがそう言う。

「ふっ。だれに言っている。長旅で多少疲れているとはいえ、この俺たちがファイティングドッグごときに負けるはずがないだろう」

「まあそうだろうな。言ってみただけだ。じゃあ、また屋敷でな」

 キリヤはそう言って、他の4人とともに狩りに戻っていった。
 俺たちは再度馬車を走らせ、ラーグの街の入口に向かい始める。

「ハイブリッジさん。彼は何者なの?」

「態度がエルだったね~」

 ツキとハナがそう聞いてくる。

「ん? 彼はキリヤだ。俺の配下の警備兵だな。結構強くて、期待している男だ」

「……え。配下なのに、あの態度なの……? 大物なのか、馬鹿なのか……。それを許しているタカシさんも甘すぎる気が……」

 ユキがそう苦言を呈する。
 確かにそうかもしれない。
 しかし、あれでも忠義度はそれなりに高い。

 雪月花も決して低くはないのだが、キリヤはそれよりも上だ。
 態度はあれでも、心の中ではそこそこの忠義を誓ってくれているはず。
 たかが言葉遣いでゴチャゴチャ言う気にはなれない。

「そう言うな。あれでも、やるべきことはやる男さ。言葉遣いも、いずれは直っていくだろう。彼を登用してからまだ半年も経っていないからな」

 俺はそう言っておく。

「うおおおお! さすがはタカシの旦那だ! 細かいことは気にせず、人の本質を見抜くんだ!」

「器が大きいぜ! 俺たちも、この街のために働かせてもらいますぜ!」

 トミーたちがそう言う。
 彼らから俺に対する評価が若干上がったようだ。
 まあ、彼らはキリヤほどじゃないにせよ、礼儀がやや適当だからな。
 実力重視で礼儀に甘い俺の方針は、彼らにとってもありがたいのだろう。
 俺たちはそんな会話をしつつ、馬車に揺られていった。 

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