【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

416話 黒幕セン登場

 ファイアードラゴンのドラちゃんのテイムに成功した。
 これにて一件落着かと思ったその瞬間、俺たちの背後からドラちゃんへ水魔法による攻撃が放たれた。

 犯人は、リールバッハやリカルロイゼたちラスターレイン伯爵家一行。
 そして、その傍らには……。

「き、貴様は……。ちぃちゃん!」

 選別試験で活躍していた女性である。
 ベアトリクス第三王女やアルカとともに、リールバッハが率いる第一隊に選ばれた。
 年齢は20歳を超えているようだが、自分のことを『ちぃちゃん』と呼ぶやや痛々しい女性だ。
 各隊に同行していた者たちはどこへ行ったのだろう?

「うふふ。その名前は忘れてください。わたくしの名前を、タカシさんは知っているでしょう?」

 ちぃちゃんがそう言って、髪留めを取る。
 受ける印象が変わった。

「むっ!? ええと……。そうだ。……あれだ。あの……」

 見覚えのある顔だが、名前が思い出せない。

「ひ、ひどいですわ……。何度も顔を合わせていますのに……。ハガ王国や、ディルム子爵領でお会いしたではありませんか。ほら、わたくしです」

 ちぃちゃんが髪型を手で整える。

「……ああ! 思い出したぞ! 貴様は、セン!」

「思い出していただけたようで何よりですわ。ふう……」

 センが安堵のため息を漏らす。
 言われてみれば、彼女とちぃちゃんの顔立ちは相当似ていたな。
 化粧や髪型によって受ける印象が変わっていたので、気づけなかった。

 俺とセンがそんなやり取りをしている一方で、リーゼロッテはリールバッハをにらみつけている。

「お父様。いったい、どういうことなのです? ファイアードラゴンは、こちらのユナさんによってテイムされましたわ。無闇に傷つける必要はありません」

「黙れ。竜種を手懐けることなど、人間には不可能だ。奇跡的に今は従っておろうが、いつ制御不能になるかわからん」

 リールバッハが毅然とそう言う。

「父上のおっしゃる通りですね。私たちで息の根を止めてさしあげましょう」

「リーゼロッテは、以前から俺たちの方針に反対してやがったな。まだそんな甘っちょろい考えを捨てきれていなかったのか」

 リカルロイゼとリルクヴィストがそう言う。
 リーゼロッテが『蒼穹の担い手』という冒険者パーティを組んでいたのは、実家の方針に反発したというのも1つの要因だと聞いている。
 ファイアードラゴンの処遇の方向性をめぐって、以前から対立していたのか。

「お母様……。それにシャル。お父様たちをなぜ止めていただけなかったのです?」

 リーゼロッテがそう言う。
 この口ぶりだと、マルセラとシャルレーヌは中立寄りのだったようだな。
 リールバッハ、リカルロイゼ、リルクヴィストが討伐寄り。
 穏健派のリーゼロッテは、肩身の狭い思いをしたことだろう。

「このダンジョンに潜っている間に、ファイアードラゴンの危険性を認識したのです。領民の安全のために、狩らないとなりません」

「その通りです。それに、竜の肉なんて滅多に食べられるものじゃないですよ? お姉様も、食べたいのではありませんか?」

 マルセラとシャルレーヌがそう言う。
 リーゼロッテが知らない間に、彼女たちの意見が変わってしまっていたということか。

 いや待て。
 俺は改めてリールバッハたちの顔を注視する。
 彼ら5人の目には黒いモヤがかかっている。

「リーゼロッテ。彼らは、闇の瘴気に汚染されているようだ。今は、冷静な話し合いができる状態ではない」

 闇の瘴気に汚染されていると、負の感情が増幅される。
 また、普段の思想や感情が強化されて表出する。

 もともと討伐派だったリールバッハ、リカルロイゼ、リルクヴィストは、より自身の意見を固持するようになった。
 そして、マルセラは領民の安全を思う気持ちが増幅された。
 シャルレーヌは、食い意地が増幅されたといったところか。

「ボクたちの聖魔法で、浄化するよ」

「お願いしますわ。……お父様、おとなしく聖魔法を受け入れてくださいまし」

 リーゼロッテがそう言う。

「くだらぬ。闇の瘴気の影響など、我は受けておらぬ」

 リールバッハがそう言う。
 自身の異変に気づいていない様子だ。

 俺も、自分が汚染されたことがあるのでわかる。
 汚染された本人は、自分の精神が汚染されていることに気づかないのだ。
 そして、聖魔法に対する忌避感が増す。
 言葉で投げかけても、おとなしく聖魔法の浄化を受け入れてもらうことは難しい。

「話をしてもムダだろう。まずは蹴散らしておとなしくしてもらう。いくぞ、みんな!」

「わかりました! がんばります!」

 俺とミティ。
 それに、ミリオンズのみんなが構える。

「拙者は……。たかし殿につくでござる。あの女は胡散臭いでござる」

「俺たちは難しい話はわかんねえけどよ……。タカシの旦那についていきますぜ!」

 蓮華やトミーたちも俺たちの味方をしてくれるようだ。

 リールバッハ、マルセラ、リカルロイゼ、リルクヴィスト、シャルレーヌ。
 それにセン。
 いずれも油断できない戦闘能力を持つだろうが、たった6人だ。

 こちらは、ミリオンズだけでも9人。
 それに、ティーナ、蓮華、トミーたちもいる。
 ドラちゃんは、満身創痍で戦えなさそうか。
 まあ、これだけの人数差があればさすがにこちらが勝てるだろう。

 少しだけ気になる点があるとすれば、2つ。

 1つは、センが余裕の表情をしていること。
 さすがにこの戦況を理解できていないはずはないのだが……。
 何か奥の手があるのだろうか?

 そして、もう1つはーー。

「雨が強くなってきやがったな……」

 既に体中がびしょ濡れである。
 雨天下では、俺、ユナ、マリアの火魔法の威力が大きく減退する。
 やや不利な状況だ。
 早めに蹴散らして、聖魔法で浄化することにしよう。

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