【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

370話 ソーマの浄化戦

 俺は聖騎士ソーマと決闘を行った。
リーゼロッテやサリエを口説く資格を賭けた決闘だ。

 剣技では互角だったが、魔法を込みで戦えば俺がやや優勢。
そのまま決着を着けようとしたところ、彼の様子が急変したのだ。

「ガアアッ! オンナ! オンナをヨコセ!」

 ソーマがそう叫ぶ。
どうやら、闇の瘴気の影響下にあるらしい。
目に黒いモヤがかかっている。

「決闘は終わりだ。俺たちミリオンズで、ソーマをおとなしくさせるぞ!」

 俺はそう言う。

「うん。ボクとタカシが中心になって戦おう」

 俺とアイリスが前線に立ち、ソーマと対峙する。

「観衆の避難誘導は私たちに任せてください!」

 ミティがそう言う。
彼女やモニカたちは、群衆の避難をしてくれている。

「ありがとう。おかげで、俺はソーマに集中できる」

 さて。
最初にすべきはーー。

「……聖なる鎖よ。敵を縛り、捕らえよ。セイクリッドチェーン!」

 俺は中級の聖魔法を発動させる。

「グオォッ! イマイマシイ鎖め!」

 ソーマが聖なる鎖により拘束される。
彼の卓越したバランス感覚によりまだ立ってはいるが、手は塞がった。

「神の光よ。今ここに顕現せよ。罪ありしものに聖なる裁きを。パニッシュ」

 アイリスが聖魔法により追撃する。
ウィッシュ、ホーリーシャイン、セイクリッドチェーンに続く、上級聖魔法である。
聖なる波動がソーマを襲う。

「グオオオオォッ! ヤメロォ!」

 ソーマがそう叫ぶ。
確かな効力を発揮している。
だがーー。

「アイリスの聖魔法でも、瘴気を払いきれないのか」

 ソーマの暴走はまだまだ収まりそうにない。

「なかなか厄介だね。彼の魔法抵抗力の高さも関係しているみたい。さすがは騎士爵を授かっているだけある」

 アイリスがそう言う。
魔法抵抗力が高いのも一長一短だな。

「よし。俺とアイリスで、練習していた”あれ”を発動させよう」
「そうだね。まさか、これほど早く出番があるとは思っていなかったけど……。ぶっつけ本番でいくよ!」

 俺とアイリスは、聖魔法の詠唱を始める。
聖ミリアリア統一教に伝わる、オリジナルの聖魔法だ。
まだ個人単位では発動できないが、合同魔法でならば何とか発動できる。

 俺とアイリスの詠唱が、終わりに近づいてきた。
最後の一文句を口にする。

「「汝に!! 裁きの刃を与えん!!」」

 俺とアイリスは、ソーマのほうに手を向ける。

「「ソード・オブ・ジャッジメントッ!!」」

 たくさんの光の刃が空中に生成される。
シャンッ!
それらが、ソーマに降り注ぎ彼の体を貫く。

「ガ、ガアアアアァッ!」

 彼が苦しむ。
この光の刃は、もちろん殺傷力を持っていない。
闇の瘴気を浄化する効力を持っているだけだ。
ホーリーシャインやパニッシュよりも、効力は上である。

「こ、これでもまだ浄化し切れないのか……」

 どうやら俺とアイリスの聖魔法は完全無敵のようですね。
……とはいかなかったということか。
技の問題ではない。
まだまだ、俺とアイリスの練度が足りないのだ。

「ううん。もうずいぶんと弱っているよ。最後のひと押しが必要だね」

 アイリスの言う通り、あと少しで浄化し切れそうだ。
もう一度パニッシュやソード・オブ・ジャッジメントを発動させるか?

 しかし、俺たちのMPにはさほど余裕がない。
アイリスはもともとMP関係のスキルを伸ばしていないし、俺は先ほどのソーマとの決闘でそれなりに消費してきたからだ。

 ここはーー。

「今こそボクの第五の型を見せるときだね」

 アイリスがそう言って、佇まいを正す。

「……はあああぁ! 聖闘気、”光輝”の型」

 彼女が聖闘気を開放させる。
迅雷の型、豪の型、流水の型、守護の型。
それに加わる、第五の型である。
聖闘気を聖魔法と融合させることで、武闘と浄化を両立させた攻撃が可能となる。

 さらにーー。

「俺もいくぞ。……ぬうううぅ! 聖闘気、”光輝”の型」

 俺も同じく聖闘気を開放する。
聖闘気術は闘気術と同じく、ステータス操作で強化することはできても取得することはできない。
もっとも難しい最初の発現は、自身の力で達成する必要がある。

 俺は1年以上前から、アイリスの指導のもとコツコツと鍛錬を続けてきた。
そのかいあって、つい先日にとうとう聖闘気術レベル1を習得したのだ。

 俺は、聖魔法をレベル4にまで伸ばしている。
そのおかげもあってか、俺が発現に成功した最初の型は、”光輝”の型であった。

「「聖ミリアリア流奥義……」」

 俺とアイリスが、ソーマのもとに駆け寄る。

「「光・爆撃正拳!!!」」

 聖闘気を纏った攻撃だ。
俺が右の拳、アイリスが左の拳で、ソーマの顔面狙いのパンチを繰り出す。
物理ダメージと浄化の両方に期待できる。
これで、ソーマも間違いなく沈静化できるだろう。



 ーータカシとアイリスの拳がシュタイン=ソーマの顔面に近づいていく。
彼はそれを認識しつつも、動かない。

 聖なる鎖により拘束されているという事情もあるが、それ以上にそもそもシュタインに回避するという意図がない。
度重なる聖魔法により、彼は正気を取り戻しつつあった。

 シュタインの脳裏には、かつての楽しい日々が走馬灯のように流れていた。

『きゃー! ソーマちゃん、カッコいい!』
『へえ、よかったじゃない。ソーマっち。……いや、ソーマ様とでも呼んだほうがいいかな?』
『え、えっと……。シュタイン……くん。これからもよろしくね。えへへ。なんだか、照れくさいなぁ』

 最愛のミサとの色褪せない思い出だ。

 そして、それらと対比されるかのように、近頃のミサの無表情な顔も思い出されていた。
さらに、抵抗する町娘や嫌がる貴族たちへの度重なる求婚。
己の過ちを振り返り、彼は悔恨の思いを抱き始めていた。

 タカシとアイリスの拳が彼の頬にめり込む。

 何やってんだ、俺……。

 シュタインはタカシとアイリスの拳を受け止め、意識を失った。

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