【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

365話 聖騎士ソーマ登場

 蓮華と決闘を行い、サリエに加護(小)を付与してから1週間ほどが経過した。
あの後、蓮華は俺たちと別れて別方面へ向かっていった。
剣の聖地ソラトリアへ向かうらしい。
俺もいずれは行きたいと思っている場所だし、彼女との再会が楽しみなところだ。

「さて……。いよいよ領都ですか」
「そうですわね。ここは既にソーマ騎士爵領です。そして、領都”リバーサイド”も見えてきましたわ」

 リーゼロッテが前方を指差し、そう言う。
領都リバーサイドは、大きな川のすぐ近くにある。
20~30キロほど下流側に向かえば、海もある。

 俺たちはそのまま馬車で道を進んでいく。
さっそく街に入る。

「へー。おもしろい街だね! マリア、いろいろと見て回りたいな!」

 マリアがあたりをキョロキョロと見回しながらそう言う。

「そうですね……。私もここに来るのは初めてです。話には聞いたことはありますが……」

 サリエも物珍しそうな目で街を見ている。

 リバーサイドは、街の中を小さな河川が縦横無尽に走っているのが特徴的だ。
近くに流れる大きな川から流れを取り込んでいるのだろう。
その取り込んだ流れをうまく物流などに活かしているのだと思われる。

 宿屋を見つけ、馬車と馬を預ける。
街の中の移動は、徒歩のほうが小回りがきくのだ。

「さっそくソーマ騎士爵のところに向かわれますか?」

 ミティがそう言う。
俺たちがこの街を訪れたのは、ファイアードラゴンの再封印の件についてソーマに助力を取り付けるためだ。

「それとも、冒険者ギルドに顔を出しておく? ボクたちCランクパーティは、所在をできる限り冒険者ギルドに明かしておく努力義務があるし」

 アイリスがそう言う。
冒険者ギルドは、一定以上に優秀な冒険者の所在は把握しておきたいという意向がある。
努力義務なので、そこまで厳格には求められないが。

「ふふん。それもいいけれど……。私はお腹が空いたわ」

 ユナが自身のお腹をさすりながらそう言う。

「そうだね。私も腹ごしらえがしたいかな。この街の名物料理を食べてみたい」

 モニカがそう言う。
彼女は料理人として、いろいろな街の名物料理を堪能して吸収することに貪欲だ。

「ああ。確かに、俺もちょうど腹が減ってきたよ。まずはどこかで食事にしようか。……リーゼロッテさん、どこかオススメのところはありますか?」
「ええと。わたくしも、あまりこの街には詳しくないのです。申し訳ありませんが……」

 俺の問いに、リーゼロッテが困り顔でそう言う。
ラスターレイン伯爵家とソーマ騎士爵家は親密な関係にあるそうだが、リーゼロッテ自身はこの街に詳しくないようだ。

「くんくん……。こ、こっちのほうから、何やらおいしそうな香りが漂っています。いきましょう!」

 ニムが鼻を鳴らしてそう言う。
彼女は犬獣人として嗅覚に優れている。
索敵能力だけではなく、索飯能力にも優れているといったところか。

 俺たちは、ニムの先導に従って街中を進み始めた。


●●●


「おいしいですわ~」

 リーゼロッテが料理を満足気に頬張りながらそう言う。
今は、俺たちミリオンズとリーゼロッテで食事をしているところだ。
もちろん、コーバッツたちも別テーブルで食事を取っている。

 ニムが嗅ぎ取ったおいしそうな香りの飯屋で出された料理は、実際においしかった。

「た、確かに……。これほど新鮮な魚が大漁にあるなんて。味付けもいい」

 モニカがそう言う。
ラーグの街の近くにもそこそこ大きな河川はある。
そこで多少の川魚は獲れるし、氷結系の水魔法や空間魔法などを利用して遠方から仕入れた魚も少しはある。

 だが、やはり大きな河川に隣接し、かつ海も近いこの街で出される魚の新鮮さは別格だ。
それに伴い、味付けなども発達しているのだろう。

「お魚! お魚!」
「わ、わたしも魚は嫌いではありません。もぐもぐ」

 マリアとニムもご満悦である。
そんな感じで、俺たちおいしい料理を食べ進める。
そして、しばらくして。

「きゃああぁっ! お、おやめください……」

 女性の悲鳴だ。
この飯屋の中の、少し奥の席あたりからだ。
俺はそちらに視線を向ける。
1人のイケメンが、店員の女性に言い寄っているようだ。

「なぜ嫌がるんだい? 私のもとへ来れば、何不自由ない生活を約束しようではないか。趣味として、時おりここで働くのを許可してやってもいいんだよ?」

 イケメンがそう言って、女性店員の顎をクイッとする。
女性は顔を真っ赤にして、言葉が出ないようだ。
そんな彼女を見て、イケメンが言葉を続ける。

「なに、結論は急がなくていいさ。……ミサ! この者を第九夫人として迎え入れる準備をしておいてくれ」
「承知しました。マイロード」

 イケメンが女性店員を解放し、店の出口方向に向かう。
彼がミサと呼んだ女性は、付き人か何かだろうか。
年齢は20代前半くらいで、結構かわいい。

 俺がそんなことを考えつつ彼らの様子を観察していると、彼らもこちらに気づいたようだ。

「……おや? そちらにいるのは、リーゼロッテ=ラスターレイン様と、サリエ=ハルク嬢ではないか。ようこそ、我が領へ」

 彼がそうあいさつをする。
リーゼロッテやサリエと顔見知りか。
だれだ?

「ご無沙汰しております。シュタイン=ソーマ騎士爵殿」
「お久しぶりでございます」

 リーゼロッテとサリエがそうあいさつを返す。
なるほど。
このイケメンが、ソーマ騎士爵だったか。

「それにしても、お二人はどうしてここに? まさか、あの件を考えていただけたのかい?」

 ソーマが鼻の下を伸ばしてそう言う。
かわいく美しいリーゼロッテとサリエに、デレデレしている。
やはり、女好きという噂は本当だったか。

 イケメンが台無しだぞ。
ミティやモニカも、微妙なものを見る目をしている。
アイリスは、何かを見定めるような目で見ている。

「あの件は、ラスターレイン伯爵家として正式にお断りしたはずです」
「私も同じく。ハルク男爵家としてお断りのお手紙を出させていただきました」

 リーゼロッテとサリエが毅然とした態度でそう言う。

「ふふ。そうつれないことを言わないでおくれ。今なら、第十夫人と第十一夫人として迎えてあげるよ?」

 ソーマがそう言って、なおも食い下がる。
彼女たちは困った顔をしている。

「リーゼロッテさん、サリエ。あの件って何です?」

 俺は助け船を出しがてら、そう質問をする。

「ええと。彼がわたくしに結婚を申し込んできたことがあるのです」
「私にもです。しかも、当時の時点で第六夫人だなんて。いくら男爵家の次女だからって、馬鹿にしています」

 リーゼロッテとサリエがそう答える。
確かに、第六夫人はさすがにな。
今はさらに悪化して、第十夫人と第十一夫人とか言っているし。

 ……ん?
待てよ……。

 俺は、ミティ、アイリス、モニカと結婚済みだ。
そしてニムとも婚約しており、ユナともそういう話が出ている。
今後俺と結婚しようという人が現れたら、第六夫人ということになってしまうな。

 リーゼロッテとサリエは、それぞれ魅力的な女性だ。
彼女たちに通常の加護が付いてパーティメンバーとしてやっていけそうだと確信したら、結婚もありかなと勝手に思っていたが。

 冷静に考えれば、第六夫人なんて嫌だよな。
愛情だけでなく、自身や子どもに与えられる金銭や待遇などもその分減じられてしまうリスクがあるわけだし。
それなら、他にいい男を見つけて一夫一妻として生きていったほうが堅実だ。

 まあ、俺との件はとりあえず置いておこう。
今は彼女たちとソーマとの件だ。

「ソーマ騎士爵殿。彼女たちにその気はないようだぞ。しつこく言い寄るのは、男としてみっともない」

 俺はビシッとそう言う。

「なんだ、君は? 使用人風情が、貴族に口出しするものじゃないぞ」

 ソーマがこちらを見て、そう言う。
俺はリーゼロッテやサリエの付き人と思われているのか。
確かに、貴族用の礼装などを着ているわけではない。
とはいえ、ミティがつくってくれた一級品の装備を着ているんだけどな。

「申し遅れた。俺はタカシ=ハイブリッジだ。先日、陛下より騎士爵を賜った」
「ほう。君が、噂のハイブリッジ騎士爵か。まぐれで功績を上げたようだが、それで私と対等になったつもりかね? 分をわきまえたまえ」

 ソーマがそう言う。
同じ騎士爵とはいえ、彼のほうが数年先輩だ。
さらに、冒険者としても彼のほうが上である。
俺のギルド貢献値8000万ガルに対して、彼のギルド貢献値は1億6000万ガルだからな。

「そうはいかん。困っている女性を、騎士として見過ごすわけにはいかないのでな。貴様のようなエセ騎士とは違うのだよ」

 俺はキメ顔でそう言う。

「な、なんだとぉ!? 言ってくれるじゃないか。こうなれば、決闘だ! 勝ったほうが彼女たちを口説く権利を得る。それでどうだ!」

 ソーマが顔を真っ赤にしてそう宣言する。
ずいぶんと乗りやすい性格のようだ。

「タカシさん。ぎゃふんと言わせてやってくださいまし。……と言いたいところですが、彼の実力は本物です」
「そうですね……。辞退なさったほうがいいかもしれません」

 リーゼロッテとサリエが心配そうにそう言う。

「心配要りません。俺が勝ちます。万が一負けても、命まで取られるわけじゃありませんし……」

 俺が負けても、リーゼロッテとサリエが口説かれるだけだ。
別に無理やり結婚させられるわけではない。

 そもそも、彼女たちは貴族なので結婚の判断には当主の同意が必要となる。
俺とソーマがここで決闘して、その結果を受けてすぐにどうこうという話にはならない。
あくまで、口説く口実ができるだけである。

 負けても大きな問題はない。
しかし、やはり男としてここは勝ちたいところである。
気を引き締めることにしよう。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品