【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

294話 ラーグ街への道中 光の精霊石

 西の森の奥地でのブギー盗掘団の捕縛作戦から、数日が経過した。
盗掘団のアジトを引き払い、みんなでラーグの街に向けて西の森を移動中だ。

 大人数なので、行軍スピードは遅い。
とはいえ、戦力は十分に揃っている。
危険性はさほどない。

 俺とアイリスは、MPの残量を気にしつつ、時おり記憶喪失者に治療魔法をかけている。

「「……彼の者に安らかなる癒やしを。リカバリー」」
「お、おお! 思い出したぞ……! ありがとう、タカシさん、アイリスさん」
「いえいえ。お安いご用です」
「どういたしましてー」

 こんな感じで、記憶喪失者の治療は順調に進んでいる。
みんなそれぞれ、感謝してくれている。
やはり、いいことをしたら気持ちがいいな。

 ただし、このペースだと全員に治療魔法をかけるまでまだしばらくはかかる。
街に戻ってからも、定期的に治療魔法をかけていく必要がありそうだ。

「ナーティア。そこに段差があるぞ。気をつけろ」
「ええ。ありがとう、パームス」

 ニムの父パームスと、モニカの母ナーティア。
元は赤の他人だが、記憶を失っている数年間、ともにブギー盗掘団で過ごしてきた。
最初はもちろん下っ端だったが、あれよあれよという間に幹部にまでともに昇進したそうだ。

 同期入団ということもあって、採掘作業や魔物狩りで行動をともにすることが多かったらしい。
固い絆で結ばれているように見える。
それに、どことなくいい雰囲気も流れている。

 これはどうなんだ?
彼らの配偶者は、ラーグの街で待っているわけだが。
まあ、モニカの父ダリウスと、ニムの母マムとの間にも再婚の話はあったが。

 ダリウスとナーティア、パームスとマム。
それぞれが元の婚姻関係に戻って一件落着となるのだろうか。

 それとも、パームスとナーティア、ダリウスとマム。
それぞれが再婚して一件落着となるのだろうか。

 難しいところが。
俺には判断できない。

 もしかすると、修羅場が待っているかもな。
モニカとニムも、少し複雑そうな顔をしている。
まあ、なるようにしかならないだろう。
修羅場の仲裁は俺には無理だが、必要ならせめて金銭的な援助ぐらいはしよう。

 そんなことを考えつつ、ラーグの街へ向けて歩みを進めていく。
西の森の中を東に向けて移動中だ。

「タカシよ。お前もずいぶんと成長したみたいだなあ」
「くっくっく。だが、精神的にはまだまだ甘いぞ。今回の件も、油断しなければ何とかなったはずだ」

 ディッダとウェイクがそう声を掛けてくる。
モニカたちに聞いた話だと、彼らは俺たち先遣隊の救出隊に参加してくれたと聞いている。
確かな実力と落ち着いた行動で、下っ端戦闘員たちを抑えてくれていたらしい。

 彼らの冒険者ランクはDではあるが、C寄りのDだろう。
頼りになる人たちだ。

「ええ、精進します」

 確かに、今回の捕縛作戦では、俺の精神的な未熟さが浮き彫りになった。
うっかり鳴子の罠を作動させて、盗掘団に囲まれてしまった。
ナーティアたちとの交戦中に乱入してきたソフィアたちへの警戒が足りず、睡眠魔法の合同魔法の発動を許してしまった。

 また、他者へ過剰に威圧的な態度で接してしまった問題もある。
ラーグの街では、ソフィアにメチャクチャな絡み方をしてしまった。
その結果、盗掘団について有益な情報を得ることができなかった。
さらにブギー盗掘団との戦闘では、彼らを問答無用でボコボコにしてオリハルコンや蒼穹の水晶を強奪した。

 ちなみにこれらのお宝については、見つけて強奪した人の所有物……とはならないらしい。
残念だ。
冒険者ギルド、それに国や街の機関において、然るべき処理が行われると聞いている。

 それらの接収した物品は、マリーに渡しておいた。
今は彼女のアイテムバッグに収納されている。

 街でのソフィアとの件と、盗掘団の捕縛作戦。
いずれも、俺がもう少し柔らかい態度で接していれば、また別の道もあったかもしれない。
まあ、闇の瘴気の影響下だったから仕方がないと言えば仕方がないが。

 闇の瘴気に対して、何らかの対策が必要だな。
第一に考えられるのは、俺やアイリスの聖魔法により、パーティメンバーを定期的に浄化しておくことだ。
それ以外の対策は、何か考えられるだろうか。

 聖魔法を使えるソフィアに聞いてみよう。

「ソフィアさん。今回は、俺たちがご迷惑をおかけしました。改めて謝罪します」
「ん? いいよいいよー。僕たちは気にしてないから。それに、そんなに丁寧な口調はいらないよ」

 ソフィアが本当に気にしていないようだ。
器が大きい。

 バルダインの侵攻をほぼ不問にしたサザリアナ王国。
カトレアの策略を許したミティ。
ディルム子爵の誘拐を受け入れたシトニ。
みんな、器が大きいな。
俺が彼女たちの立場なら、容易には許せないかもしれない。
俺も彼女たちの器の大きさを見習っていきたいところだ。

「そうか? ありがとう。それでだな。今後の闇の瘴気への対策を考えているのだが、何かいい対策はあるだろうか? 俺とアイリスは聖魔法を使えるから、定期的にパーティメンバーを浄化しておこうとは思っているが」
「んー。それも悪くないね。今回みたいに、少しずつ闇の瘴気が蓄積された結果の暴走は防げると思うよ」

 今回の俺たちへの闇の瘴気は、今までのものが蓄積された結果である可能性が高いだろう。
バルダイン、カトレア、ディルム子爵。
それぞれに聖魔法をかけた後は、タイミングを見て自分たちにも聖魔法をかけておくべきだった

「でも、聖魔法を使えるタカシさんやアイリスさんが同時期に濃く汚染されてしまうと、どうしようもないかもねー
。闇の瘴気に汚染されていると、聖魔法に対する忌避感が少しずつ強くなってしまうから」

 なるほど。
俺かアイリスの一方が汚染されてしまっただけなら、もう片方が浄化できる。
しかし、2人ともが同時に濃く汚染されてしまうと、詰みの状態になってしまう可能性がある。
ソフィアやエドワード司祭のような聖魔法の使い手が俺たちの異変に気づいてくれるのを待つしかなくなる。

「何かいい案はないか?」
「うーん。……それなら、これをあげようか。光の精霊石だよ。とっておきだけどね」

 ソフィアがそう言って、きれいな鉱石をアイテムバッグから取り出す。

「ソフィア!? それは、ミネア聖国の聖王猊下から賜った、貴重な精霊石だぞ!」

 光の乙女騎士団のパーティメンバーの1人がそう言う。
何やら大切なものであるようだ。

「いいんじゃないかな。そこらの人ならともかく、このタカシさんはこの光の精霊石を託すに足る人だと思うよ」
「確かに、それはそうかもしれないが……」

 ソフィアとパーティメンバーで問答が続く。

「それに、万が一彼がまた闇の瘴気に汚染されたら、被害は甚大になるかもしれない。彼の戦闘能力に太刀打ちできる人は、このあたりにはいないよ。今回はたまたま僕たちがいたからよかったけど」

 ソフィアがそう言う。
俺の戦闘能力は、ステータス操作の恩恵によりかなり強大になっている。
もはや、このあたりで俺に勝てる人はほとんどいないのではなかろうか。

 今までに出会った人物で、特に強い人を整理してみよう。
Bランク冒険者のアドルフの兄貴。
同じくBランク冒険者のレオさん。
ギルド貢献値5200万ガルのウィリアム。
ギルド貢献値2500万ガルのマクセル。
ギルド貢献値2200万ガルのアルカ。
ハガ王国国王のバルダイン。
武闘神官として経験豊富なエドワード司祭。
ディルム子爵領のアカツキ総隊長。
このあたりか。

 アドルフの兄貴は、”肉体兵器”の二つ名を持つ。
レオさんは、”磁双鋼剣”の二つ名を持つ。
おそらくだが、特別表彰もされているだろう。
俺が知らないだけだ。
額は検討もつかないが、1億以上でもおかしくはない。

 ウィリアム、マクセル、アルカは、俺と同じ冒険者だし、ランクやギルド貢献値も似たようなものだ。
俺と同格と言っていいだろう。

 バルダインは、当時Dランクだった俺に敗北したことがある。
ただし、足をもともと悪くしていたという条件があった。
今は、俺の治療魔法により彼の足は完治している。
かつて”疾風”という二つ名で呼ばれていた強大な戦闘能力を取り戻していることだろう。

 エドワード司祭は、4か月ほど前の時点でのミリオンズに1対5で勝利したことがある。
武闘神官として各地を巡ってきた経験もあり、実力は確かだ。

 アカツキ総隊長は、2か月ほど前の時点でのミリオンズに1対6で敗北したことがある。
まあ、さすがに1対6はな。
殺傷能力の高い技をあえて使わずにいた様子もあったし、奥の手もまだありそうだった。

 俺が闇の瘴気によって暴走してしまったとして、止められるのはこのあたりの人物に限られる。
あとは、もちろんミリオンズのみんなだ。
彼女たちも戦闘能力は十分に高い。

 逆に言えば、俺だけでなくミリオンズ全体が闇の瘴気に汚染されてしまうと、それを止められる人はほぼいないと言っていい。
さきほど挙げた人たちが複数名で戦う必要があるだろう。
あるいは、遠くの地から強者が派遣されるかだ。

 今回のソフィアたちの睡眠魔法のような搦め手も有効だ。
しかし、今回の件で俺も学習した。
同じような搦め手は簡単には決まらないだろう。

 そう考えると、俺たちが闇の瘴気に汚染されないための対策案は、かなり重要性が高いと言っていい。
ソフィアが貴重な光の精霊石とやらを俺に託そうとしているのも、うなずける話だ。
いや、俺が気をつければいい話なのかもしれないが、気をつけるだけではどうにもならないのが闇の瘴気なのだ。

「うーん。ソフィアがそう言うならいいけど……」
「決まりだね。……じゃあ、タカシさん。この光の精霊石をあげるよ。闇の瘴気を寄せ付けない効力がある」

 ソフィアが気軽な感じで、光の精霊石を俺に渡してくる。

「本当にいいのか? 何やら貴重なものなのだろう?」
「うん。僕たち4人の分は、別にあるから。でも、大切に使ってね。金貨数百枚はする代物だよ」
「す、数百枚!? それは、かなりのプレッシャーだな……」

 日本円にして、数百万円以上か。
それを持ち歩くとなると、かなり精神的な負担がある。

「あ、別に持ち歩く必要はないよ。タカシさんは空間魔法も使えるんだよね? アイテムボックスに入れておけば、効力はあるそうだから。僕たちもみんな、アイテムバッグやアイテムボックスに収納しているし」

 ソフィアがそう言う。
彼女たち4人のうち、2人はアイテムバッグを持ち歩いている。
残りの2人は、初級の空間魔法を使えるそうだ。

「そうか。遠慮なくいただこう。代金のほうは……」
「お金はいらないよ。ただし……」
「ただし?」

 金貨数百枚の支払いを免除するとは。
ソフィアは、お金には困っていないのだろうか。
特別表彰者だし、生活に困ることはないだろう。
金貨数百枚の代物をポンと渡せるほどでもないはずだが。

「これからも、世のため人のために活動してね。闇の瘴気に汚染される前までのタカシさんは、そういう人だったと聞いているよ」
「なんだ、そんなことか。もちろん、そうしていくつもりだ」

 今回のように、やたらと人に対して高圧的に接していくことは、もうないだろう。
忠義度を稼いでいくためにも、いろんな人のために優しく接していくのがいい。

「うん。よろしくね。期待しているよ」

 ソフィアがそう言う。
金貨数百枚はする光の精霊石をもらった恩に報いるためにも、これからはしっかりと活動していかないとな。

 そんなことを考えつつ、俺たちはラーグの街へと歩みを進めていく。
これで闇の瘴気への対策も万全になったし、もう何も怖くない。

 ……と、さすがに油断し過ぎていたのだろうか。
少しして、思わぬ難敵と遭遇することになる。

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