【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

218話 ハルクの娘 サリエの治療

 ラーグの街を出発して数日が経過した。

「さあ、見えてきたぞ。あれが儂の治める街だ」

「なるほど。あの街が……」

 なかなか立派な街だ。
馬車に乗ったまま門を通り、そのまま街中を進んでいく。
大きな邸宅の前で馬車が止まった。

「これが儂の屋敷だ。さあ、申し訳ないがさっそく娘を看てくれないか」

「わかりました」

 ハルクの案内のもと、俺とアイリスで屋敷内を歩いていく。
ミティ、モニカ、ニム、ユナには応接室で待機してもらう。
まあ、あまり大人数で病人の部屋に押しかけるのもな。

 歩みを進めていく。
とある部屋の前まで来た。
おそらく、ここが彼の娘の部屋だろう。

 部屋の中に入る。
部屋の中では、ベッドの上で寝ている人がいた。
傍らには、メイドのような人が控えている。

 ハルクが口を開く。

「サリエ。帰ってきたぞ。具合はどうだ?」

「はあ、はあ……」

 ベッドで寝ているのは若い女性だ。
彼女がハルクの娘か。
苦しそうにしている。

「つらそうだな。だが、もう安心だ。優秀な治療魔法士さんを連れてきたぞ」

「はあ、はあ……。ありがとうございます。お父様……」

 サリエがそう言う。
ハルクがこちらを向く。

「サリエは、数年前に病を発症してな。とは言っても、体調の良い日には庭を散歩するぐらいの元気はあったのだ」

 ハルクがそう言う。
ひと呼吸置いて、言葉を続ける。

「しかし、ここ1年ほどで、急激に病状が体調が悪化してきた。特にこの1か月ほどは、ほぼベッドから動くことができていない」

 ベッドから動けないレベルの病か。
ダリウスやマムと同じか、それ以上の重病と言っていいだろう。

「わかりました。さっそく、治療魔法を試してみます」

「よろしく頼む」

 俺は治療魔法の詠唱を開始する。

「……彼の者に安らかなる癒やしを。リカバリー」

 癒やしの光がサリエを覆う。
彼女の息が少し落ち着いてくる。

「はあ、はあ……。……少し楽になりましたわ。ありがとうございます。治療魔法士様」

 サリエがそう言う。
確かに、少しは病状が改善したようだ。

「まだだよ。まだ完治はしていないみたいだ」

「そうだな。あと何度か治療魔法をかけてみよう」

 アイリスの言葉に、俺はそう答える。

「うん。それもいいけど、ボクとタカシで合同魔法を発動しよう。今までにも練習してきたでしょ」

「ああ、合同魔法か。そうだな。それが良さそうだな」

 合同魔法。
複数人で力を合わせて、魔法の威力や効力を増幅させる技術だ。
ゾルフ砦の防衛戦では、リーゼロッテ、リルクヴィスト、コーバッツの3人で水魔法の合同魔法を発動していた。
また、ゴースト戦やヘルザム戦では、俺とアイリスの2人で聖魔法の合同魔法を発動したこともある。

「じゃあ、いくぞ。アイリス」

「うん。いつも通りに息を合わせよう」

 アイリスとともに、治療魔法の詠唱を開始する。
合同魔法は、発動者同士の波長を合わせる必要がある。
集中して、詠唱を続ける。

「「……彼の者に安らかなる癒やしを。リカバリー」」

 大きな癒やしの光がサリエを覆う。
彼女の息がさらに落ち着いてくる。
顔色も、こころなしか良くなってきているように見える。

「……あら? 苦しみがなくなってきましたわ」

「おお! サリエ!」

「お父様!」

 ハルクとサリエが抱きしめあう。
無事に治療できたようだ。
2人で抱き合って喜びを噛みしめている。
しばらくして、彼らがこちらに向き直る。

「タカシ殿。本当にありがとう」

「ありがとうございます。治療魔法士様がた」

 ハルクとサリエがそう言って、頭を下げる。
サリエの俺に対する視線が少し熱い気がする。

「いえ。体調は改善されたようですが、体力が戻るまでは時間がかかるでしょう。しばらくは慎重に様子を見てください」

 俺はそう言う。

「わかった」

「気をつけますわ」

「では……。今日のところはこれで失礼します。経過観察も必要ですし、しばらくはこの街に滞在していますので」

 俺はそう言って、立ち去ろうとする。

「待ち給え。せっかくだし、我が屋敷に泊まっていくといい。もちろん、君のパーティメンバーのお嬢さんがたもいっしょだ」

 ハルクがそう言う。

「えっ。この屋敷にですか?」

「いいんじゃないかな。もしサリエさんに何かあれば、すぐに対応できたほうがいいだろうし」

 アイリスがそう言う。

「それもそうか。……わかりました。お言葉に甘えて、お邪魔させていただきます」

 俺はハルクにそう返答する。

「おお。では、案内させましょう! おおい! セルバス!」

「お呼びでしょうか?」

 ハルクの呼びかけに、1人の老人が答える。
執事のような雰囲気の人だ。

「タカシ殿たちを客室へ案内してくれ。くれぐれも失礼のないようにな」

「ははっ。承知しました。……タカシ様。こちらへ」

 セルバスの案内に従い、屋敷の中を歩いていく。
俺の自宅もなかなかの豪邸だが、この屋敷はさらに広い。
やはり町長で貴族ともなれば、いいところに住んでいるな。

 途中でミティたちとも合流した。
俺、ミティ、アイリス、モニカ、ニム、ユナ。
セルバスの案内のもと、屋敷内を進んでいく。

「こちらでございます。どうぞ我が家のようにくつろいでくださいませ」

 セルバスに通された部屋は、大きな客室だった。
部屋の中に、さらに小部屋がいくつかある。
ベッドは全部で6つ以上ある。
俺たち全員でこの部屋に泊まることができる。

「いい部屋ですね。ありがとうございます」

「いえ。お客様に対して当然のおもてなしでございます。……では、私はこれで失礼致します。定期的に様子をうかがいに参りますが、何かご用向があれば、そちらのベルにて連絡をお願いします」

 セルバスが一礼し、去っていった。

「きゃっほー!」

 アイリスがそう叫び、ベッドにダイブする。
ニムもそれに続く。

「ふかふかのベッドだー!」

「や、やわらかいです。いい気持ちです」

 アイリスとニムがそう言う。
貴族様の屋敷に泊まることになったというのに、緊張感の欠片もない。
まあ俺も特に緊張などはしていないが。
なんだか旅行で、いい旅館に泊まることになったような気分だ。

「タカシ様! 部屋に備え付けの浴室もありますよ。それも結構大きいです」

 ミティが浴室をのぞき、そう言う。
俺も見てみる。
確かに、かなり広い。
ラーグの街の自宅の風呂や、ガロル村の秘湯にも引けを取らない広さだ。

「おっ。いい浴槽だな」

「ふふん。悪くないわね。魔石でお湯をはれるみたいね」

 俺とユナがそう言う。

「後でみんなで入りましょう!」

「そうだな! ぜひみんなで入ろう!」

 ミティの提案に、俺は二つ返事でそう答える。
みんなでお風呂ふたたび。
ガロル村の温泉では、俺は目隠しをしていた。
アイリスが特に恥ずかしがっていたからな。

 今では、俺とアイリスは結婚した。
目隠しなしでの入浴も、許してもらえるかもしれない。
いよいよ、本当の意味での男のロマンが成し遂げられるというわけだ。

「いいけど。あんまりジロジロは見ないでね」

 アイリスからの許可が出た。
夜の入浴が楽しみだ。
そう思っていたが。

「えっ。みんなで入るの? 私の聞き間違いかしら。あなたたちはみんな、そういう仲なの?」

 ユナがそう言う。
そうだ。
彼女が居たのだった。
事情を説明しないと。

「ええと。俺とミティ、それに俺とアイリスは結婚している。そういう仲だ」

「ふふん。まさか、2人と結婚しているなんてね。あとの2人は?」

「モニカとニムとは結婚していないぞ」

「でも、私も考えてはいるけどね」

「わ、わたしもです!」

 モニカとニムがそう言う。

「ふふん。そうだったのね。これはさすがに予想外だわ。……計画を練り直す必要があるかしら。いや、逆にこれはこれで……。4人も妻を娶ろうとしているほどの男という味方もできるし……」

 ユナが何やらつぶやいている。
一夫多妻が認めれれているこの国でも、やはりあまり外聞はよくないのかもしれない。

 ユナの心象を悪くしたかもしれない。
そう思って彼女の忠義度を確認してみたが、むしろ少し上がっていた。
30半ばになっている。

 なんでだ?
女性にモテていること自体が、一種のステータスみたいになっているのだろうか。
正のスパイラルだ。

 そんなことを考えつつ、ハルク邸の客室でゆっくりとくつろぐ。
夕食はなかなか豪勢なものが振る舞われた。
その後、お風呂でちょっとしたドタバタもあったのだが、それはまた今度の話としよう。

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