【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

172話 相撲大会よ再び はぁどすこいどすこい

 今日は特に用事もない。
冒険者活動も休みとしている。
みんなでダラダラと過ごそう。

 ガロル村の宿屋でダラダラとする。
しばらくして、来客があった。

「ミティさんはいますか?」

 カトレアの声だ。
ミティが部屋の扉を開ける。

「カトレアさん。どうしましたか?」

 ミティがそう言う。
カトレアに対して、特に隔意は持っていなさそうだ。

 ミティが奴隷落ちしたのはカトレアのせいだ。
まあカトレアも霧蛇竜ヘルザムの犠牲者ではあるが。
普通なら、なかなか気持ちに整理がつかないところだろう。
ミティの器は大きい。

「改めて、ミティさんに謝りたくて……」

 カトレアが思いつめた顔でそう言う。
ヘルザムを浄化した翌日に、彼女と村長によるミティたちへの謝罪は既に行われている。
それだけではまだ気持ちの整理ができず、改めて謝罪に来たというところか。
彼女が言葉を続ける。

「本当にごめんなさい。ミティさん。謝って済むことではありませんが……」

「いえ。魔物の影響なら仕方ありません」

「でも……」

 謝るカトレアと、構わないと言うミティ。
第三者から見ると、もう問題は終わっているようにも思える。
しかし、カトレア本人は自分がしたことへの罪悪感が消せないのだろう。

 気まずい雰囲気が流れる。
そこに、新たな客が現れた。
ダディだ。

「おーい、ミティ! おもしろい知らせがあるぞ! ……って、カトレアちゃんもいるのか」

「お邪魔しています」

「どうしたの? お父さん」

 カトレアとミティがそう言う。

「これを見ろ!」

 ダディが1枚の紙を出す。
ミティが内容に目を通す。

「えーと。淑女相撲大会、参加者求む……?」

「ああ! 例年は、5歳以下のちびっこ相撲大会と、年齢無制限の相撲大会しかなかったんだけどな。今年は、女性限定の相撲大会も開催されることになったんだ! ミティ、参加してみたらどうだ? せっかくだしカトレアちゃんも」

 ちびっこ相撲大会。
10年以上前にミティとカトレアが優勝争いをした大会だ。
それとは別に、新たな枠組みでの大会が設けられたわけか。

「相撲かー。さすがにちょっと恥ずかしいな。タカシ様のお嫁さんになるわけだし、あんまり他の人にお尻は見せたくないな」

「そ、そうですわね。私もちょっと……」

 ミティとカトレアが難色を示す。

「そのあたりはもちろん配慮されている! 服装は露出が少ないものが用意されているらしいぞ!」

 ダディがそう言う。

「そうなの? それなら出てもいいけど。カトレアさんも出ますか?」

「そうですわね。子どもの頃を思い出して、出てみるのも悪くありませんわね」

 ミティとカトレアがそう言う。
出場の方向性になりそうだ。


●●●


 数日が経過した。
今日は淑女相撲大会の日だ。

 相撲の服装は、確かにダディの言うように露出がさほど多くないものだった。
下はスパッツのようなズボンの上にまわし。
上は動きやすい普段着に近いもの。
露出は多くないが、これはこれでありだな!

「では、タカシ様。がんばってきますね。上位入賞者には賞品もあるそうなので」

「ああ。応援しているよ。無理はしないようにな」

 ミティが土俵に向かう。
相手は30歳くらいの女性のドワーフだ。

 ミティと相手が、土俵上でにらみ合う。

「はっけよい……。のこった!」

 審判の人が開始の合図をする。
確か、日本の相撲での正式名は行司だったか。

 ミティと相手が組み合う。
……この試合はミティの勝ちだろう。
ミティの豪腕に一度捕まってしまうと、簡単には抜け出せないからな。
俺でも抜け出せない。
実証済みだ。

「せえい!」

 ミティが相手のまわしを掴んだまま、勢いよく投げ飛ばす。

「そこまで! 勝者ミティ選手!」

 行司がミティの勝ちを宣言する。
やはり、ステータス操作の恩恵を受けているミティの前に、敵はない。


 その後もミティは順調に勝ち進んでいった。
次がいよいよ決勝戦だ。

 決勝の対戦相手はカトレア。
ニムやセリナも出場していたが、ミティやカトレアによって撃破されている。
それにしても、冒険者でもないカトレアが決勝まで残るとは。
少し予想外だ。

 土俵の上で、2人がにらみ合う。

「いきますよ。カトレアさん」

「はい。ミティさん」

 土俵に静寂が訪れる。

「はっけよい……。のこった!」

 行司が開始の合図をする。
2人が組み合う。
……かに思われたが、そうはならなかった。

 カトレアが華麗にジャンプしてミティの不意を突く。
これは何という技だったか。
八艘飛びか。
厳密には少し違うかもしれないが。

「はあ! どすこいどすこい!」

 カトレアが張り手を繰り出す。
彼女はミティの怪力を警戒しているようだ。
まあ今日の試合だけでも何試合か観てきているだろうしな。
ミティとまともに組み合わないようにするのは、当然の判断だ。

「ぬ。ぬぬぬっ」

 ミティが攻めあぐねている。
彼女は辛抱強く機を待つ。

 カトレアの怒涛のラッシュ。
しかし、いつまでもは体力が続かない。
カトレアの攻め手が一瞬緩んだ。

「そこ!」

 ミティがその隙を逃さず、すかさずカトレアのまわしを掴む。

「し、しまりました!」

 謎の丁寧語でカトレアが焦るが、もう遅い。
ミティの豪力からは逃れられない。

「てえぃっ!」

 ミティが力強くカトレアを投げ飛ばす。
カトレアの場外だ。

「そこまで! 勝者ミティ選手!」

 行司がミティの勝ちを宣言する。
終わってみれば、ミティの順当勝ちだ。
本人の力量の高さに加え、ステータス操作の恩恵もたくさん受けているしな。

 とはいえ、カトレアの力量もなかなかだった。
彼女が仕掛けてきた変化に、ミティはよく辛抱強く機を待ったものだ。

 ミティがカトレアに近寄っていく。

「いい勝負でした。昔を思い出しました」

 ミティがそう言って、手を差し出す。

「私も、昔を思い出しましたわ。私がミティさんと……。いえ、ミティちゃんと仲良くしていたころの。ちびっこ相撲大会でも、こんなふうに負けたね」

 カトレアがミティの手を取りながら、そう言う。

「そうでしたね。カトレアさん。……いえ、カトレアちゃん」

「すっきりしたよ。私は腕力ではミティちゃんには敵わない。それに、鍛治でも敵わない」

 カトレアが晴れやかな顔でそう言う。

「いや。そんなことはないよ……」

「取り繕う必要なんてない。でも、私にしかできないこともきっとあるはず。旅に出て、いろいろと見識を広めてみることにする」

「そう……なんだ。またどこかで会うこともあるかもね。楽しみにしているよ」

 ミティとカトレア。
霧蛇竜ヘルザムによって彼女たちの関係は歪められてしまった。

 今回の相撲大会をきっかけに、彼女たちの関係は無事に修復されつつあるようだ。
お互いの口調も崩れ始めている。
昔のような仲良しに戻れる日も、遠くないかもしれない。

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