【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

164話 セイクリッドチェーンとライトニングブラスト 実践

 馬車の護衛をニムに任せ、ゴブリンのところへ向かう。
俺、ミティ、アイリス、モニカの4人だ。

 5体のゴブリンと対峙する。
奴らもこちらに気づき、警戒の態勢をとる。

 アイリスが聖魔法の詠唱を開始する。

「……聖なる鎖よ。敵を縛り、捕らえよ。セイクリッドチェーン!」

 銀色に光り輝く鎖が現れ、1体のゴブリンが縛り上げられる。

「ぎ、ぎぃぃ!」

 ゴブリンがうめき声を上げる。
縛られたゴブリンは、これで戦闘不能となった。

 しかし、ゴブリンはあと4体残っている。
奴らがこちらに駆け寄ってくる。

 モニカが雷魔法の詠唱を開始する。

「……我が敵を撃て! ライトニングブラスト!」

 モニカの手のひらから電撃が放たれる。
電撃がゴブリンを貫く。

 こちらに駆け寄ってきていた4体と、セイクリッドチェーンで縛り上げられていた1体。
まとめて大ダメージを与え、討伐した。
これで戦闘終了だ。

「なるほど。両方とも強力な魔法だな」

 俺はそう言う。

 ゴブリンの死体に近づき、確認する。
セイクリッドチェーンは、発動後には無に還るようだ。
もう残っていない。
これを利用しての金属の生産はできなさそうだ。
ゴブリンの死体をアイテムルームに収納する。

「そうだね。ただ、さっきも言っていたけど、ボクのセイクリッドチェーンは普段はあまり使わないかもね」

 確かに。
拘束するだけの魔法は、使いどころに欠ける。
今回のようにゴブリン程度が相手なら、普通の攻撃魔法を使ったほうが手っ取り早い。
しかし、セイクリッドチェーンにはまた別の使い道がある。

「その件だが。セイクリッドチェーンを、俺に放ってみてもらえないか?」

「え? タカシにはそういう趣味が?」

 アイリスがドン引きした顔でそう言う。

「おっしゃっていただければ、私がさせていただきましたのに」

 ミティがそう言う。

「ううん。ボク、がんばるよ。タカシがどんな趣味でも受け入れる。縛るほうでも、縛られるほうでも」

 アイリスが覚悟を決めた顔をして、そう言う。

「いや。待て待て。何か誤解がある」

 俺は慌ててそう言う。
かつてのロリコン疑惑に加えて、新たにSM好き疑惑が浮上してしまった。
俺に対する評価が変な方向に突っ走っている気がする。

「縛る力がどの程度なのか、体験しておこうと思っただけだ」

 俺はそう弁解する。

「ああ。そういうことね」

 アイリスがそう言う。

「盗賊などを縛って無力化したと思って油断したところに、反撃されたりしたらマズいからな」

 縛る力によっては、一度縛った盗賊が拘束を解いてしまう可能性がある。
俺の言葉に、アイリスたちは納得してくれたようだ。

 アイリスが聖魔法の詠唱を始める。

「……聖なる鎖よ。敵を縛り、捕らえよ。セイクリッドチェーン!」

「ぬ。うおおっ!?」

 銀色に光り輝く鎖が現れ、俺を縛る。
これは。

「なるほど。結構縛る力が強いな。……ふんっ!」

 俺は、力を入れて拘束を解こうとする。
しかし、びくともしない。
俺の力では無理そうだ。

 俺は、腕力強化レベル1と肉体強化レベル3を取得済みだ。
一般人よりもはるかに力がある。

 そんな俺でもセイクリッドチェーンの拘束を解くことは難しい。
となると、よほど力自慢の犯罪者でもない限り、拘束を解くことはできないだろう。
リトルベアあたりを拘束できるかは微妙なところだが。

 アイリスが魔法を解除し、俺の拘束を解く。
続いて、ミティとモニカへも試してもらうことになった。

 銀色の鎖が2人を縛る。

「やあんっ」

「んんっ」

 ミティとモニカが色っぽい声をあげる。
これは……。
なかなか扇情的な光景だ。
これはこれでありだな!

 モニカは、俺と同じく、拘束を解くことはできないようだ。
しかし、ミティは。

「ぬぬぬ……。むんっ!」

 ミティが掛け声とともに、力を込める。
銀色の鎖が砕け散った。
砕け散った鎖は、無に還った。

「ええ……。セイクリッドチェーンは、そんなに簡単に解けるものじゃないはずなんだけどな……」

 アイリスがドン引きしている。
ステータス操作により魔法を取得した際には、魔法のイメージが頭に流れ込んでくる。
アイリスの頭の中には、俺たち説明してくれたこと以上の詳細なイメージがあるのだろう。
そのイメージを、ミティの豪腕が上回ったというところか。

 アイリスがモニカの拘束を解く。
何か考え込んでいる。

「2人相手の同時発動だから、出力が控えめだったのかな。それとも、ミティが善人だから……?」

 アイリスが何やらブツブツつぶやいている。

「善人相手だと、出力が下がるのか?」

「うん。そのはずだよ。取得してもらったときのイメージでもそうだったし、教会でもそう教わったこともあるし」

 なるほど。
セイクリッドチェーンがどういう魔法か、あらかじめ教会で概要を教えてもらっていたようだ。
そういえば、武闘や治療魔法についても、教会で教わることができると言っていたな。
聖ミリアリア統一教会は、信徒に対してしっかりと体系的な教育を施しているわけか。

 ……ん?
アイリスが、ジト目でこちらを見ている。

「タカシって、もしかして何かの罪を犯したことがある?」

「い、いや。そんなことはないと思うが」

 マズいぞ。
セイクリッドチェーンが俺によく効いていたからか。
ロリコン疑惑、SM好き疑惑に加えて、犯罪者疑惑まで浮上してしまった。

 冤罪だ。
俺はまっとうな善人だ。
少なくともこの世界に転移してからは罪を犯していないはず。

 日本にいたときに、俺がやった犯罪行為と言えば。
せいぜい、ポイ捨てや立ちションぐらいだ。
ダメじゃねえか。

 くっ。
こんなことなら、日本にいたときから善行を積んでおくんだった。
中学生、高校生のときぐらいまでは品行方正だったんだけどな。
自分で言うのも何だが。

「ま、まあいいよ。タカシが昔悪いことをしていたとしても、私を助けてくれた事実は変わらないから。私はタカシの味方だよ」

 モニカがそう言う。
ありがてえ、ありがてえ。

「ま、いいか。ボクは審問官でもないし、昔のことは気にしないでおくよ」

 アイリスがそう言う。
心を入れ替えて善人になるから、昔の罪は許してくれ。

「私は、ずっとタカシ様のそばにいます! 世界がタカシ様の敵に回ろうとも!」

 ミティがそう言う。
彼女は、本当にずっと俺の味方でいてくれそうな気がする。

 例えば、俺がチートの力に溺れて暴虐の限りを尽くすようになったとして。
ミティは、俺といっしょにどこまでも堕ちていってくれそうだ。
一方で、アイリスは早い段階で俺をたしなめてくれるだろう。
モニカはその中間ぐらいかな。
たぶんニムもそうだろう。
まあ、こういうのはどの方向性が最も良いか、明確な答えはない。

 また別の例え。
自分の子どもが無職の引きこもりになったとして。
早い段階で部屋から叩き出すのは1つの親の愛だ。
一方で、とことん甘やかしてずっと養うのも1つの親の愛だ。

 前者の手法を選択したとして、結果としてうまくいく可能性もあれば、追い詰められて自殺などしてしまう可能性もある。
後者の手法を選択したとして、結果としていずれ自発的に部屋を出てくる可能性もあれば、ずっと引きこもり続けてしまう可能性もある。
明確な最適解はない。

「ありがとう、みんな。心を入れ替えて善行に励むようにするよ」

 俺は気を取り直して、みんなにそう宣言する。
軽い気持ちで聖魔法の試し打ちをしてもらっただけなのに、思わぬ事態になってしまった。
アイリス以外の聖魔法の使い手には、今後注意する必要があるかもしれない。

 馬車に戻り、ニムたちと合流する。
特に大事はなかったようだ。
再びボフォイの街に向けて出発する。

 ボフォイの街にはもう少しで着くだろう。
馬車は順調に道を進んでいく。

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