１２２話　モニカとニムへの加護付与

　ラーグの街に戻ってきてから、もうすぐで１か月が経過する。
これまでに、モニカの脚を治療したり、ラビット亭の復旧を手伝ったり、資金援助をしたり、マヨネーズ作りでアドバイスをしたり、ニムの畑の復旧を手伝ったりした。
そして最後には、モニカの父ダリウスとニムの母マムの難病の治療を行った。

　我ながら、結構がんばったと思う。
もちろん、ミティとアイリスが率先して手伝ってくれたことも大きいし、モニカやニム自身のがんばりも大きい。

　みんなでがんばってきたかいがあった。
ラビット亭は無事に再開したし、ニムの畑も復旧したし、ダリウスやマムの体調も良好だ。

　さらに加えて、もう１つ良いニュースがある。
モニカとニムが加護付与の条件を満たしたのだ。
さっそく、２人には加護を付与しておいた。


　まずはモニカのステータスに目を通す。


レベル４、モニカ
種族：兎獣人
職業：ー
ランク：ー
ＨＰ：４２（３２＋１０）
ＭＰ：２０（１５＋５）
腕力：１７（１３＋４）
脚力：３３（２５＋８）
体力：２２（１７＋５）
器用：２０（１５＋５）
魔力：２７（２１＋６）

武器：ー
防具：布の服

残りスキルポイント２０
スキル：
格闘術レベル１
料理術レベル３

称号：
タカシの加護を受けし者


　モニカの初期レベルは４だ。
確か、ミティはレベル２で、アイリスはレベル１５、マリアはレベル１だった。

　アイリスは武闘神官を目指して幼少の頃から訓練していたらしい。
その結果として、最初から高レベルだったのだろう。

　モニカ、ミティ、マリアなど、特別な戦闘訓練を行っていない一般人は、レベル１～４あたりが多いと考えてよさそうだ。

　モニカのステータスを見ていく。
兎獣人だけあって、脚力が優れている。
あとは、魔力も高めか。

　スキルは格闘術レベル１と料理術レベル３だ。
格闘術レベル１は、初歩的な水準だ。
日本でいえば、趣味でちょっと習ったとか、部活動でかじったくらいの水準になるだろう。
現状のステータスとスキルだけでも、駆け出し冒険者としてギリギリやっていけそうな感じはする。

　料理術レベル３は、なかなかの水準だろう。
剣術や闘気術など他のスキルのレベル３の感覚として、数年以上の研鑽が必要な感覚がある。
モニカは幼少から店の手伝いをしていたそうだし、その結果としての料理術レベル３だと思われる。

　聴覚強化のスキルは取得されていないようだ。
兎獣人は聴覚に優れていると聞いたことがあるのだが。
スキル由来ではなく、種族としての生来の能力という扱いなのかな。
脚も強靭だったし。

　彼女には、ぜひパーティメンバーに加わって欲しいところだ。
ラビット亭が再開したばかりなので、本人は嫌がるかもしれない。
その場合は、もちろん無理に誘うつもりはない。
あくまで俺の希望だ。

　パーティ加入の誘いに対して、モニカがどういう反応をするかはわからない。
ダリウスが復帰しているし、ラビット亭を守るという意味ではモニカが離れても大きな問題はなさそうな気もするが。
このあたりは話をしてみるしかない。

　すでにチートの恩恵を受けまくっている俺とミティ。
チートの恩恵を受ける前から強い上に、チートの恩恵が加わったアイリス。
この俺たち３人と比較すると、モニカは最初はどうしても戦力的に少し劣ってしまうかもしれないが、気にするほどではないだろう。
モニカもレベリングしてスキルをガンガン取得していけば、すぐに追いつく。

　ミティも、最初は俺との戦力差が大きかったが、今では互角だ。
むしろ肉弾戦闘では彼女のほうが優れている。
ガルハード杯でも、俺は１回戦負けだったが、彼女は３回戦まで進出した。
代わりに、魔法関係の能力では俺のほうに分がある。
適材適所だ。

　仮にモニカがパーティメンバーに加わってもらえるとすれば、どのようなスキルを取得・強化する方針が良さそうか。
素直に考えると、脚力強化や格闘術を取得・強化していく方針が良さそうか。
もともとの能力を伸ばす方針だ。

　彼女は魔力も高いが、脚力強化や格闘術とは少し相性が悪いか？
火魔法、水魔法、風魔法などは、格闘術との併用が難しそうだ。
何か格闘術との相性が良さそうな魔法を探す必要がある。

　聴覚強化や気配察知もありかもしれない。
彼女のもともとの聴力の良さをさらに強化し、索敵に活かしてもらう。
ただし、気配察知は俺やアイリスも持っているので、やや役割が被ってしまうのが難点か。

　最後に忘れてはならないのが、料理術だ。
彼女の料理はすでにかなりの絶品だが、調理術をレベル４に上げれば、さらにおいしくなるのではないか。
期待したい。

　彼女がパーティに加わってくれるのであれば、料理担当として旅の間でもおいしい料理が食べれそうだ。
もちろん、任せっきりではなく手伝えるところは手伝うつもりだが。

　また、彼女がパーティに加わらなかったとしても、今後この街で食堂を営んでいく上で役に立つはずだ。

　とはいえ、ステータス操作で料理術を安易に強化するのは、今までがんばってきた彼女の努力に対する侮辱となる可能性もある。
慎重に判断せねばならない。

　アイリスはそのあたり、割り切った性格だったので、あまり気にしてはいなかったようだが。
むしろ、手軽に強くなれてラッキーぐらいの雰囲気だった。

　モニカはどうなんだろう。
このあたりは、話してみないとわからないな。

　いずれにせよ、本人の希望を最大限に尊重する必要があるし、話をするのは必須だろう。


　次に、ニムのステータスに目を通す。


レベル２、ニム
種族：犬獣人
職業：ー
ランク：ー
ＨＰ：３５（２７＋８）
ＭＰ：１２（９＋３）
腕力：１６（１２＋４）
脚力：１４（１１＋３）
体力：２６（２０＋６）
器用：１０（８＋２）
魔力：１４（１１＋３）

武器：ー
防具：布の服

残りスキルポイント１０
スキル：
栽培術レベル１

称号：
タカシの加護を受けし者


　ニムの初期レベルは２だ。
やはり、特別な戦闘訓練などをしていない場合は、このあたりのレベルなのだろう。

　ニムのステータスを見ていく。
体力が優れている。
ＨＰも高めだ。

　これらが犬獣人の特徴なのかはわからない。
兎が脚力に優れているのはなんとなくわかるが、犬の特徴はと言われるとピンとこない。
人よりは身体能力が高そうなイメージはあるが。

　スキルは栽培術レベル１だけだ。
まあミティも、最初から持っているスキルは１つだけだったしな。
幼い頃から訓練していたアイリスや祝福の姫巫女として生を受けたマリアと比べるのは酷だろう。

　モニカの料理術はレベル３で、ニムの栽培術はレベル１だ。
これは、年数による経験の差が出ていると思われる。

　モニカは現在１０代後半。
幼少の頃から実家の料理屋の手伝いをしていたそうだ。
経験年数としては１０年前後になる。

　ニムは現在１０歳を少し超えた年齢だ。
より小さいときから畑仕事は手伝っていたそうだ。
ただし、本格的に畑仕事をし始めたのは、母親が体調を崩した２年ぐらい前からと聞いている。

　嗅覚強化のスキルは取得していないようだ。
犬獣人は嗅覚に優れていると聞いたことがあるのだが。
兎獣人のモニカにも聴覚強化のスキルはなかった。
やはり、スキル由来ではなく、種族としての生来の能力という扱いなのかもしれない。

　彼女にパーティメンバーに加わってもらうよう頼むべきか。
正直、微妙なところだ。
別に彼女の能力とかに不満があるわけではない。

　やはり気になるのは年齢だ。
モニカは１０代後半だし、自分のことは自分で決められる。
本人の希望と親御さんの許可があれば、パーティに加わってもらうことに問題はない。

　ニムは現在１０歳を少し超えた年齢。
冒険者ギルドの規定では、ギリギリ登録資格は満たしている。
冒険者として活動することは、一応問題ない。

　マリアは８歳前後だったし、王の娘だったし、種族の問題もあった。
ニムは１０歳を超えており、一般家庭の娘で、種族も特に珍しいわけではない。
マリアよりは、パーティに加わってもらうハードルは低いと思う。

　とはいえ、あまり遠くの街まで連れ回すのも気が引ける。
パーティとして遠征する場合は、一時的にニムがパーティから離脱し、ラーグの街で留守番してもらうのもありだろう。

　また、彼女の家庭事情も考慮する必要がある。
ニムにパーティに加わってもらうとなると、畑の管理が疎かになる可能性がある。
もともとはマム１人で管理していたとのことだし、大きな問題はないような気もするが。
彼女には兄もいるしな。

　結局は、話をしてみないとわからない。
母親が回復しダリウスといい雰囲気になっているとはいえ、やはり当面の生活は厳しいだろう。
冒険者として俺たちのパーティに加われば、生活は間違いなく楽になる。
彼女の報酬の余剰分をマムたちに仕送りすることも可能だ。

　実際には報酬配分の取り決め次第ではあるが、搾取つもりなんてもちろんない。
最初は俺たちとの戦力差は大きいが、じきに追いついてくるだろうしな。
きれいに等分にしてもいいぐらいだろう。

　現状、ニムに戦闘スキルはないので少し不安だが、大きな問題はないだろう。
レベリングしてスキルをガンガン取得していけば、すぐに追いつく。
結局、ステータス操作というチートの前では、最初の戦闘力など誤差の範囲なのだ。
本人のやる気や性格などの要素のほうが大きい。

　パーティメンバーに加わってもらえるとすれば、どのようなスキルを取得・強化する方針が良さそうか。

　素直に考えると、体力強化とＨＰ強化を取得・強化していく方針が良さそうか。
もともとの能力を活かす方針だ。

　全身を重い鎧で固めて、タンクとして壁となってもらう。
ニムが敵の攻撃を引きつけている間に、俺、ミティ、アイリスで攻撃を加えていくわけだ。

　その場合は、補助として取得する魔法も考えておかなくてはならない。
火魔法は攻撃メインだから少し微妙だろう。
土魔法などは、なんとなくだが防御主体の戦法と相性が良さそうなイメージがある。
要検証だ。

　まあ、ニムがそういった役割を引き受けてくれるかという問題もあるが。
彼女は特別臆病な性格というわけではないようだが、それでも１０歳と少しの女の子が魔物と接近戦をして怖くないわけがない。
少し無理があるかもしれない。

　嗅覚強化や気配察知もありだ。
彼女のもともとの嗅覚の良さをさらに強化し、索敵に活かしてもらう。
ただし、気配察知は俺やアイリスも持っているし、モニカも取得するかもしれない。
役割が被りまくっているのが難点か。

　最後に、栽培術だ。
正直、冒険者としてはほぼ役に立たないスキルだ。

　彼女がパーティに加わらない場合は、このスキルを強化してあげるのが良さそうか。
今後この街で生きていく上で、役に立つだろう。