【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

107話 ハガ王国から出立:マリアとのお別れ

 湖水浴から数日が経過した。

 戦後、俺たちは潜入組は長い間ハガ王国に滞在してきた。
バルダインたちとサザリアナ王国の使者との会談は一区切りした。
俺たち潜入組もそろそろゾルフ砦に帰る頃合いだ。

 俺、ミティ、アイリス。 
アドルフの兄貴、レオさん、マクセル、ギルバート、ジルガ、ストラス、ウッディ。
それにサザリアナ王国の使者と、その護衛。
みんなで帰ることになった。

 見送りに、ハガ王国の面々がきてくれた。
バルダイン、ナスタシア、マリア。
それに六天衆と六武衆だ。

「陛下。長い間、お世話になりました」

『うむ。貴様たちは既に我らが同胞も同然。またいつでも来い』

 バルダインに挨拶をする。
またいつでも来ていいそうだ。

 俺には空間魔法レベル3”転移魔法陣作成”のスキルがある。
王宮の隅の小さな部屋を俺用に確保してもらっており、そこにしっかりとした転移魔法陣を作成済みだ。
ゾルフ砦に戻ったら、一度試してみよう。

 100mの距離なら問題なく転移できることは、スキルを取得した日にテスト済み。
その後、ハガ王国内で数kmの転移もテストしておいた。
結果は問題なしだったが、消費MPが少し多めだった。

 ゾルフ砦とハガ王国の距離だと、結果はどうなるか。
まず、無事に発動できるかどうかが問題だ。
無事に発動できたとして、消費MPはどの程度か。
消費MPなどの条件次第では、ハガ王国をそれなりの頻度で訪れることも可能だろう。

『マリア。ばいばいだ。また遊ぼうな』

『タカシお兄ちゃん! 行っちゃやだー! ずっとここにすんでよ!』

 マリアにお別れを言ったら、駄々をこね始めてしまった。

「ごめんな、マリア。俺たちも帰る場所があるんだ」

 世界滅亡の危機を避けるために、各地を回ってレベルを上げつつ、加護付与者を増やしていく必要がある。
世界滅亡がなければ、ずっとここに住むという選択もなくはないが。
しかしたとえ世界滅亡がなかったとしても、せっかくの異世界なのでチートを活かしてあちこち巡ってみたい気持ちもある。

『マリア。わがままを言うんじゃありません』

 マリアの母、ナスタシア王妃がマリアを注意する。

『むー! なら、マリアもっしょにつれて行ってよ!』

「ごめんな。人族の街に連れていくのは、まだ危ないんだよ」

『やーだー! 行っちゃやだー! うぇーん!』

 マリアが泣き始めてしまった。
ううん。
やはり連れていくか?
泣く子と地頭には勝てぬ。

『すまんな。タカシ。マリアには言い聞かせておく。達者でな』

 泣きわめくマリアを、バルダインがあやしながら連れていった。

 マリアには加護を付与している。
せっかく加護が付いたのでパーティメンバーに参加してもらいたいところではある。
だが、諸々の事情により彼女がパーティメンバーに参加するのは厳しい。

 もう一度整理しておこう。
まず、年齢が低すぎる。
そもそも、冒険者ギルドの登録は10歳以上からだ。
別に未登録でも、勝手に冒険者パーティに同行して活動するだけなら大きな問題がないとはいえ。

 さらに、彼女は国王の娘、つまりは姫だ。
おいそれと連れて行くわけにもいかない。

 ハガ王国を拠点に活動するなら、まだギリギリ有りかもしれない。
しかし、ゾルフ砦やラーグの街での活動は厳しいだろう。
まだハーピィやオーガは知られていない種族だ。
外見はほぼ人だが、見慣れない種族として迫害される可能性もなくはない。

 サザリアナ王国とハガ王国の協定が正式に結ばれれば、ハーピィやオーガとの友好が広く周知されていく。
1~2年もあれば、サザリアナ王国内ではハーピィやオーガが友好的な種族であると認知されていくだろう。

 年齢の件と種族の件を合わせて考えても、少なくとも1~2年ぐらいはパーティ加入を保留にしておいたほうが無難だろう。
1~2年後でも、年齢的にはまだ早い気もするが、彼女のスキルはかなり豪勢だからな。
俺たちでサポートすれば、問題ないような気がする。
最初のレベリングを慎重に行えば、攻撃スキルとかも取得していける。
そうなれば、戦闘力の面では問題なくなってくる。

 数年後に迎えにくるから、それまで待っていてほしい。

『あの娘が大きくなれば、人族の街を訪れてみてもいいでしょう。考えておきますわね』

 ナスタシアがそう言う。

「ええ。その時は任せてください」

 俺たちやナスタシアから少し離れたところでも、それぞれの人が別れを惜しんでいる。


「とうとう、お前にはスピードで勝てないままだったな」

 ストラスがセリナにそう言う。

『お前ではないの。自分の名前はセリナなの。何度言えばわかるの』

「セリナ。俺はこのまま終わる男ではない。首を洗って待っていろ。いつかまた来る」

『負けないの。でも……、楽しみに待っているの。精々がんばるがいいの。ストラス君』

 兎獣人のストラスとオーガのセリナ。
湖水浴の一件以来、彼らはよくいっしょに訓練をしているようだ。
訓練以外にも、何かといっしょにいるところを見かける。
あのラッキースケベ事件から、恋愛関係に発展したのだろうか。
何とも言えないいい雰囲気だ。

 俺にはミティとアイリスがいる。
羨ましくなんてない。
ない。


「へっへっへ。娘をちゃんと育てておけよ、クラッツ」

「訓練に付き合ってやったが、まだまだ甘いところが多いぞ! ギャハハハ!」

『無論、きちんと指導していくさ。お前たちも、達者でな』

 アドルフの兄貴、レオさん。
それにクラッツたち六天衆。
彼らが別れを惜しんでいる。

 俺も彼らと別れるのは寂しいが、これが今生の別れというわけでもない。
特に俺の場合は、転移魔法陣があるしな。

 ナスタシアや六天衆、六武衆と最後の別れを済ませる。
ゾルフ砦の方面に向かって歩き出す。

『『またなー!』』

 後ろから、送別の声が聞こえてくる。
いつの間にか、バルダインとマリアも戻ってきていたようだ。

『タカシお兄ちゃん! また来てね! ぜったいだよ!』

 マリアはまだ泣き顔だが、そう言って手を振ってくれている。

「ああ! 絶対にまた来る! またな! マリア!」

 俺も手を振り返した。
彼女と次に会う日を楽しみにしつつ、ゾルフ砦への歩みを進めていく。

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