【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

66話 本戦の組み合わせ抽選と魔の領域の動向

 今日はガルハード杯本戦が行われる前日だ。
ミティ、アイリスとともに会場に来ている。
エドワードやマクセルの姿もある。

 今日は、トーナメント表の組み合わせを決めるくじ引きが行われる。
このくじ引き自体も結構な余興となっているようで、すでにかなりの観客が入っている。
シードなどはないようだ。
過去の実績による出場選手や道場などからの推薦選手も、俺やミティと組み合わせ上は同格扱いとなる。
くじ引きによる、完全なランダムだ。

 出場選手16人がステージに上がり、順番にくじを引いていく。

「マクセル選手! Dブロックの3番です!」

「エドワード選手! Cブロックの1番です!」

「タカシ選手! Aブロックの1番です!」

 こんな感じで、16人全員がくじを引き終わった。
俺はAブロックの1番だった。
良いのか悪いのか、判断に困る番号だ。
ちょっと目立つし。

 トーナメント表を改めて見る。

Aブロック1番、タカシ。
Aブロック2番、ミッシェル。
Aブロック3番、リルクヴィスト。
Aブロック4番、ウッディ。

Bブロック1番、ミティ。
Bブロック2番、マーチン。
Bブロック3番、ジルガ。
Bブロック4番、アイリス。

Cブロック1番、エドワード。
Cブロック2番、マスクマン。
Cブロック3番、サイゾウ。
Cブロック4番、ストラス。

Dブロック1番、ギルバート。
Dブロック2番、カタリーナ。
Dブロック3番、マクセル。
Dブロック4番、ラゴラス。

 結構見知った名前が多い。
自分自身、ミティ、アイリスを除けば、俺が知っている人は9人だ。

 Aブロック2番のミッシェル。
昨日焼肉屋で絡んできた青年だ。
若手実力派とか言っていた。
俺たちに気づかれずにコップを割る謎の技術がある。
要注意の選手だ。

 Aブロック3番のリルクヴィスト。
青髪のイケメン青年だ。
昨日、リーゼロッテやコーバッツと揉めていた。
 
 Bブロック2番のマーチン。
ミッシェルと同じく、昨日焼肉屋で絡んできたオネエ口調の青年だ。
散桜拳がどうとか言っていた。
こちらも要注意の選手だ。

 Bブロック3番のジルガ。
先月の小規模大会の準優勝者だ。
決勝戦でのギルバートとの試合はハイレベルだった。

 Cブロック1番のエドワード。
武闘神官として、見習いのアイリスを連れてあちこちを巡っている。
実力はよく知らないが、見習いではない武闘神官だ。
アイリスよりも格上だろう。
予選免除でこの大会へ出場しているし、実力は確かだと思われる。

 Cブロック2番のマスクマン。
俺、ミティ、アイリスと同じく、昨日の予選を勝ち抜いてきた人だ。
昨日は地味な闘いが多かったようだ。
本戦ではどのような闘いを見せるか。

 Dブロック1番のギルバート。
ラーグの街からこのゾルフ砦まで、護衛依頼でともにした。
この街にきてからも、先月の小規模大会で見かけ、メルビン道場を紹介してもらった。
小規模大会で優勝する実力を持ち、冒険者ランクもCランクである。

 Dブロック3番のマクセル。
以前、ギルバートがマクセルについて何か言っていた気がする。
確か、”マクセルのやつに一矢報いてやる”という感じの発言だったはずだ。
ギルバートと同格か少し格上の武闘家と思われる。
冒険者ランクでいえばBランク相当かもしれない。
ぜひ彼の戦闘を見て、参考にしたいところだ。

 Dブロック4番のラゴラス。
ラーグの街からこのゾルフ砦まで、護衛依頼でともにした。
彼とは一言も話していないので、人柄はよくわからないが。
冒険者ランクは、確かCランクだったはず。
ギルバートと同じくらいの実力者だと思われる。

 逆に、出場選手で全く知らない人は4人だけだ。
Aブロック4番、ウッディ。
Cブロック3番、サイゾウ。
Cブロック4番、ストラス。
Dブロック2番、カタリーナ。
この4人の闘いも注視しておきたいところだ。


●●●


 一方、その頃。
魔の領域にあるオーガとハーピィの国では、着々と侵攻の準備がなされていた。

 王の執務室にて、兵が王に報告をしている。

『報告致します! 兵士たちの進軍準備が整いつつあります!』

『うむ……』

 オーガの王はバルダイン。
筋骨隆々の壮年の男である。
彼の表情は晴れない。

『陛下……?』

『ああ、いや。……進軍準備、大義である! 近々侵攻を開始する! いつでも進軍できるようにしておけ!』

 兵の前で、王が暗い顔をするものではない。
気を持ち直して、兵に指示を出す。

『ははっ』

 兵は敬礼し、去っていった。
傍らにいたハーピィの女がバルダインに話しかける。

『あなた。王がそんな顔をしていては、兵や民が不安がるわ』

『ナスタシア。……お前は、今回の侵攻作戦をどう思う?』

 ハーピィの女は、ナスタシア。
オーガの族長であるバルダインと、ハーピィの族長であるナスタシア。
彼らが婚姻関係を結んだことにより、オーガとハーピィの友好関係は強固なものとなり、国と呼べる集団となっていた。
さらに数年前には子どもも授かった。
オーガのとハーピィのハーフだ。

『難しい判断だけど……。評議会や今代の六武衆、それにあのセンとかいう女も交えて、さんざん話し合ったじゃない』

『そうなのだがな。ワシには、あのセンとかいう女が信用しきれないのだ』

 バルダインがそうこぼしたとき。
空間がひずみ、1人の若い女が姿を表した。

「うふふ。私を呼びましたか?」

 女は、怪しい目をしていた。

『ふん。呼んでなどおらんわ』

「まあつれない御方。……陛下は、今回の侵攻に気が進まないご様子。そこで、いいものをご用意致しましたわ」

 センが、懐から角笛のようなものを取り出す。

『なんだ、それは』

「”誘引の角笛”でございますわ。ゴブリンやワイルドキャットなど、低級の魔物をある程度操ることができますの」

『ふむ。それを使って、魔物を人族にぶつけるというわけか』

「御名答でございますわ。これにより、あなた方の兵の被害は格段に少なくなることでしょう。六武衆も防衛に残すことができるようになります。……ただし、代償もありますの」

 センがニヤリと笑う。

『なんだ。言ってみろ』

「誘引の角笛は、演奏者の命を削るのですわ」

『なんだと! そんなもの、使えるわけが……』

 バルダインは、そんなものは使えないと即座に判断する。
彼は民のことを考える、優しい王だった。
王としては、優しすぎるぐらいであった。

「問題ありませんわよね? だって、この国には”祝福の姫巫女”がいるのですもの」

『ぬうぅ……』

『あなた……』

 バルダイン王と、ナスタシア王妃は、悩む。
彼らにとって、祝福の姫巫女とは特別な意味を持つ存在であった。

「強力な再生能力と生命力を持つ、祝福の姫巫女。彼女であれば、誘引の角笛を吹いても命が失われることはないでしょう。……ひどい苦痛は伴うでしょうが」

『…………』

 バルダインの顔が歪む。

「ここで決断なされば、兵たちの被害は確実に減ることでしょう。ご英断をお祈りしておりますわ」

 センはそう言って、姿を消した。

『我は、どうすれば……』

 後に残されたのは、バルダインとナスタシア。
2人の間には、重い沈黙が流れていた。

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