【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

12話 死闘

頭上からガサゴソという物音が聞こえてきた。
辺りはまだ夜といってもいいような明るさだ。

「ちょっと。いつまで寝てるのよ。次の夜警は私達の担当よ」

「うーん……。あと5分……」

「もう! 早く起きなさい!」

俺が寝ぼけていると、ユナに蹴りで起こされた。
なにも蹴ることはないだろう。
しかし悪いのは俺なので文句も言えない。

「ふぁー。まだ眠いよ……」

ユナとはある程度打ち解けてきたので、丁寧語は外している。
きつい物言いが多いが、これで結構可愛いところもある。

「しっかりしなさい。みんなの命を預かっているのよ」

そう言われてみると確かにそうだ。
気合を入れる。

夜警をする場所に行くと、蒼穹と旋風の人も1人ずつ来ていた。

蒼穹からは水魔法使いの女だ。
名前は確かリーゼロッテ。
旋風からはリーダーの剣士の男だ。
まあ旋風は全員が剣士の男なんだけどね。

4人で魔物の襲撃を警戒しつつも、ちょっとした雑談をした。

黒色の旋風は最近Dランクになったばかりのパーティらしい。
大牙や蒼穹には女性メンバーがいて羨ましいと言っていた。

リーゼロッテには、せっかくなので水魔法の質問をしてみた。
丁寧に答えてくれた。
ウォーターボールの次はアイスボール。
氷の球を放つ呪文で、ウォーターボールよりもずっと攻撃性能が高いらしい。
アイスボールの次はアイスレイン。
氷の球を雨のように次々と放つ呪文のようだ。

そのまましばらく雑談していると、近くの茂みからザワザワと大きな音がした。
魔物の気配がする。
どうすべきかとユナを見てみると、立ち上がって弓を構えている。
他の人も立ち上がって警戒している。
俺も慌てて立ち上がる。

しばらくすると、魔物の気配は遠ざかっていった。
構えを解いて再び座った。

「今のは何でしょう?」

経験が豊富そうなリーゼロッテに聞いてみる。

「おそらくハウンドウルフでしょうね。こちらの人数が多いのを見て逃げたのだと思われますわ」

「ハウンドウルフは戦闘能力が高めなのよ。無理に狩る必要はないわ」

ふむ。
それもそうだな。

そのあとは、たいした出来事もなく朝になった。
朝食を食べる。

クレイジーラビットの肉だ。
なかなかおいしい。

他には、持ってきていた保存食。
正直あまりおいしくない。

ゴブリンの肉は食べない。
臭みが強く、人間が食べるには適さないのだ。

朝食を食べると狩りの時間だ。
今日は黒色の旋風が野営地の番をするらしい。

最初にゴブリンの群れと遭遇した。
危なげなく討伐した。
木が密集している地帯だったので、ファイアートルネードは使えなかった。
残念。

次にクレイジーラビットの群れと遭遇した。
昨日と同じ作戦で狩る。
ジークがまず攻撃し、クレイジーラビットを引き付ける。
その間に、俺達で倒す。
これは楽だな。
ジークは大変そうだけど。

クレイジーラビットを討伐したあとは、しばらく休憩だ。
ジークの金属鎧を見ると一部ベコベコとへこんでいる。
小さな体に似合わない恐ろしい衝撃力だ。

休憩後はまた狩りだ。
木が少ない開けた場所でゴブリンの群れと遭遇した。

「おう。ここなら例の火魔法を使ってもいいんじゃねェか?」

「そうね。一発でかいのをぶち込んでちょうだい!」

ユナはこんなことを言っているが、調子に乗ってでかいのを撃つのはマズイ。
森林火災になったら困る。
威力と範囲をやや小さ目に意識して、心の中で詠唱を開始する。
両手を前方にかざし、魔法を発動させる。

「ファイアートルネード!」

ごうっという音と共に大きな火の竜巻が発生し、ゴブリンを襲う。
半分近いMPを消費した感覚がある。
現状ではあまり連発はできないな。

この一撃で息絶えた奴も少なくない。
生き残った奴らは何とか逃げようとしているが、ダメージが大きいのか動きは遅い。

そいつらにファイアーアローでとどめをさしていく。
ユナも弓で攻撃している。
ドレッドとジークはその場で待機し、こちらに向かってくるゴブリンを相手している。

あ、レベルが8に上がった。
やはり範囲攻撃はレベリング効率が段違いだ。
さくっとスキル振りをしてしまおう。
MP強化レベルを3にした。
MP回復速度強化レベル1を取った。

「ふふん。かなりの高威力ね。やるじゃない」

「…………残りMPはどうだ?」

「アイテムルームの分は温存するとして、あと1発ぐらいならいけそうです」

レベルが上がりスキルを取ったため、多少の余裕ができた。

「おう。それなら今後もチャンスがあれば狙っていけよ。こりゃ楽だぜ」

すぐにそのチャンスはきた。
木が少ない開けた場所でゴブリンの群れと遭遇した。

森での狩りは本当にレベリング効率が良い。
この調子だと明日にはレベル9になってもおかしくないな。
レベル9になったら何のスキルを取ろうかなー。

そんなことを考えながら油断していたのがマズかった。

「ここなら大丈夫そうですね。火魔法を発動します」

そういって心の中で詠唱を開始する。
両手を前方にかざし、魔法を発……

「待てっ!」
「ダメよっ」
「…やめろ!」

!?

3人からの制止の声に慌てて発動を中止しようとするが、間に合わない
火の竜巻が発生し、ゴブリンを襲う。

「くそっ! 間に合わなかったか。おいタカシ、死ぬ気で防御しろよ。諦めんじゃねェぞ」

「え……いったい何が……?」

何が何だか分からなかった。
しかし、前方から殺到するクレイジーラビットの集団を見てようやく理解する。

ゴブリンに隠れて見えなかったが、クレイジーラビットの群れも近くにいたのだ。
その群れをゴブリンへの攻撃で巻き込んでしまった。

ファイアートルネードで随分と数は減ったようだ。
しかしそれでも、革の鎧しか着ていない俺には絶望的な数に思える。
狂ったような恐ろしい形相のクレイジーラビットが迫ってくる。

恐怖で混乱状態になりそうな頭を必死で立て直す。
絶対に生きて帰る!
そう決意する。

最初に近づいてきた1匹を切って捨てる。
続けて2匹目3匹目も切り裂く。
しかしあまりの数の多さに剣でさばき切れない。
盾を使って防御するが、小柄な体からは想像できないような衝撃がある。

何匹かは足にまとわりついてくる。
身動きが取りづらい。

ユナ達も必死で数を減らしてくれているが、戦いの終わりが見えない。
顔や首に跳びついてくる奴らだけは何とか切って捨てていく。
だがそれにより他への注意がおろそかになってしまった。
腹部に強烈な衝撃が走る。

地面に倒れたら終わりだ。
なんとか膝をつくだけで耐えようとする。
そこに今度は背中からの衝撃。
一瞬意識が遠くなる。
必死で体勢を立て直す。

ふと気付く。
完全に周りを囲まれている。
次から次へと体に衝撃を受ける。
まともに身動きが取れない。

ついには完全に地面に倒れ込んでしまった。

周りの音が遠くなっていく……。

……俺はまだ…………。

…………死にたくない………………。

……ミティ…………ユナ…………。

「アイスレイン!」

何だ……?
体に衝撃を感じなくなった。
クレイジーラビットの気配が消えていく。

「しっかりして下さいまし!」

女の人の声だ。
どこかで聞いたことがある。

口に何か液体を注ぎ込まれる。
意識がはっきりとしてくる。

周囲を確認してみると、既にクレイジーラビットは殲滅されていた。
すぐ近くに水魔法使いのリーゼロッテがいる。

「俺は……助かったんですか」

「ええ。危ないところでしたわ」

彼女がそう答える。
ユナも近くに寄ってきた。
随分と息があがっている。

「本当にね。一時はどうなるかと……。ま、無事生きてて良かったわ」

「…………良い粘りだった」

「おう。これだけの剣術に、火魔法とアイテムボックス。こりゃギルドが放っておかねェぞ。Dランク昇格も間近に違いねェ!」

ジークにドレッド、蒼穹の担い手の他のメンバーもいる。
聞けば、偶然近くにいた蒼穹の人達が駆けつけてくれたということだ。

さっき飲まされた液体は、リーゼロッテのHPポーションだったらしい。
高価な物だ。
効能にもよるが、安くても金貨数枚はする。
街に戻ったら必ず返さなくては。

ちょうど薄暗くなってくる時間帯だったので、みんなで野営地に戻る。
黒色の旋風の人達が出迎えてくれる。

ポーションで回復したとはいえ、全身が痛い。
おそらく痣だらけだろう。
夕飯を食べてさっさと寝ることにする。
今日の俺の野営当番は特別に免除してくれるらしい。

寝る前に一応ステータスを確認する。
いつのまにかレベルが9になっていた。
おそらく最後のクレイジーラビット戦の時だな。
無我夢中だったので気付かなかった。

スキルポイント20を何に振るかを考えよう。
今日は手痛い失敗をしてしまったが、範囲攻撃によるゴブリン狩りの効率は捨てがたい。

火魔法をレベル4に上げる必要はないだろう。
現状でも十分な火力だ。
威力が上がったら森林火災の危険性が増すし、範囲が広がればクレイジーラビットを巻き込む可能性が増える。
森での狩りにおいてはレベル3で十分だ。

クレイジーラビットを巻き込んだときが本当に怖い。
明日からはちゃんと確認して撃つつもりだが、万が一ということもある。
剣術・回避術・肉体強化あたりを上げるのが良いかもしれない。
盾術の取得もありか?
いや、ダメだな。
ちょっとやそっとスキルを上げても、あのクレイジーな猛攻を防げるとは思えない。

あっ。
気配察知を取れば良いんじゃないか?
20ポイントあればレベル2まで上げられる。
今回のように影で見えなくても、気配に気付けるようになるかもしれない。
森の通常の狩りでも役立ちそうだ。
獲物を効率的に見つけたり、奇襲を防いだりできるからな。

気配察知を取得し、レベル2まで上げる。
あとの5ポイントで、MP消費量減少をレベル2にする。

なるほど。
気配察知は便利なスキルだ。
自分を中心におよそ半径10m。
集中すれば、その範囲内の生物の気配をほぼ正確に把握できる。
それより遠いと正確性が落ちる。
20mぐらいまででギリギリといったところだ。

集中していない状態だと、効果が極端に減るようだ。
「自宅でリラックスしているときに強盗が」なんていう事態には対処できそうにない。
まあ俺はまだ宿暮らしですけどね。
いつか自分の家を持ちたいなあ。

MP消費量減少レベル2は、ちょうど半減だ。
レベル0の時と比べると、2倍の量の魔法が撃てる。

基礎MPの上昇に加え、MP関連のスキルを3つも取っている。
攻撃呪文を封印すれば、アイテムボックスに限界まで詰め込んでも、1週間ぐらいは持ちそうだ。
MPの心配はほぼ不要になったとすら言えるだろう。

まだ痛む体に苦しみながら、クレイジーラビットの恐怖におびえながら、そして明日以降の狩りを楽しみにしながら、眠りにつく。


レベル9、たかし
種族:ヒューマン
職業:剣士
ランク:E
HP:73(56+17)
MP:93(37+56)
腕力:34(26+8)
脚力:33(25+8)
体力:74(32+10+32)
器用:38(29+9)
魔力:33

武器:ショートソード
防具:レザーアーマー(ボロボロ)、スモールシールド

残りスキルポイント0
スキル:
ステータス操作
スキルリセット
加護付与
異世界言語
剣術レベル3
回避術レベル1
気配察知レベル2
MP強化レベル3
体力強化レベル2
肉体強化レベル3
火魔法レベル3 「ファイアーボール、ファイアーアロー、ファイアートルネード」
水魔法レベル1 「ウォーターボール」
空間魔法レベル2 「アイテムボックス、アイテムルーム」
MP消費量減少レベル2
MP回復速度強化レベル1

称号:犬狩り

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