面倒くさがり屋の異世界転生
第48話 1週間後②
先頭集団が全員脱落してから落ち着いたところで休憩となった。俺は闘技場から出ると人気のない適度な木陰に行って眠ることにした。周りは静かだし絶好の寝場所ポイントになるかもしれない。
そしてスヤスヤと夢心地の中、誰かに呼ばれてる気がした。
「……ビン君、……ケビン君、……ケビン君ってば!」
うっすらと目を開けると、カトレアが呼びかけていたようだ。
「なんか用か?」
「次の授業が始まるよ。あとはケビン君だけが来てないんだから」
「授業なら俺抜きで構わないだろ?」
「そういうわけにはいかないの。ケビン君待ちになってるんだから。みんな待ってるよ」
なんとも面倒くさい。俺抜きでさっさと始めてればいいものを。ジュディさんもそこら辺わかっているだろうに。
「わかった。行こう」
闘技場に着くとカトレアの話通りで俺待ちになっていたようだ。みんなしてこちらを見ている。これは無難に謝っておく方がいいな。
「遅れてしまってすみません」
「別に構わない。次の授業を何時始めるか言わなかった私にも責はある。それではみんな揃ったようなので、次の授業に移る。次は魔法の実技だ」
魔法か。一体何から始めるんだろうか?
「魔法の基礎については座学で教えた通りだ。魔法の得意な者、不得意な者とわかれてしまうが、不得意な者でも覚えていて損はない魔法も存在する。例えばスキルとして存在する【身体強化】だが、これと似たようなものが魔法にもある。それは【強化魔法】と言われるものだ。こちらは【身体強化】みたいな限定的なものとは違い、強化するものを指定できるというメリットがある」
へぇ、これは覚えていて損はないな。
「指定できるものには無機物・有機物を問わない。つまり、身体強化された肉体で装備品に強化魔法をかければ、ある程度は損耗を防ぎ戦えるようになるということだ。それと身体強化した後にさらに重ねがけで身体に強化魔法をかけるということもできる。このように魔法とは使い方次第でとても便利になるということだ」
発想が大事ってことだな。どんな魔法も使い手次第で変わっていくってことだ。俄然魔法の授業にやる気が出てくるな。
「まずは基本的な魔法から練習していく。それでは魔法を上手く扱えない人のため、手本を見せるのでその後に練習開始だ」
そう言ってジュディさんが的の前に立つと、何やら唱え始めた。
「《原初の炎よ 眼前のものを燃やせ ファイア》」
おぉ、あれが詠唱か! 初めて聞いたな。的が見事に燃えてるぞ。だが詠唱はやはり中二っぽいな。
「ちなみに今のは火属性の初級魔法の1部だ。これを覚えられたら野営の時に火を起こすのに苦労しなくて済むぞ。水属性の初級魔法も一緒だな。覚えると長旅で水に困らなくなる。それでは各自練習を始めてくれ。魔法が使えるやつは的に向けて試していいぞ。試験の時と同様で壊れることはないからな」
それじゃあ俺は的相手に練習でもするかな。そう思い他から離れてる的の前まで歩いて行くと、ジュディさんが慌てたように駆けつけてきてコソッと話しかけてきた。
「ケビン君、くれぐれも的を壊さないでよ。手加減してそこそこの魔法を当てればいいから」
「わかってますよ。それよりもそっちの喋り方の方が俺は好きですよ。堅苦しくなくて。柔らかい喋り方の方が生徒に慕われますよ。威厳も大事でしょうが」
「そうかな? 同僚に聞いた話なんだけど、舐められると言うこと聞いてくれなくて問題児が増えるって言われたから、あの喋り方でずっとやってるんだけど」
「そもそも貴族連中の中にはプライド高い奴もいるだろうし、言うことを聞かない奴は聞きませんよ。Sクラスとかは顕著に現れてそうだけど」
「そうなのよ。Sクラスの担任がまたタカビーな貴族の教師でね、Sクラス以外は認めないみたいな雰囲気を出してるの」
「俺はてっきりジュディさんがSクラスの担任になると思ってましたけどね」
「嫌よ。Sクラスは扱いづらいって、教師の中じゃ当たり前の常識なのよ。だからタカビーな教師がずっとSクラスを担当してて、こっちは大助かりなんだから」
「全学年そうなんですか?」
「そうね。タカビーだったり貴族至上主義だったり変な奴が多いわ。教師だってもしSクラスの担任から外れた場合は、Aクラスの担任になって生徒を追い込んでSクラス打倒を目指すのよ。業績を上げるために」
「教師の世界も面倒くさいですね。やっぱりダラダラ過ごすのが1番ですよ」
「それはケビン君だからできることよ。他の生徒は頑張って勉強するんだから。一応テストの成績が年間で悪いと留年もあるのよ。まだ1人も出てないけど」
「留年制度あるんですね。もしかして補習とかもあったりします?」
「あるわよ。学院としては国からお金が出ている以上、留年者なんて出したくないから救済処置として補習をやっているのよ」
「その話を聞くとどっちの救済かわからなくなりますね」
「ふふっ、確かにね。とにかく実技の時は手加減してやってね。ケビン君がダラダラ過ごすためにも」
「了解です。壊さないように注意しますよ」
「それじゃあ私は魔法が苦手な生徒を指導するから、あっちに行くわね」
「頑張ってください」
「ありがとう」
それからジュディさんは、的とは反対の位置で魔法の練習をしている生徒たちの輪に向かっていった。
「さてと、始めますかね」
そういえばあの中二っぽいセリフを言わなきゃいけないんだよな。恥ずかしいが我慢するしかない。慣れれば恥ずかしくなくなるだろ。
「げ、原初の炎よ、眼前のものをも、燃やせ、ファイア」
恥ずかしさのあまり詰まってしまった。結果は見事に不発。
『プププッ』
『おい、笑ってんじゃねぇよ。こっちは必死に恥を忍んで唱えてんだぞ』
『噛んだ上に、不発って……ワロスwww』
こいつ日増しに人間っぽくなってないか? 進化しすぎだろ。
「ケビン君、失敗したの?」
カトレアか……まさか見ていたとは。
「緊張し過ぎだよ。魔法を使う時はリラックスしないと暴発の元だよ」
「わかってる」
「こうやるんだよ。《原初の炎よ 眼前のものを燃やせ ファイア》」
(ボッ)
カトレアの詠唱が終わると的に火がついた。
(くっ……カトレアでもできているのに、恥ずかしがっている場合ではない!)
「《原初の炎よ 眼前のものを燃やせ ファイア》」
(ボウッ)
魔法は成功したが威力が凄かった。的は壊れてないからよかったんだが、まだまだ手加減をしなきゃいけないみたいだ。
「ケビン君、凄いね。私のファイアより威力があったよ!」
「お前も凄かったぞ。体力はあるし魔法は使えるしで、何故Fクラスにいるのかわからないくらいだ」
「実技はできても筆記の方がダメダメだったんだよ」
「そういうもんか?」
「そういうもんだよ」
この日は結局実技の授業だけで終わった。これから詠唱する時は恥ずかしがらずにしよう。毎度サナに馬鹿にされるのは癪だしな。
そしてスヤスヤと夢心地の中、誰かに呼ばれてる気がした。
「……ビン君、……ケビン君、……ケビン君ってば!」
うっすらと目を開けると、カトレアが呼びかけていたようだ。
「なんか用か?」
「次の授業が始まるよ。あとはケビン君だけが来てないんだから」
「授業なら俺抜きで構わないだろ?」
「そういうわけにはいかないの。ケビン君待ちになってるんだから。みんな待ってるよ」
なんとも面倒くさい。俺抜きでさっさと始めてればいいものを。ジュディさんもそこら辺わかっているだろうに。
「わかった。行こう」
闘技場に着くとカトレアの話通りで俺待ちになっていたようだ。みんなしてこちらを見ている。これは無難に謝っておく方がいいな。
「遅れてしまってすみません」
「別に構わない。次の授業を何時始めるか言わなかった私にも責はある。それではみんな揃ったようなので、次の授業に移る。次は魔法の実技だ」
魔法か。一体何から始めるんだろうか?
「魔法の基礎については座学で教えた通りだ。魔法の得意な者、不得意な者とわかれてしまうが、不得意な者でも覚えていて損はない魔法も存在する。例えばスキルとして存在する【身体強化】だが、これと似たようなものが魔法にもある。それは【強化魔法】と言われるものだ。こちらは【身体強化】みたいな限定的なものとは違い、強化するものを指定できるというメリットがある」
へぇ、これは覚えていて損はないな。
「指定できるものには無機物・有機物を問わない。つまり、身体強化された肉体で装備品に強化魔法をかければ、ある程度は損耗を防ぎ戦えるようになるということだ。それと身体強化した後にさらに重ねがけで身体に強化魔法をかけるということもできる。このように魔法とは使い方次第でとても便利になるということだ」
発想が大事ってことだな。どんな魔法も使い手次第で変わっていくってことだ。俄然魔法の授業にやる気が出てくるな。
「まずは基本的な魔法から練習していく。それでは魔法を上手く扱えない人のため、手本を見せるのでその後に練習開始だ」
そう言ってジュディさんが的の前に立つと、何やら唱え始めた。
「《原初の炎よ 眼前のものを燃やせ ファイア》」
おぉ、あれが詠唱か! 初めて聞いたな。的が見事に燃えてるぞ。だが詠唱はやはり中二っぽいな。
「ちなみに今のは火属性の初級魔法の1部だ。これを覚えられたら野営の時に火を起こすのに苦労しなくて済むぞ。水属性の初級魔法も一緒だな。覚えると長旅で水に困らなくなる。それでは各自練習を始めてくれ。魔法が使えるやつは的に向けて試していいぞ。試験の時と同様で壊れることはないからな」
それじゃあ俺は的相手に練習でもするかな。そう思い他から離れてる的の前まで歩いて行くと、ジュディさんが慌てたように駆けつけてきてコソッと話しかけてきた。
「ケビン君、くれぐれも的を壊さないでよ。手加減してそこそこの魔法を当てればいいから」
「わかってますよ。それよりもそっちの喋り方の方が俺は好きですよ。堅苦しくなくて。柔らかい喋り方の方が生徒に慕われますよ。威厳も大事でしょうが」
「そうかな? 同僚に聞いた話なんだけど、舐められると言うこと聞いてくれなくて問題児が増えるって言われたから、あの喋り方でずっとやってるんだけど」
「そもそも貴族連中の中にはプライド高い奴もいるだろうし、言うことを聞かない奴は聞きませんよ。Sクラスとかは顕著に現れてそうだけど」
「そうなのよ。Sクラスの担任がまたタカビーな貴族の教師でね、Sクラス以外は認めないみたいな雰囲気を出してるの」
「俺はてっきりジュディさんがSクラスの担任になると思ってましたけどね」
「嫌よ。Sクラスは扱いづらいって、教師の中じゃ当たり前の常識なのよ。だからタカビーな教師がずっとSクラスを担当してて、こっちは大助かりなんだから」
「全学年そうなんですか?」
「そうね。タカビーだったり貴族至上主義だったり変な奴が多いわ。教師だってもしSクラスの担任から外れた場合は、Aクラスの担任になって生徒を追い込んでSクラス打倒を目指すのよ。業績を上げるために」
「教師の世界も面倒くさいですね。やっぱりダラダラ過ごすのが1番ですよ」
「それはケビン君だからできることよ。他の生徒は頑張って勉強するんだから。一応テストの成績が年間で悪いと留年もあるのよ。まだ1人も出てないけど」
「留年制度あるんですね。もしかして補習とかもあったりします?」
「あるわよ。学院としては国からお金が出ている以上、留年者なんて出したくないから救済処置として補習をやっているのよ」
「その話を聞くとどっちの救済かわからなくなりますね」
「ふふっ、確かにね。とにかく実技の時は手加減してやってね。ケビン君がダラダラ過ごすためにも」
「了解です。壊さないように注意しますよ」
「それじゃあ私は魔法が苦手な生徒を指導するから、あっちに行くわね」
「頑張ってください」
「ありがとう」
それからジュディさんは、的とは反対の位置で魔法の練習をしている生徒たちの輪に向かっていった。
「さてと、始めますかね」
そういえばあの中二っぽいセリフを言わなきゃいけないんだよな。恥ずかしいが我慢するしかない。慣れれば恥ずかしくなくなるだろ。
「げ、原初の炎よ、眼前のものをも、燃やせ、ファイア」
恥ずかしさのあまり詰まってしまった。結果は見事に不発。
『プププッ』
『おい、笑ってんじゃねぇよ。こっちは必死に恥を忍んで唱えてんだぞ』
『噛んだ上に、不発って……ワロスwww』
こいつ日増しに人間っぽくなってないか? 進化しすぎだろ。
「ケビン君、失敗したの?」
カトレアか……まさか見ていたとは。
「緊張し過ぎだよ。魔法を使う時はリラックスしないと暴発の元だよ」
「わかってる」
「こうやるんだよ。《原初の炎よ 眼前のものを燃やせ ファイア》」
(ボッ)
カトレアの詠唱が終わると的に火がついた。
(くっ……カトレアでもできているのに、恥ずかしがっている場合ではない!)
「《原初の炎よ 眼前のものを燃やせ ファイア》」
(ボウッ)
魔法は成功したが威力が凄かった。的は壊れてないからよかったんだが、まだまだ手加減をしなきゃいけないみたいだ。
「ケビン君、凄いね。私のファイアより威力があったよ!」
「お前も凄かったぞ。体力はあるし魔法は使えるしで、何故Fクラスにいるのかわからないくらいだ」
「実技はできても筆記の方がダメダメだったんだよ」
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