神の創造世界

Ki/Kimijeep

第1話 異世界召喚Ⅰ

南西の方から乱れた銃声が鳴り響く。恐らく俺から500メートル離れたところから誰かが、敵に目掛けて連射しているように見えるのだが、マガジン一つ分ほど無駄にしてヘッドショットを決めている。



「考えてねぇなこいつ、弾が勿体ないだろ」



と呟きながら、先程暴れていた奴の位置と風によるズレを計算し、照準を定め、脳天を一発でぶち抜いて、その後ろから出てきた奴らも次々と仕留めていく。



このゲームではFPSゲームの中で銃の扱いが現実に最も近いと言われているゲームで、感覚的なプレイでは一発では仕留めることは容易ではない。また、地形もAIによって毎回ランダムに生成され、天候や、風向きも毎回異なり、かなり難しい仕様となっている。



そして俺は、学校を退学してまで、鍛えてきたAIM操作と計算力で毎回30キル目標にこのFPSゲームにのめり込んでいる。



自分で言うのも変であるが、学校を退学してるからといって学力面に関してバカではない。様々なゲームに必要な知識をしっかり学んだ結果、高校までの勉強はすでに終わってしまったのである。また、高校以上の知識も少なからず得ている。



そんな自慢は置いといて、夜食に食べようと思っていたカップラーメンを切らしてしまったので、コンビニへ買い出しにいこうと参考書の詰まったスポーツバックを肩に掛け財布を手にし、家を出た。



徒歩5分ほどの距離にあるコンビニまで真っ暗な住宅地の気味悪く均等に照すように並んだ街灯の下を参考書をじっくり見ながら歩いていく。辺りは鈴虫の鳴き声や今にも切れそうな街灯がチカチカしているが、俺は、参考書に集中しているため全く気づいていない。そのため普通なら5分かかるところがいつも10分かかってしまう。コンビニに着くと、ATMから、広告収入と全自動通販システムの他、色々なビジネスで儲けたお金がたまっていることを確認し、とりあえずその中の10万円を引き出した。しっかり渋沢さんが10枚有るか確認してから財布にしまう。この時代は電子マネー決済や自動決済が主流だが、やはり、データで見る残高より現金を手にするとにやけてしまうものだ。



早速手に入れたお金で、予定より早く切らしてしまったカップスードルを買いたいと思ったが、一週間分得るために3食では足りないので一日4食分買うことにすると、193円が4食分そして7日分で5404円。そして、消費税26%だから合計金額は、6809円位であろう。まったく、今の消費税は何でこんなに高いんだ。俺が生まれる前は消費税3%って聞いたぞ。今の政治家は、本当に何をやっているのか意味が分からない。



そんな愚痴を心の中で呟きながら会計を済ましてコンビニを出た。簡易ポットのケーブルをモバイルバッテリーに刺しスイッチを押しながら、鞄の中の参考書と入れ換え読み始める。



遠くから救急車やパトカーの音が耳に入ってくるなか、俺は、平然と参考書に集中しながら家に向かって足を進めている。野次馬でもないし、面倒くさいことに関わりたくないので気づかなかったことにしておいた。しかし、その音ががだんだん近くなっていくのを感じて前を振り向くと軽トラックがクラクションを鳴らして自分の所へ迫って来たのである。だが、俺には心配無用だ。車にひかれそうになったときの対処法はすでに知っている。ゲームを自作して、モーションキャプチャーのために鍛えた俺なら容易い。マニュアル通りに回避するだけだ。軽トラックのライトで視界をふさがれながら、足を踏み込んだ瞬間、視界が赤く染まった。



そして軽トラックは完全に10cm の距離で制止していた。トラックの背後に見える赤と青に光るパトライトも青紫色に光りっぱなしだった。



時間が止まったのである。



俺は、この光景を見てさとった。俺はもう死んだ。回避するのが遅かった。生きていたとしてもそんな魔法かなんかの原理すらこの世にはないはずなのに、時間が止まるなどあり得ない。あまりにもショックが大きすぎて脳の処理速度が限界を越えてしまったのだろうか。やはり、ここで死んでしまうのか。ここで俺の人生は、終わりになってしまうのだろうか。



今年でやっと色々な知識をみにつけて、色々やることが出来るようになって、有意義な時間をこれから過ごすつもりだった。それなのに...



悔やんでいる場合ではない。まだ意識はあるのだ。今を生きるために死から逃れる方法を探さなくてはならない。肉体は動かせないが、体内の器官は活発だ。とりあえず俺以外時間が止まったと仮定しよう。心臓の鼓動の速度で寿命が縮むので、どうせ引かれて死ぬかもしれないが、時間の流れがもとに戻るまで心を落ち着かせようと深呼吸をした。すると、先程は動かなっかった体が突然動けるようになり、時間が動いたのと勘違いして慌ててふらつく体を無理矢理トラックからの受け身の体制をとろうと一歩下がり、両腕を突き出した。しかし、俺以外は何一つ動いていない。気がつくと、空から猛烈な光が差し込んでいた。そこから男の姿が見えた。赤く輝いた瞳に白く輝く髪を揺らせながら下降してきて途中で止まり口を開いた。



「危なかったですねぇ、危機一髪って感じですよ。」



中に浮いた白髪で赤い目の男は俺をからかうように笑いながら意味のわからないことをいってきた。

こいつが時間を止めたのか。



非現実的なことが起きたせいで人が天から降りてくる異様な光景が普通に受け入れることができている自分を殴りたい。



「あの、誰ですか?...あと、この状況は、どういうことなんですか?...」



俺が戸惑いながらもう一度辺りを見回すが俺の数センチ先に軽トラックが堂々と存在感を表している。



「私は、神・エレンです。まあ、あなたはここでトラックに轢かれる運命なんですよね…。」



いや、運命とか何とか言われても意味わからんのだが...。軽トラックごときに轢かれてたまるかよ。というか、自称神名乗ってやがる...。



そして、自称神は俺の心の中を読み取ったようで、目をそらして頭をかきながら話をごまかし、被せてきた。



「まあ、それはそうと...そう、これは、俺の世界の人たちの命令なんだ。あの死ぬ運命のやつで知力の高い人を呼び出せってな。ようは、お前が死ぬ運命だったところをちょうど見つけて時間を止めたって訳だ。まあ、とにかく力ずくでも連れてくからな。」



男は開き直ったように早く告げると、左手を突き出し、俺の足元に魔法陣が現れた。そして俺の体が少しずつ軽くなっていくように思えた。



「えっ、ちょっとまっ…」



慌てて抵抗しようと試みた時にはもう遅く、体と意識が分離され、俺の意識だけが魔法により空に持ち上げられ下を覗くと固まったままの俺が立っていた。



「幽体離脱させたよ。これでお前はもう死んだというか、植物状態ということになる。じゃあ時間をもとに戻すか。」



「ふざけんなよ!何が死んだだ!植物状態だ?冗談じゃねえ!」とっさに俺はなれない浮遊移動で自分の体に戻った。



時間がもとに戻る瞬間までに体制を整え直したいが、体が動かなかった。神を名乗る男を見ると、中に浮かぶパネルを操作して、「よしっ!」と頷いてEnterキーらしきパネルに手を伸ばそうとしていた。



幸いトラックとの距離は先程体が動かせたおかげで、およそ5m位で、トラックは大体80km/sだったはず。準備はOKだ。相手は神とか名乗っていて、飛んでいるし、あの宙に浮くデバイスも操っていることから、コマンドの起動速度の遅れはないだろう。



これならタイミング良く避ければなんとかなる。

Enterキーのクリック音が響いた瞬間、赤い世界が元に戻り、トラックが初速度80m/sで突っ込んできたが、その頃には足を踏み込み、ボンネットの高さまで並行になるように体を横にして回転させ、フロントガラスを転がり荷台に落ちた。幸い荷台にには何もなく、けがなく着地することができた。



なんとか死を回避し一息つていると、急にトラックが曲がり出して地面に振り落とされそうになり、頭を守り地面を転がった。転がった先にはパトカーがトラックをめがけてこちらへ迫ってくるので、打撲した方や腰の痛みを我慢しながらも立ち上がりパトカーを飛び越えた。しかしその先に待っていたのは、昨年導入された大型の車種であるパトカーだった。



車体が大きいせいで、避ける道がない。一か八かで後方上に飛び、フロントガラスのワイパーにてを伸ばしたとき、急にパトカーが加速した。



「!?」



空中に浮いたままの俺は、体をねじ曲げようと後ろを振り向いたが、後ろで微笑んでいる自称神が目に入っただけで、フロントガラスに全身を強く打った。その時点で俺は意識を失い、地面へと落下し強く頭を打った。速度を落としきれなかった大型パトカーに引きずられ周辺を赤く染めた。



9月26日午前1時40分 高野 悠希 (16)交通事故により救急搬送

命を取り止めたものの、意識不明の重態。

          

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