何で死ぬのに生きてるのですか〜ネズミに転生した最強闇魔法使い、銀髪の少女のペットになる〜

にくまも

25.ありふれた遠き記憶





 結衣の報告を聞いた明人は安堵の表情を浮かべ胸に詰まった塊を出すように息を吐く。


 目覚めたか……そういえばコロシアム上でネズミが消えたということが今ごろ問題になっているだろう。だが、黒須に親しいかもしれない人は今のところ明人しか候補がいない、彼にバレさえしなければ私に疑惑は向けられることはないと思う。


  明人
 「あー良かった、本当に良かったよ。……えっ今?」


 少し間を開けた明人はこちらに細めた目を一瞬向けて話を続け。


  明人
 「あー少しゴミを掃除してただけだよ。うん問題無い、近くだからすぐそっちに行くよ」


 話し終わったのか明人はこめかみから手を離し、こちらを向いて少し笑った後に床に落ちているナイフを拾ってもう一度私の太ももの穴に刺す。


  明人
 「今回はこんなものだけど……2度目はないからねッ」


 満面の笑みでニコッっとした後、ナイフを手放す。


  明人
 「じゃ、私はこれで帰るけど……黒須君の怪我が思っていたよりも酷いみたいだからついでに人呼んでおくね」


 明人は手を振って部屋を立ち去り、廊下で白い服を着た人に私を指さし声をかけ、その後白い服の人に呼ばれて慌てて入ってきた人に怪我を見られた私はもう一度手術を行うことになった。




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 夢を見た。


 遠い昔の夢を。




 まただ、また死にやがった。


 外傷を治すアンデッド召喚魔法を応用した治癒魔法が完成したがこれではまだ全然不死とは言えない。


 腐敗臭漂う洞窟の中で頭がない体が倒れたコップのように血をこぼし無数に転がっている中を私は死体を蹴飛ばしていた。


 頭を吹き飛ばした瞬間に体から抜け落ちる魂を闇で抜けないように引っ張れば生きていけるかと思ったがあとから生えてくるアンデッドの顔には依然として知性の欠片もない。くそ、失敗だ。


 既に成人男性である、早く死なない方法を見つけ出さなければ……私は私より先に誰も死ぬことのない世界を作り、そこで生活がしたいのだ。


 ――先に死ぬのが分かっているのに思い出を作るとほざく人々を私は許さない。残された人の思いなど考えもしない傲慢さ、たとえそれがどうしょうもないと許容した結果だとしても許すことなどできはしない。


 考えていると音が鳴り洞窟の出入り口が開いて二人の子供ほどの大きさ袋が兵士に担ぎ込まれて投げ入れられる。


 「ッン!」


 それぞれ痛かったのか小さく声をあげて体を小さくしていた。袋を取るとそれぞれ似たような顔をした茶色く長い髪の女の子二人であった。


 「――――ッ」


 頭の布を取った女の子二人は目を見開いて固まっていた。その姿はもうすでに見慣れた光景、ここに転がっている死体も全員が似たような表情を見せ死んでいった。


 私は影で左に転がっている女の子を拘束し、右手に作り出した黒槍を女の子の頭に向け突き刺す。


 「ッンーーーー!!」


 だが、それは頭を貫くことにはならなかった。右側の女の子が左の子をとっさに押し倒したからだ。


 押し倒した女の子の胸は左側の肉、骨などがぎりぎり残っているぐらいで地べたに倒れ、血を垂れ流していた。あと少しズレていたら彼女は完璧に上下に切断されていたであろう。


 「――」


 そして押し倒された子はその原因を認識し、固まるのだった。

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