第一章　第五話

屈強な男二人が一人の若い男を運んできた。

そして、圭太の隣、つまり僕の向かいに座らせた。

男はテーブルに突っ伏して動かない。

大丈夫なのだろうか？危険な状態なら今すぐ適切な処置をしなければならない。

しかし、あまりの衝撃に僕は固まっていた。看護師として情けない。

「心配しなくても大丈夫だよ。手荒なことはしないように言ってあるから。スタンガンか何かで少し気を失ってるだけだよ」

スタンガンで気絶させて運んでくるのは手荒なことではないのだろうか？

そんな疑問を抱いたが、女の言葉に少し安心したのは事実だ。

屈強な男達はいつの間にかいなくなっていた。

「てか、こいつ駿斗だよな？」

圭太が男を見て言った。

言われてみれば……おそらく小林駿斗（こばやししゅんと）だ。

駿斗も僕達の同級生だ。

「ホントだ……」透も気が付いた。

「駿斗、起きろよ！」

圭太が駿斗を叩き起こす。

「……うぅっ……」

駿斗はゆっくりと目を開けた。

そして、テーブルからガバッと起き上がった。

まだ状況が理解できていない様子だった。

「駿斗、大丈夫？」

僕はとりあえず声をかけた。

「裕之……透……圭太……」

駿斗はそれぞれに目をやりながら言った。

「えっと、俺……仕事帰りに襲われて……」

記憶を辿っているんだろう。

と思ったら、急に女を見た。

「てか、あんた誰だよ？これどういうことだよ？」

「あなたが悪いんだよ？強制参加って言ってるのに参加のメールを送らないから。来る気がないなら無理矢理連れてくるしかなくない？」

女は当たり前のように言った。

「……あの変なメールのことか……俺はゲームなんか参加しない」

「だからぁ、強制参加って言ってるじゃない。面白いなぁ」

ちっとも面白くないのにくすくす笑う女に駿斗は黙ってしまった。呆れたんだろう。

「じゃあこれより説明会を始めます」

女はとことんマイペースだ。

「まずは自己紹介するね。私はゲームマスターの瀧凛子（たきりんこ）。りんりんって呼んでもいいよ」

おそらく誰も呼ばないだろう。

「ゲームのプレイヤーはあなた達四人」

「ちょっと待って。なんで全員同級生なの？」

僕は率直な疑問を凛子にぶつけた。

「知り合いの方が面白いかなって」

凛子は無邪気に答えた。

「でも、なんで僕達？そもそも僕達の個人情報はどうやって？」

つい質問責めになってしまった。

「めんどくさいからあなた達を選んだ本人に説明してもらうね」

凛子はそう言うと、僕からしたら明後日の方向を向いた。

「奏、出てきてぇ！」

そして、誰かを呼んだ。